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投資家も注目!オフィスから見えるスタートアップの姿とは?(アルガルバイオ・Yanekara・Jmees編)

「SPEED UP!START-UP!」をコンセプトに、スタートアップのCXO層やアドバイザーが経営の失敗やノウハウ、メソッドの共有を行うことで、様々な経営の壁を乗り越え、事業を成長を加速させるためのコミュニティ「Startup CXO Meeting 柏の葉」。

今回は、コミュニティに参加している柏の葉スタートアップのオフィス&ラボの紹介です。CXO Meetingのアドバイザーを務めている堀内健后氏と運営メンバーで、各社を巡ってきましたので、その様子をお届けします!

オフィスを見ればスタートアップの実態が見えてくる!といったことはよく言われ、投資家はもれなく投資先スタートアップのオフィスを見にいくもの。

今回、柏の葉にラボやオフィスを構えているスタートアップの中から3社のオフィス&ラボを訪問。実際どういった場で研究開発、事業展開をしているのか、その様子をお届けしたいと思います。

お伺いしたのは、こちらのスタートアップです!

・“バイオファウンダリー型藻類開発プラットフォーム”を構築している「アルガルバイオ」
・電気自動車の充放電システムの開発・販売を手がける「Yanekara」
・AIによる手術支援システムの開発・製造販売を手がける「Jmees」

柏の葉って?
駅前にコワーキングから個室オフィスまでをかねたKOILやKOIL TERRACEといったオフィスはもちろん、少し離れると、ラボを併設した公的なインキュベーション施設が2つ(東大柏ベンチャープラザ、東葛テクノプラザ)、日本発の医療機器イノベーションを創出・実装する国立がんセンターのNEXT 医療機器開発センターがあるなど、研究開発型のスタートアップに適した環境があり、東大発や理科大発の研究開発型のスタートアップが集積している地域となっています。

“藻類開発プラットフォーム”はさながら理科の実験室!クリーンな空間で映える大量の藻【アルガルバイオ】

まず初めに訪れたのは、バイオファウンダリー型藻類開発プラットフォームの構築とそれをベースに最適な藻類技術をパートナー企業へ提供するアルガルバイオの研究開発拠点です。

株式会社アルガルバイオ
https://algalbio.co.jp/

サステナブルな次世代型素材として注目を集める藻類。自然界には約30万種もの藻類があると言われる一方、現在産業利用されているのはたった約30種だとか。
これは、従来の藻類スタートアップと呼ばれるような企業は、1種類の藻類をピックアップし、プロダクトアウト的に研究開発をしていたため、事業としての実現可能性が見えづらかったと言われています。

しかし、アルガルバイオではアプローチの仕方が180度異なります。「用途や目的生産物によって最適な藻類種は異なる」という考えのもと、100種1260株もの藻類ライブラリーを構築。そこから商品化に最適な藻類を導き出し、パートナー企業がそれをもとに事業開発を行っていくための支援プラットフォームを開発しています。

さて、そんなアルガルバイオの研究開発拠点とは、どんな空間なのでしょうか?

まず案内していただいたのは、藻類の培養をしているお部屋。蛍光灯が隅々まで照らし、天井から釣り出された電源ケーブルや顕微鏡、そして棚には光を当てて振動を加えながら、まさに今、培養されている藻がありました。無機質でクリーンな空間は、さながら理科の実験室のようでもあります。

やはり緑色をしているんですね、、といった素朴な感想から、ここで取り組まれていることや藻類の培養方法について教えていただきました。

柏の葉では様々な企業や大学出身の研究者たちが日々、藻類の育種・分析、基礎培養条件の確立、生産性向上や事業性の検討などに取り組まれているそうです。まさに、柏の葉での研究がベースとなり、アルガルバイオの事業のコアとなる藻類プラットフォームが充実していくのでしょう。

他の部屋でも違う方法で培養をしている藻類を見せていただきました。部屋に入ると目に入ってくるのは輝く緑色の発光体。その正体は、縦型の筒状のガラス管チューブに光を当てて培養をしている藻類。緑色に輝く藻類は見ているだけでも美しく、なんともいえぬ癒しを与えてくれました。

※現在こちらの設備は横浜製造開発センターに移設

世界に30万種あるといわれる藻類。
その可能性は幅広く、私たちにとって比較的身近な化粧品や健康食品や食品原料、素材やエネルギー領域まで様々なマーケットにアプローチが可能なスーパー素材なのだそうです。

そこで同社では、自社プロダクトの開発も手がけマーケットに対して具体的な事業の可能性をも提示しています。アルガルバイオ発の自社プロダクトは、良質な休息のために開発された藻サプリメント「Moneru」。

東京大学での20年以上の藻類研究の成果をもとに「休息の質を低下させる原因」に着目し選抜した、機能性藻類株、クロレラAL-0015株を使ったサプリメントで、この柏の葉の地から誕生しました。「CES 2023」でイノベーションアワードも受賞されています。

地球を消費しないサステナブルな未来の素材として注目されつつも、専門家としてその全体的な特徴を捉え、大規模培養と事業化へのサポートを導く明確な存在がいない故に活用が進まなかった未知の藻類を活用していく術を、アルガルバイオがこの柏の葉の地から生み出しつつあります。

まるでバック・トゥー・ザ・フューチャー?自動車が置かれた小さなガレージから未来を変える【Yanekara】

続いてのスタートアップはこちら。
「地球に住み続ける」をミッションに掲げ、自然エネルギー100%の日本を創ることを目指し、電気自動車の充放電システムの開発・販売をしているYanekaraです。

・株式会社Yanekara
 https://yanekara.jp/

「Forbes Japan 30 Under 30 2023」への選出や、「アジア・アントレプレナーシップ・アワード2023」準優勝、グローバルブレインの「Global Brain Alliance Forum 2023」にて審査員賞を受賞、東洋経済の「すごいベンチャー100」にも選出されるなど今注目のスタートアップです。

同社は、太陽光パネル(PV)と電気自動車(EV)が電力系統の安定を阻害する要因になる点を解決するため、「バーチャル・パワー・プラント(VPP)」と呼ばれる分散したバッテリーリソース(EVや定置型の蓄電池)を群制御クラウドにより一括制御するサービスの提供を目指しています。
また現在は、各住居(戸建てやビルを想定)毎にエネルギーを創り、使い切る完全自家消費型のエネルギーシステムを構築するため、電動熱の自給を推進するエネルギーマネジメントシステムを提供しています。

Yanekaraのオフィスは、まさにスタートアップ的なガレージをベースとした空間。電気自動車の充電システムを開発していることから、オフィスの中心には電気自動車が鎮座していました。いわゆるIT系のおしゃれオフィスとは異質の、とてもフィジカルで、まさに今そこでプロダクトを作っている現場そのものです。

現在このオフィスを拠点にしつつも、自分たちの生活空間や、実証に協力してくれる関係者を通じてプロダクトを磨き上げている段階。オフィスには、開発段階のプロダクトが様々置かれていました。

普段デスクワークが中心の仕事をしている身からすると、最近では打ち合わせもオンラインが増えて便利である反面、仕事の手触り感を失ってしまったような寂しさを感じていたので、こういうオフィスは本当にワクワクします。

アップル、グーグル、Amazon、HP、マイクロソフトなど今世界をリードしている企業の始まりは、ガレージと言われていますよね。Yanekaraのオフィスはまさに、そういった雰囲気を感じる場所でした。

Yanekaraは、東京大学大学院工学系研究科で電動車両等を用いた送配電網の需給バランス調整を研究してきた代表取締役 / CEO / CTOを務める松藤圭亮氏と、ドイツのフライブルク大学、そしてイギリスのウォーリック大学でエネルギー政策を学んできた代表取締役 / COOを務める吉岡大地氏が立ち上げたスタートアップで、20代の若く優秀で熱い思いを持ったメンバーが集まったチームで構成されています。

同社の開発しているサービスは2つ。
一つは、EV充電コンセントの自動充電制御を行い、デマンドコントロールを実現するEV充電コントローラー「YaneCube」。これは、すでに日本郵政の銀座郵便局に93台納入されています。「YaneCube」を使い、日本郵便の集配用EV車両の充電を遠隔で監視・コントロールすることにより、集配社員の帰局後に発生する電力ピークを抑制するエネルギーマネジメントを行っています。

もう一つは現在開発中の「YaneBox」。一般的に30~40%程度のエネルギーロスが生まれてしまうと言われている電気自動車の充放電を、「YaneBox」を使うことで効率的に行い、災害時には蓄電池としても活用できるといったプロダクトです。

柏の葉の小さなガレージから、地球全体が抱えるエネルギー問題という大きなテーマに対して挑戦しているYanekara。ここから、日本そして世界のエネルギー消費の未来が変わっていくことでしょう。

国立がん研究センター内に開発部屋が...!内視鏡外科手術の臓器損傷リスクに立ち向かう、果てなき挑戦【Jmees】

そして3社目は、国立がん研究センター東病院発スタートアップのJmeesです。東京大学大学院で病理画像のAI診断の研究を行ってきた松崎 博貴氏が、「すべての人々に安全で質の高い治療を届ける」をミッションに掲げ、現役の外科医師とともに創業。内視鏡外科手術が行われる際、臓器の「傷つけてはいけない部分」をAIで瞬時に検出・モニターに分かりやすく表示することで、医療事故の危険性を低減するシステムの開発・製造販売を手掛けています。

・株式会社Jmees
https://www.jmees-inc.com/ 

外科手術は、医師の経験や技術が手術の成否に大きく影響します。熟練医師の優れた技術力(認識力、手術工程の計画力、術中の判断力など)は全てがブラックボックスであるため、若手の医師がそれらを習得するには多くの経験を積む必要があります。
また患者の負担が少ないとされている内視鏡手術ですが、臓器の視認が難しい状況になることもあり、臓器損傷事故が無くなりません。年間3万件の症例があるとされる子宮全摘術の臓器の損傷率は約1%。それなりの数、手術中の臓器損傷が起こっている現実があります。
Jmeesではこれらの現実に対し、「情報革命で外科の常識を創り変える」をビジョンに掲げ、AIが学習し、手術中に切ってはいけない部位を注意喚起することで手術の安全性を高めるためのツールを開発しているのです。

Jmeesの本拠地である国立がん研究センターの東病院のNEXT 医療機器開発センター※は、一歩足を踏み入れると、様々な手術のトレーニングを行うスペースや本格的な手術室があり、現役の医師たちが日夜、ここで技術を磨いているそうです。Jmeesもトレーニングルームやデモ手術室を使いながら、日々、第一線で活躍している医師たちの知見をフルに活かして開発に取り組んでいます。
※2017年、産学官・医工連携で臨床ニーズに基づいた次世代に望まれる革新的医療機器の開発に取り組むことを目的に開設

A I開発会議風景(左)とアノテーションの様子(右)
医師、エンジニア、アノテーターが高い臨床価値やA Iの精度を求めて、日々議論を重ねています

松崎氏はエンジニアですが、手術のデータを集めてAIの学習を行い性能を高めるだけでなく、実際に医師と同じ視点で会話ができるように、手術現場に出て、手術はどう進んでいるのか、現場でどういった判断がなされているのかなどを理解することにも努め、これまでに50件以上の手術現場に立ち会ったそうです。
特に、臓器はとても複雑な形状をしているため、画像認識は至難の業。国立がん研究センターの協力のもと様々な症例や画像を使い学習効果を高めるだけでなく、開発者自身もその違いが分かるようにならないと、精度の高いAIは完成しないとのこと。

そうして開発されたのが、内視鏡外科手術支援プログラム「SurVis™(サービス)」です。「SurVis™(サービス)」には、子宮全摘出の内視鏡外科手術支援に向けたAIが実装されており、手術中に損傷リスクのある臓器を強調表示することで医師の認識力を支援し、より安全な⼿術を追求します。

現在、「SurVis™(サービス)」は医療機器としての薬事承認を申請中。認可後には、国内の病院で臨床アウトカムを示すための試験に進むそうです。

また現時点では、子宮摘出手術をターゲットに製品開発を行っていますが、今後はより多くの手術への対応を進め、手術中に起きる事故の確率を限りなくゼロに近づけられるような製品への進化を目指しています。まだまだ医療の現場ではAI活用が進まない中で、車の自動運転のように、手術にもAI技術が活用される社会の実現を目指すJmeesの大きな挑戦はすでに始まっています。

ディープテックスタートアップの心髄は、開発拠点を兼ね揃えたオフィスにあり

各社全く異なる事業を展開しているスタートアップですが、事業の根幹となる開発拠点は、その企業の魂そのものといえる場所でした。創業者はそれぞれ東京大学で研究をしていたり、医師との共同創業など、柏の葉の環境だからこそ生まれたスタートアップでもあります。研究開発をしながら事業を生み出していく、それが柏の葉の特徴のひとつともいえそうです。

当コミュニティや、CXO Meetingでの各トピックの続きなど、気になる方はぜひこちらにお問合せください。(運営・執筆 Story Design house)

<コミュニティスタートアップ 一覧>

<コミュニティアドバイザー >
Carbide Ventures ゼネラル・パートナー 堀内健后氏
スタートアップに向けて日米に拠点を持ちアーリー期のスタートアップへ投資実績のあるVCとして、また、アメリカ初のスタートアップTresureDataのマーケティング・ディレクターとして日本立ち上げた実績をもとに、スタートアップへの様々なアドバイスを行う。

<事務局の紹介>
Story Design house株式会社
スタートアップのコミュニケーション支援に10年以上の実績を持つコミュニケーションエージェンシー

【お問合せはこちらから】
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Startup CXO Meeting 運営事務局:cxomtg@storydesign-h.com

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