Kenji Suzuki

Kenji Suzuki

最近の記事

生成AIユーザーと技術〜AI絵師をめぐって〜

 P.F.ドラッカーは、知識が生産手段の中心となる知識社会の到来を予言し、さらに知識について次のように語った。  人間が知識を間違って使うことはある。例えば、人間が技術を間違って使うことがある。そう改めて感じさせる「いいね」の数字が、増加している。  2024年10月も終わる頃「AI絵師」、「生成AIユーザー」などの用語がX (旧Twitter)のトレンドに入っていた。  このポストは、発信者である鈴木健治は生成AI出力物の社会問題と無関係で、たまたまトレンドでみかけ、

    • 『手仕事の日本』と生成AI

      今までも、新しいエネルギー、新しい動力、新しい機械や技術が、人々の仕事を変えてきた。ランプの販売から本屋に転換したり、焼却炉からストーブへと売る物を変えた。 柳宗悦『手仕事の日本』(岩波文庫 青169-2, 1985-2016)は、昭和15年(1940年)ごろの日本各地の工芸品を取り上げて紹介するもので、当時の家内工芸の様子が描写されている。 例えば、香川県丸亀市は、団扇(うちわ)の産地で、昭和の戦前、その工人は3000人という。当時、日本の国々で用いる団扇の八割までがこ

      • 北大サマーセミナー2024 Day 1午前田村善之先生「判例研究の手法:知的財産分野における「判民型」判例評釈の意義とその効用」について

        北大サマーセミナーの現地参加は今回2回目で、生でライブの田村善之先生を堪能。演題は「判例研究の手法:知的財産分野における「判民型」」。 このブログ記事は、感想や今後自分がすべきことのメモです。田村善之先生がこう話していたという事実ではなく、私の理解力の範囲での記載です。ご了承下さい。また、講義内容に含まれない話題も含まれています。 田村先生の判例評釈の手法  判例研究の手法を、多くの知財研究者を育成してきた田村善之教授から、直接学ぶ機会となった。  1920年代に、米

        • デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ(案)についての意見

          書誌事項 デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ(案)本文 提出した意見 意見を述べる機会を賜り、ありがとうございます。 加速化する生成AI 第4章 デジタル空間における情報流通の健全性確保に向けた対応の必要性と方向性 1.対応の必要性 ・該当箇所 (リスク・問題を)「「加速化する」、生成 AI 」(p.247) ・意見 リスクについて「加速化」という特有な用語を使用せず、「生成AIはリスク・問題を高める」などリスク評価できる前提

        生成AIユーザーと技術〜AI絵師をめぐって〜

        • 『手仕事の日本』と生成AI

        • 北大サマーセミナー2024 Day 1午前田村善之先生「判例研究の手法:知的財産分野における「判民型」判例評釈の意義とその効用」について

        • デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会とりまとめ(案)についての意見

          パブコメ対応意見 個人情報保護法いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理

          対象書類 https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000276139 A. 提出した意見1 声や絵柄という生体データを個人情報として保護 該当箇所 第2 1(1)ア 生体データ 意見 人間の肖像、外観、声、絵柄、場合によっては筆跡などを生体データとして保護すべきです。 特に、事業者や個人によるスクレイピングを拒絶するオプトアウトや、事業者や個人が公開する内容(生成AI出力物を含む

          パブコメ対応意見 個人情報保護法いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理

          一倉定初期三部作とドラッカー『現代の経営』 (1)テイラー=能率との関係性

          1. 趣旨 一倉定(いちくら・さだむ)は、日経BPの記事によると、1918(大正7)年、群馬県生まれ。1936年、旧制前橋中学校を卒業後、中島飛行機、日本能率協会などを経て、1963年、経営コンサルタントとして独立した。1999年逝去。 https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19nv/120500136/090200563/  独立した1963年に『あなたの会社は原価計算で損をする』、1965年に『マネジメントへの挑戦』、1969

          一倉定初期三部作とドラッカー『現代の経営』 (1)テイラー=能率との関係性

          統合報告の未来に向けて、2024年から2026年に取り組むこと

          この「IFRS財団と統合報告」の続きです。 経済産業省が2つの懇談会を開催している。 ■持続的な企業価値向上に関する懇談会 https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/improving_corporate_value/index.html (座長 伊藤 邦雄 一橋大学 CFO 教育研究センター長) ■企業情報開示のあり方に関する懇談会 https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/corpora

          統合報告の未来に向けて、2024年から2026年に取り組むこと

          IFRS財団と統合報告2024年4月

          1. 統合報告の<IR>フレームワークはどうなるかIFRS財団に2つの審議会がある。 ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は、次の2年間になにをすべきかのアジェンダコンサルテーションと、その分析が終わり、対象を決定した。 IASB(国際会計基準審議会)では、経営者による説明(Manegement Commentary)の審議が行われている。 2024年4月、IIRC(国際統合報告評議会)が定めた統合報告の<IR>フレームワーク(統合報告フレームワーク)は、IFRS

          IFRS財団と統合報告2024年4月

          「知的財産推進計画2024」の策定に向けた意見募集への意見

          内閣府知的財産戦略本部による意見募集に応じて、下記の意見を提出しました。 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/chitekizaisan2024/iken_boshu2024.pdf (C1) 生成 AI と著作権 意見1 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AI と著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は、現行著作権法の解釈をしめすもので、立法論に言及していません。 日本の社会や経済に生成AIがもたらすリス

          「知的財産推進計画2024」の策定に向けた意見募集への意見

          AI事業者ガイドラインパブコメ文例(2024年2月19日)

          このnote記事にアップした意見Aから意見Iを、パブコメ文例として、提出最終日の9:30ごろ公開しました。同日の23時に936リポスト、1,191いいね、22.1万件表示となりました。 同一文面で複数の意見提出があるかもしれないが、同一人物による複数回投稿ではなく、上記ポストの文面にふれた複数の人から提出された意見の可能性が高い点、ご報告申し上げます。 文例を拡散してくれた方や、自分なりに参照してくれたみなさまに感謝します。ありがとうございます。 ★★★意見A 創作者の尊

          AI事業者ガイドラインパブコメ文例(2024年2月19日)

          AI事業者ガイドライン案への意見

          意見1 創作者の尊厳 第2部 A基本理念 1 人間の尊厳が尊重される社会(Dignity) (1) 人間の尊厳が尊重される社会(Dignity)(p.11) 人間の尊厳が尊重される社会では、創作者の尊厳が尊重され、AI事業者ガイドラインに創作者(データ提供者)が重要な関係者として取り扱われる筈である。著作権者であるデータ提供者やWebコンテンツの創作者の尊厳への配慮がないまま、人間の尊厳が尊重される社会であることを基本理念に掲げることはできず、掲げるのであれば、AIが生み出

          AI事業者ガイドライン案への意見

          AIと著作権に関する考え方について(素案)に関する意見

          意見を述べる機会を賜り、ありがとうございます。素案のおとりまとめに感謝申し上げます   提出した意見は所属組織、研究会や団体と無関係な個人の意見です。 提出した意見はこのnoteに公開しました。 https://note.com/kvaluation/n/n05e05baf87f6 字数に応じて複数に分けて提出します。 全体の要約 情報解析は、学習する著作物の種類と異なる種類の出力をするものが該当し、同一種類の出力をする生成AI・大規模言語モデルの学習は情報解析ではないた

          AIと著作権に関する考え方について(素案)に関する意見

          著作権法30条の4の契約によるオーバーライド

          AIと著作権に関する考え方について(素案)について、任意の意見募集がなされている。 このポストのツリーを、まとめなおしてみました。 https://twitter.com/info_kvaluation/status/1751075262786400693  素案は、制限規定一般や、著作権法30条の4について、強行規定であるかどうか、言及していない。  30条の4が強行規定であれば、当事者間の合意があっても、30条の4の規律が有効であり、当事者間の合意は法的に意味がない

          著作権法30条の4の契約によるオーバーライド

          インタンジブルズと企業報告の未来

          このエントリは、会計系Advent Calendar 2023、12月18日分です。 写真は本文と関係ありません。磐越東線です。 1. 要約・インタンジブルズという用語の使用例を調べたので共有したい。 ・ウェブスター大辞典は、インタンジブルズを「定義しえないか、または確実もしくは正確に判別しえないもの」と定義しているらしい。まさにダークマター。 ・ESG要素やインタンジブルズから直接に財務や企業価値との関係を定性的、定量的に把握しようとするのではなく「価値創造」を挟むと見

          インタンジブルズと企業報告の未来

          イノベーションボックス税制と知的利益

          このエントリは、知財系 Advent Calendar 2023、12月17日分です。 写真は本文と関係ありません。磐越東線です。 1. 要約・イノベーションボックス税制は色々と素晴らしい。 ・優遇税制について、OECDとG20の合意がある(BEPS)。 ・自社実施(組み込み型)の導入を目指したい。 ・企業の価値創造を促進し、その価値創造を持続させることに役立つ制度であって欲しい。 ・自社実施型を導入済みの英国、オランダとの計算例を確認した。 ・日本が、自社実施型を導入す

          イノベーションボックス税制と知的利益

          生成AI(AIシステム)と特許法

          (一体型文具03, 04について異なる画像をアップしていたため、修正しました。「感情共有デバイス」に関するChatGPT共有へのリンクに誤りがあったため更新しました。11/6) 内閣府知的財産戦略推進事務局 御中 AI時代における知的財産権に関する意見 提出する意見は所属組織、研究会や団体と無関係な個人の意見です。 この意見では、事例としてChatGPTを使用しております(事例1から3)。 意見の本文については、ChatGPT等の生成AIは使用しておりません。 Ⅱ. A

          生成AI(AIシステム)と特許法