夜歩きの犬につきそうと ここ数日 薄雲のうわぐすりの下でお月さんが 色のない空に光の赤丸でかこまれて その存在をきわ立たせるので 見あげざるをえない 月あかりの彩雲を航行灯がよぎる
うごくのに時間がかかる植物は 岩の凹みのつち溜まりなど 生まれ落ちた環境が乏しければ 乏しいなりに育つ力がある おじいちゃんに植えられてから 鉢でずっと過ごしてきた盆栽 おじいちゃんが居なくなり棚がなくなり 場所を転々するうち地面に置かれ 剪定されることもなく 水くらいはもらいながら 自由に過ごすときは流れ やがて鉢から根をだし 広い土壌に達したころには 幼なかったおじいちゃんの孫は 妙齢となっていた (放置のまま観察はつづく) 鉢という環境から一歩抜け出し 大地から得
入浴前にグラス一杯の水をと入れたら なんか綺麗 グラスの影のなか 水が光の塔のような像を結んだ いつか秋の夕方 散策を終えやすんだ植物園のテーブルに おなじようにできた光の塔は グラスをあげると網のような光がゆらめいて かたむけると水母のように姿を変えた しみじみと綺麗で 友とつかのまグラスを玩んだ こういう光線の集まりやその投影による独特の模様を コースティクスというらしい なんかゆる系の白壁に映る池の波紋を描いた絵が あったよなと朧げな記憶から辿ると 国宝の十便十
陽がおちてからの散歩で 犬が溝を気にするのでのぞくと 流れる落ち葉を追っていたのでした なぜか笑みがこぼれて そのなごみが自分でもわからず でもそれが今日のハイライト 子どものころ溝に葉っぱを流して 追いかけたことでも 意識しないレベルで思い出したのでしょうか
虫展を見に美術館へ 本草学や博物学など今見て科学的と感じる視点と そうでないものを続きで見られたのがおもしろく 一寸の虫にも五分の魂とは いつから言うたか知らんけど 小さくふしぎな生命をこんな風に 慈しみ畏れ見立て空想して 色んな角度から心を寄せて来たのだなぁと 昆虫館と三大俳諧コレクションのある街 ならではのキュレーション これまで博物学っぽいものも好きと思っていたけど いまぐっときたのは 玉むし物語 酒井抱一 虫之大名行列図 平安貴族が左右に分かれて競う和歌バト
前からいまひとつ正体のわからないものに 宝珠や擬宝珠(ぎぼし)がある 橋の欄干に付いていることのある スライムみたいなやつは何か?と 大人にきいたら「『ぎぼし』や。」と言われ、 知らないものの名前として 聞いたことのない言葉を投げられただけだった ぎぼしって何よ? 少し成長すると擬宝珠とは字から 宝珠を模したものであることは想像できたが そもそも宝珠がわからない ある時は仏画のなかに ある時には仏像の掌に 蓋のつまみがこの形なこともある そこにわざわざ置くものが 字の
相撲中継で相撲場にお神輿が来て 2024年ですが江戸下町の風情とか言う 江戸下町風情には憧れるが、今年は残暑も灼熱で こんななかお神輿とか🫠 昔からのお祭りなどそう簡単に日程先送りとか できないのかもしれないけど 最近知ったお相撲さんの寿命、 平均よりだいぶ若く亡くなられるよう 力士の埴輪を見たことがあるくらいなので それも相当に古い流れを汲むものを そう簡単に変えられないことと思うが お相撲見ないくせに言うが 2024年に従事する人が早死にする「国技」は嫌だ
巻いた葉をまくらに水に浸かり 葉陰に睡るも水面に太陽が添い寝して 暑がる睡蓮
イチジクをたくさんもらって 好物だった人のことを思い出す あるとき民族衣装が面白くて 和服のことももっと知りたくなり 近所の和裁ができる方のご厚意で 教えていただいたことがあった 着物を仕立てていくことも面白かったが なにか構造が文化をあらわしているようで 着物は直線裁ちなので解くと一枚の反物に戻ると 本で読んではいたが 母の着物を洗いはりに出してみると バラバラの裂がほんとうに1枚の反物状に ゆるく縫いつながって帰ってきた 1cm四方ほどの端裂もすてず補強につかったり
老ピアニストが南アフリカの砂漠に浜辺に グランドピアノをおいて奏でる その姿にチャンネルを止め耳をかたむける そのなかで聞いた 感情はかたむかずニュートラル かろやかに明るく力まず 淡々と繰り返し 積み重ねられる同じフレーズ この曲が反アパルトヘイトのテーマとなり 合言葉のように口遊まれたという 目にたまった涙が 扇風機の風で波立ち視界がゆれた 音のしらべが難しいことを成しとげるときの 心のあり方を指し示しているようだった 老ピアニストが大地に立ち詩を詠む 深いとこ
借りた犬と歩くマジックアワー 土手の向こうに寺社のうえに 夕やけ色のうつろいや 神様の筆さばきとは誰が言ったか 雲のあらゆるかたちに陶然と 入道雲が染まるのを初めて見た 薄明かりでも目につく 百日紅の色がそこここに 犬に引かれるまま ライトをつける暗さになり 知っている家の一本奥の知らない道に 昔ながらの焼杉壁が現れて 違う世界に迷い込んだ心地
最近TV番組で見た話 お寺の住職が企画した地元の戦中資料の展示 口のついた陶製の球体を見せて 何と思うかと問う 「一輪挿しか何かのよう」と取材者は答え 住職も「お酒も入れられそう」といい 実は陶製手榴弾だという 金属の不足した太平洋戦争末期 全国の陶磁器産地で 陶製の地雷や手榴弾が作られたとか 威力は金属より劣ったという 「やっぱりねぇ、身内が攻撃されたりしたら、 (戦いに)行ったるわ!!!ってなるんですよ。」 とは、戦中に子どもだった人から聞いた話 最近読んだ本による
「夕涼みイベント」の文字が目に入った 陽が落ちても気温さほどさがらず 翌日、陽がまたのぼろうとする前でも30度弱 日時まで目に入らなかったが 果たして夕涼むこと叶うのか 久しぶりにふれたその言葉にあこがれ それはもうほとんど幻 夕涼みの涼(すず)の音に 鈴を想ってしまうのか 風鈴や鈴虫の音がきこえ 肌を冷ますしっけた空気 グラスと氷が鳴る ゆかた うちわ スイカ 手持ち花火に照らされる 親しい人の顔 線香花火が火の姿を変えるのには 気づいていたけれど それらに名前があるこ
へやの窓を開けて風を通してたら 黒っぽいアシナガバチみたいなんが入ってきてん カーテンレールカバーの上を なんか機嫌良さそーに歩いて行き来すんねん まさか巣ぅ作ろうとしてるんちゃう?と直感してん うん!ここにしよ!ゆー蜂の心の声がきこえてん ここはやめて〜のつもりで うちわでゆるゆるあおいでみてんけど 小さい生きもんにあんまり強ぉもでられへんし むこうもあんまり嫌そうにしてるふーもなくて 外に出た隙に窓を閉めてん あの感動的な六角形が作られていくのんを 目の当たりにして
見たことのない目ぇ のうなったばっかりの人の目ぇ 光を湛えた真っ黒で なんかちっちゃい星みたいなんも いっぱい見えたような気ぃがするのは ファンタジー? その印象が妙に胸にせまって あとから考えたら もしかして、瞳孔が開いてたから? そのとき 光につつまれるってそういうこと? あのときおっちゃんはもう楽になって 光につつまれてたんやってしんじてる お棺に入らはって見たときには なんと歯ぁみせて笑ろてはるみたいに見えた すごいなぁ こんな遺した人らおもいなことある?
気温30℃をこえない日はすごしやすい 先ほどから聞こえるのは耳鳴か蝉の声か 耳を澄ますこの周期性は蝉 いつ梅雨は明ける 飛行機が通るたび重く鳴る空 暮れかかる部屋を灯さないまま カーテンや窓、家具、扉がつくる明暗 壁に落ちる影の階調がうつり変わり ほの白い窓を残すほか すべてが墨色となった 蛙が鳴く