MANNENBERG

老ピアニストが南アフリカの砂漠に浜辺に
グランドピアノをおいて奏でる
その姿にチャンネルを止め耳をかたむける

そのなかで聞いた
感情はかたむかずニュートラル
かろやかに明るく力まず
淡々と繰り返し
積み重ねられる同じフレーズ

この曲が反アパルトヘイトのテーマとなり
合言葉のように口遊まれたという
目にたまった涙が
扇風機の風で波立ち視界がゆれた

音のしらべが難しいことを成しとげるときの
心のあり方を指し示しているようだった

老ピアニストが大地に立ち詩を詠む

深いところに流れる水
井戸をほってその水で渇きをうるおしたい
祖先の叡智であるその水に触れたい
というような詩

その渇望はアフリカにかぎらず
世界中の人の渇きであるかもしれない


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