My favorites of 2022
新年初めの読み聞かせで読んだ「十二支のはじまり」という絵本では、今年の干支「卯(うさぎ)」は「足が速いのに余裕を決め込んでいたため4番手になった」と「うさぎとかめ」の寓話同様な書かれ方だった。とりあえず、今年は調子に乗って怠けることなく、亀のように努力を積み重ねて一歩ずつ前へ進んで行きますか。結局、亀は12番に入れなかった訳だけど。
では、毎年恒例の一年の振り返り、大晦日のツイートを詳しく解説して行こう。
1.Song…「3636」(あいみょん)
・あいみょんの昨年8月にリリースされたアルバム「瞳へ落ちるよレコード」の収録曲、おそらくサビの「宅配ボックスの 5番のとこ いつもの暗証番号で」は、昨年自分が一番鼻歌で歌ったフレーズだろう。覚えやすいサビの歌詞とメロディーといい、関ジャムで解説してた恋人二人の不安定さを表すイントロといい、興味をそそる数字のタイトルといい、とても計算されて作られた曲だと思う。
でも何といっても、「心を閉ざされてしまった」ことを「宅配ボックスが開かなくなった」と詠う、あいみょんの詩人としての素晴らしさでしょう。そして、「静かになってしまったこの部屋は 2人の恋を詰めていた箱になったね」と「部屋」を「箱」と詠い、現在進行形の恋ではなく、過去の思い出として表しているのだよ。天才詩人か。
昨年12月のNHKの特番で、彼女が自身の過去を振り返り、同級生も学校の先生も彼女の歌手になりたいという夢を笑っていたと、涙ながらに歌う「Tower of the Sun」にもらい泣きした。めげずに夢を追い続け、こんな素敵な歌を届けてくれた彼女に、心からありがとうと言いたい。
・次点:「BADモード」(宇多田ヒカル)...昨年1月リリースのアルバムの表題曲、「ネトフリ」とか「ウーバーイーツ」等の時代を映す言葉だけでなく、そのあとの「お風呂一緒に入ろうか」にやられてしまった。落ち込んでいる時に、パートナーに言われたい、これほどのパワーワードはあるだろうか。
2.Album...「SOFTLY」(山下達郎)
・マンガ家・ヤマザキマリさんが描き下ろした肖像画を使用したジャケットに驚かされた、昨年6月リリースの達郎さん11年ぶりのオリジナルアルバムで、「RECIPE(レシピ)」や「ミライのテーマ」等のヒットシングルも含めた珠玉の15曲が収められている。もう、最高としか言いようがない。後述するライブチケットが当たったこともあり、予習もかねてしっかりと聴き込んだ。
どの曲も素晴らしいが、特にお気に入りは、この「LOVE'S ON FIRE」と「人力飛行機」、「LEHUA, MY LOVE」の3曲。「LOVE'S ON FIRE」は80'sを彷彿とさせる鍵盤の電子音のイントロから始まる古くて新しい曲。「人力飛行機」は今の朝ドラの主題歌にしても良かったのではないか、と思わずにはいられない若者への応援歌。「LEHUA, MY LOVE」は「LEHUA」がハワイ諸島に自生するオヒアレフアのことということで、南国っぽい軽快さながらも思いを上手く伝えられぬせつないラブソング。
そして、昨年はロシアのウクライナ侵攻があったため、注目を浴びた「OPPRESSION BLUES (弾圧のブルース)」。元々は、一昨年、ミャンマーや香港の争乱からインスピレーションを受けて作ったとのこと。今も世界で続く争乱と圧政に苦しむ人々がいることに心を痛めたという、達郎さんのブルースが胸に沁みる。
「SOFTLY」というタイトルには、この動乱の時代を音楽で優しく、柔らかく包み込みたいという達郎さんの思いが込められている。温かくもどこかせつなさずっと心に残るアルバムだ。
・次点:「瞳へ落ちるよレコード」(あいみょん)...「ハート」や「愛を知るまでは」等のヒットシングルだけでなく、上述の「3636」や他にもお気に入りの「姿」などの名曲もあり名盤だと思う。「姿」は韻を踏んだ歌詞とサビの盛り上がりがもうたまらない。そして、この甲子園ライブでの弾き語りバージョンも凄く良い。あいみょんは詞などの楽曲にどうしても注目が行くが、この高音の伸びといい、シンガーとしても超一流だと思う。
3.Live…「TATSURO YAMASHITA PERFORMANCE 2022」(9/13 高崎芸術劇場 大劇場)
・昨年5月に交通事故に遭い、都市伝説を信じ買いまくった宝くじは当たらなかったが、長年外れまくってた達郎さんのチケットが当たった。2019年に出来たばかりの高崎芸術劇場の大劇場の前から5列目のど真ん中という特等席、目の前で繰り広げられる圧巻のパフォーマンスに、ただただうっとりするだけだった。
自分は足利市から車で行ったが、帰りの人の流れを見ると、駅に歩いていく人がほとんどだった。JR高崎駅からペデストリアンデッキを歩いて5分の便利な会場だったので、電車で都心から来てた客が多かったと思われる。じゃなきゃ、MCで達郎さんが「高崎と前橋の仲の悪さ」を話した時、もっとドッとウケたはずだもの。
よくラジオで「老人虐待だ」なんてご本人が仰っているが、3時間弱のあのレベルのライブパフォーマンスを休みなく続ける姿に、感動しっぱなしだった。お馴染みの曲から最新アルバムの曲まで、そして、「君は天然色」、「ハイティーン・ブギ」のカバーまで、「This is 山下達郎」というような選曲の幅広さだ。もちろん、これを聴くまで俺の今年の夏は終わらないと断言してた!?「さよなら夏の日」も聴けた。
そして、今まで自分にとって40年来「SOMEDAY」は元春の「SOMEDAY」だったが、達郎さんの「いつか(SOMEDAY)」に入れ替わるほど、この曲が好きになってしまった。♪SOMEDAY 一人じゃなくなり SOMEDAY 何かが見つかる♪
・次点:「VIVA LA ROCK 2022」(2022/5/1 さいたまスーパーアリーナ)...ビバラ初参戦、3年前のロッキンでのスピッツが忘れられず、今回もスピッツとCreepy Nuts、SHISHAMOを楽しみに行く。会場の音響の酷さに辟易したが、目当ての3組のパフォーマンスにはほぼ満足だった。特に、Creepy Nutsの「のびしろ」は、生で聴くと最高に盛り上がる。もう、のびしろがほとんどないおっさんだが、「のびしろしかないわ♪」って言い続けてやる。
4.Book…「月の満ち欠け」(佐藤正午)
・文句なしにここ数年で読んだ本の中でNo.1だった。詳しい感想はこちら。
月の満ち欠けのように、死んでも何度も生き返る。こんなファンタジーが読みたかった。いや、死んでも何度でも生き返って、愛する人に逢いに行く、愛の物語か。とにかく、その構成の凄さに驚く。30数年の間に4人の「るり」がいて、そのそれぞればらばらの人生・物語が一本に繋がった時の感動と言ったら、そりゃぁもう読書の醍醐味だよね。
「タイムスリップもの」の肝は、「タイムスリップした先で何をするか?」だと、ホイチョイの馬場康夫さんと対談した日本映画放送㈱社長の石原隆さんが「バックトゥザフューチャー」を語る際に話してたのを思い出した。BTTFではタイムスリップした先で「自分の母と父を恋に落ちさせる」のが抜群に面白かったが、この本では、どのタイムスリップ(生まれ変わり)先でも、「愛する人に逢いに行く」、そこが純粋に胸に刺さるのだろう。
・次点:「掃除婦のための手引き書」(ルシア・ベルリン著、岸本佐知子訳)...度肝を抜かれた。グワングワン、心を揺さぶられた。詳しい感想はこちら。
私小説と思われるが、とにかくその波乱万丈な人生が何とも魅力的に思えてくる。裕福なお嬢様時代も酷い虐待に遭い、アルコール依存症となり、いわゆる社会の底辺を渡り歩いてきて、それでも彼女は読書を続け、書くことを続けたおかげで、我々はこんな素晴らしい本と出会うことが出来たのだ。
5.Drama…「鎌倉殿の13人」(NHK)
・まさか、大河を一番好きなドラマに挙げる日がくるとは思わなかった。大河をちゃんと見始めたのは、2017年の「おんな城主 直虎」からか。以来、「西郷どん」「いだてん」「麒麟がくる」「青天を衝け」とそれなりにハマってはいたが、録画を消さずに残したのは、この鎌倉殿が初めてだ。
三谷幸喜さんの脚本の素晴らしさもさることながら、小栗旬演じる「北条義時」という人物の我が知識の少なさとあまりの変貌ぶりによる、毎回どうなってしまうのかという期待度が過去の大河と桁違いだった。日本史をちゃんと勉強して来なくて、初めて良かったと思った。
三谷さんに群像劇を書かせたら絶対面白くなるとは分かっていたが、血縁者を次々と亡き者にしていく史実と一年間という長丁場を考えると、途中で少しつまらなくなる時期があるのかなぁと思ったが、全くなかった。一年通してずっと面白かった。
しかし、天下を収めるには、こうも清濁併せ呑む人間でないと駄目なものなのか。清廉潔白で天下を収めた人物って、歴史上いるのかなぁ。次の家康は狸爺だし。
次点:「ミステリと言う勿れ」(フジテレビ)…「エルピス—希望、あるいは災い—」(カンテレ)と迷ったが、「エルピス」は前評判が凄かった分、少し拍子抜けの感があった。こっちは、単純にミステリーとして面白かったし、事件を解決していくのが、刑事でも探偵でもないカレーをこよなく愛する大学生・久能整という設定が斬新だった。
2021年のダントツ2トップに比べ、2022年は団栗の背比べというか、粒ぞろいという感じで、上の2作品とそんなに変わらぬ評価で、「エルピス」、「あなたのブツが、ここに」、「プリズム」、「拾われた男」、「雪女と蟹を食う」、「作りたい女と食べたい女」、「鉄オタ道子、2万キロ」、「ひきこもり先生シーズン2」、「遺留捜査第7シーズン」、「ももさんと7人のパパゲーノ」辺りが並んでた。
6.Movie…「ちょっと思い出しただけ」(東京テアトル)
・2022年も結局映画館へはあまり行けなかった。これも休日にアマプラを覗いていると、池松壮亮と伊藤沙莉という好きな俳優の並びを見て、思わず視聴。クリープハイプの尾崎世界観が自身のオールタイムベストに挙げている、映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』から着想して作曲した「ナイトオンザプラネット」に、松居大悟監督が触発され脚本を書いたとのこと。
元ダンサーで今は舞台照明係の男とタクシードライバーの女の6年間の恋愛を、ある特定の一日(男の誕生日)を定点観測する手法で、現在から過去へ1年ずつ遡って描いていく。描かれるのはその誕生日の一日で、1年前の誕生日、2年前の誕生日…と、まぁ、現在が別れた状態なので、遡るにつれどんどん幸せな描写になって行く。そりゃ、恋愛は付き合い始めが一番幸せだもん、そうなるよね。でもそれが、せつな過ぎるのよ。
また、定点観測することで、脇の登場人物達の人生も垣間見えて面白い。妻に先立たれ公園のベンチにいつも座っている男(永瀬正敏)や主人公二人の行く末を結果的にずっと見守っていたことになるミュージシャン(尾崎世界観)等々。
この映画見たのが12月だったから、ふと妻と過ごしたXmasの一日をずっと1年ずつ遡って思い出してみたよ。遡れば遡るほどキラキラしかないよね。せつない。
・次点:「月の満ち欠け」(松竹)…上で年間No.1に挙げた原作本がとにかく面白かったので、イオンシネマへ見に行った。やはり、文庫本1冊の小説を2時間に収めるのには無理があったか。しかも、時空を超えて生まれ変わり、4人の「るり」が登場するややこしい話な訳で、そこを丁寧に描いて物語を繋げていた原作を、やはりどこか省かなくてはいけないので、まぁ仕方ない話ではある。最後の再会の描写があれじゃなきゃ何とか収まりがついたけど、とにかく、有村架純様のお美しさを堪能する映画だとしか言えない。
7.Sport…「準々決勝クロアチアVSブラジル戦でのモドリッチの王様プレー」(カタールW杯)
・全試合を見て寝不足となった1ヶ月、もちろんアルゼンチン対フランスの決勝も凄かったが、自分が一番印象に残ったのはこのクロアチアとブラジルの試合で、とにかくモドリッチのプレーがまさにピッチ上の王様だった。
今大会でメッシやエムバペなどスーパースターは数々いれど、これほどゲームを支配出来るプレーヤーは、彼しかいなかったのではないか。特に、この優勝候補ブラジルを相手にしての試合が凄かったのだ。同じポジションのかつての日本代表の司令塔、ラモス瑠偉さんによる評論が、物凄く的確だったので紹介する。
ここ数年、モドリッチもクラブ(レアルマドリード)では、年齢的なこともあるし、他にも優秀なチームメイトがいるので、これほどのプレーは見せてない。しかし、やはり国と国の戦いであるW杯だからこそ、そして彼に全幅の信頼を置くクロアチアというチームだからこそ、出せた王様プレーだったのかなと。
こういうサッカーの試合が見たいがために、自分は生きているのだと改めて実感した。
・次点:「南野、リヴァプールを去りモナコへ」(プレミアリーグ)…彼がレッズに在籍した2年半は夢のようだった。だって、自分の大好きな海外のチームに、自国のエースが来てくれたのだ。出番も少なく、思うような活躍は出来なかったが、21-22のラストシーズンは10ゴールを挙げ、間違いなく2冠に貢献した。特に、腐らず努力を続けた結果、終盤の古巣サウサンプトン戦では久々の先発を勝ち取り、きっちりゴールを決めた姿は、まさに「仕事人」だった。
たらればだが、もし残留してたら、今季の怪我人続出のリヴァプールでは、出番が確実にあっただろうから、コンディションも保てて、W杯でももっと活躍出来てたかなぁ。モナコでも不遇のようなので、早くリーズやサウサンプトン等の中堅チームでもいいから、プレミアに復帰してほしい。
8.Event…「0.5秒差で生き残った命」(5月に交通事故)
・昨年5月に近所の見通しの悪い交差点で衝突事故を起こした。幹線道路に出ようとした自分が、ミラーで右から来る車を見落とし、流れに突っ込んでしまった。相手車が自車の先端にぶつかり、愛車アウトランダーは廃車となり、数ヶ月のむち打ち症に苦しんだ。
交差点に入るのがあと0.5秒早かったら、相手車が運転席直撃だったと思われるので死んでただろう。生かされた命、大切に生きて行こう、とありきたりの思いが募ったのと併せて、実はこれはデジャヴのような気がしてきたのだ。
今から約25年前の生命保険会社の川崎支社鹿島田営業所長時代の1997年7月に、同乗してた営業職員に大怪我をさせる事故を起こした。その事故の数週間前、高幡不動近くのお饅頭屋さんに行った帰り、川崎街道である車に煽られ、数kmカーチェイスを繰り広げ、何とか逃げ切った。そして、昨年5月の事故の数週間前のGWでも、煽る車と東北道を数十kmカーチェイスを演じて逃げ切ってたのだ。
ハンドルを持つと気性が激しくなるのは数十年変わってない。それを直さない限り、命は幾つあっても足りないなぁと。性格は中々直らないので、運転時に心を落ち着かせるためのルーティンを見つけるしかない。
・次点:「燃える闘魂、アントニオ猪木死す」…好きな芸能人やミュージシャンやスポーツ選手が亡くなってもそれほど引きずらないタチだが、猪木さんの死から数週間、何もする気になれなかった。自分の将来に期待よりも不安の方が大きかった中学・高校時代、我が背中を押し続けてくれたのが猪木さんだった。「猪木信者」と言われるが、彼の生き様を本当に信じていた。
でも、大学の推薦入学の申込書の尊敬する人物の欄に「アントニオ猪木」と書いたら、母に「父親」と書き直させられた。「尊敬する人物=アントニオ猪木」を押し通す勇気が、高3の自分にはなかった。自分の信じるものを曲げた、人生の後悔の一つだ。書き直さなかったら、お坊ちゃん大学の推薦は通らなかっただろうか。
兎年の2023年は、公務員を目指し就職浪人中の長男、4月から大学4年生となり就活が始まる次男、二人とも勝負の年だ。やりたいことがハッキリしている長男、まだ何をやりたいのか分からない次男、正反対だが「兎の登り坂」の如く、自分の得意分野で力を発揮すれば大丈夫だ。二人の成功という二兎を追いかけて、遠くから君たちの背中を押し続けるよ。迷わず行けよ、行けばわかるさ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?