6月23日 東京五輪の経済効果は5分の1に!?
はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための質問例はこちら。
1894年(明治27年)のこの日、パリで開催された国際会議において、国際オリンピック委員会(IOC)が創立された「オリンピック・デー」です。
「近代オリンピックの父」と呼ばれるフランスのクーベルタン男爵の提唱によりオリンピック復興に関する国際会議が開催され、1896年(明治29年)にアテネで第1回オリンピック大会の開催することを決議した。第二次世界大戦後の1948年(昭和23年)、第42次IOC総会において、同日が「オリンピック・デー」に定められました。
オリンピック。
思えば去年あったんですね…なんか遠い昔です(個人の感想です)。
ちょうどタイミング良く、一昨日21日に東京五輪・パラリンピック組織委員会が最終決算を出してニュースになっています。
詳しくは同委員会のHP(30日には閉鎖!?されるそうです)をご覧いただくとして、おそらく最も言いたかったであろう部分を引用します。
つまり、当初計画よりも少なくて済んだよ!ということです。
ただ、報道にもあるとおり、そもそも誘致の際に出していた試算では7千億円規模でしたから、倍になっている、という点は触れられておりません…
まぁ、報道などを通じてこれから検証が進むものと思いますが、ここでは、経済効果についてみていきたいと思います。
昨年、関西大学 宮本勝浩名誉教授の推計では、東京五輪・パラリンピックの経済効果は約6兆1,442億円とされています。
これは、もう、オリンピックが閉幕した後のものですが、当初の経済波及効果は全国で32兆円と試算されていました。
もう一つ、みずほフィナンシャルグループが、2017年2月9日に公表した「2020年東京オリンピック・パラリンピックの経済効果」では、マクロ・アプローチによる経済効果の算出がなされています。
オリンピックは成長率を0.3%pt押し上げるので、成長率上振れによる効果は累積で約28兆円と、先程の全国で約32兆円と近い数字になっています。
この根拠になっているのが、過去のオリンピック・パラリンピックの経済効果です。
まず、日本銀行が2015年12月に公表した「2020年東京オリンピックの経済効果」では、1950年から2009年のオリンピック開催国における実質GDP押上効果を抽出し、オリンピック前後でどれくらいの実質GDP押上効果があったかを試算した研究を紹介しています。
これによると、オリンピック開催5年前から2年前にかけて開催国の実質GDP成長率は有意に高まることがわかり、加えて、オリンピック開催後もGDPの水準は低下せず、経済を持続的に押し上げる効果がある傾向があることを示しています。
オリンピック終わると不景気がくる、なんていうイメージがありますが、過去の大きなトレンドではそうではない、ということですね。
ちょっと意外です。
では、個別の国でみていきましょう。
先程のみずほフィナンシャルグループのレポートでは、スペイン(バルセロナ)、オーストラリア(シドニー)、ギリシャ(アテネ)について、開催前後の実質GDPの動きが掲載されています。
これを見ると、確かに、開催10年前から6年前のトレンドから上振れしてそれが開催後も継続しているように見えます。
日本経済研究センターのコラムでは、1964年の東京五輪と経済効果を比較しています。物価が全く違うので直接比較はできませんが、あえてそのまま並べたのがこちら。
注目はGDP比です。1964年の東京五輪は3.1%、2020年は0.6〜0.8%。かなり大きな差があることがわかります。1964年の東京五輪が日本に与えた影響の大きさが伺えます。
この理由ですが、会場建設費などの直接経費のGDP比は2020年の方が大きいのですが、オリンピックのためのインフラ事業が1964年は大規模です。東海道新幹線の開業、首都高速の延伸、地下鉄の延伸、上下水道の整備などなどです。
当時はオリンピックによって一般市民の生活も、目に見える形で劇的に便利になったのです。
それに比べると、確かに今回のオリンピックでそれほど明確な変化を実感できたでしょうか?
と、このように、誘致した時にはバラ色の未来が描かれていたことが分かります。
現実は、32兆円が6兆円、ですから、5分の1以下(もちろん、試算のベースが厳密に同じものではないのですが)になってしまった、ということです。
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こうした投稿を一昨年の7月からしています。以下のマガジンにまとめていますのでよろしければ覗いてみてください。