12月17日 航空機メーカーはなぜ2社寡占に?
視野を広げたい、が、どうしても自分が携わっている仕事中心になってしまう…
そんな問題意識をお持ちの方に、その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。普段の仕事や興味の範囲を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
→部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。
1903年のこの日、アメリカ・ノースカロライナ州のキティホークで、ウィルバーとオーヴィルのライト兄弟が動力飛行機の初飛行に成功したことを記念して「飛行機の日」とされています。
この日には4回飛行し、1回目の飛行時間は12秒、4回目は59秒で飛行距離は256mだったそうです。
飛行機といえば、12月7日分でご紹介した「国際民間航空デー」で旅客数、輸送量の変化は取り上げましたのでご興味がありましたら。
本日は、飛行機を使う方ではなく作る方を見てみます。
ご存知の通り、世界2大航空機メーカーであるエアバスとボーイングですが
2021年7〜9月期
エアバス:売上高は105億1800万ユーロ(前年同期比6%減)、損益が4億400万ユーロ(約523億9800万円)の黒字(前年同期は7億6700万ユーロの赤字)。
ボーイング:売上高は153億ドル(前年同期比8%増)、損益は1億3200万ドルの赤字(前年同期は4億6600万ドルの赤字)。ただ調整後のコア営業損益は5900万ドルの黒字。
と、エアバスの回復ぶりが目立ちますが、昨年は両社とも赤字でした。
加えて昨年、エアバスは1.5万人、ボーイングは3万人の削減を行うことをそれぞれ発表しています。
<歴史>
そもそも、エアバスとボーイング、どのように今の地位を得たのでしょう。
まず創業ですが、ボーイングは1916年、エアバスはフランス、ドイツ、イギリスの政府が航空分野で協力合意したことをもとに、1970年に設立されました。
エアバスは、当時ボーイング、マクドネル・ダグラス、ロッキードといったアメリカのメーカーが席巻していた航空機市場に危機感を抱いた欧州各国が共同したものです。
実際、欧州には、1960年代まで、トライデント(英)、コメット(英)、カラベル(仏)等の有力メーカーがありました。英仏両国はコンコルドを製造するために手を結びましたが、結局、ダグラスDC-8とボーイング707が、またその後も、米メーカーの航空機が世界の航空会社の主力機となって行きました。
なかなかシェアを奪えなかったエアバスですが、転機となったのは1980年代に登場したエアバスA320でした。旅客機として初めてデジタルコクピットとデジタル式フライ・バイ・ワイヤを採用するなど多くの新技術を取り入れ採用する民間航空に採用されることになります。
一方のボーイングは、アメリカ市場を防衛するため、1996年にアメリカン航空と20年間の独占契約を結び、翌年までにデルタ航空、コンチネンタル航空とも同様の契約を結びます。
さらに、1997年には経営不振に陥ったライバルのマクドネル・ダグラスを買収。これにより、市場はボーイングとエアバスの2社に絞られることになりました(ロッキードはすでに旅客機生産から撤退済)。
<航空機産業のビジネスモデル>
航空機メーカーは初期段階に巨額の研究開発費を強いられます。加えて、新機種については厳しい認証試験を通過しているといっても、購入するエアラインにとっては設定通りの燃費性能が発揮されるのか、修理や補修がどれだけ必要か等の実績がないことが不安材料です。
そのため、特に初期の納品に関しては相当程度の値引きを行うことが商慣行になっています。メーカーはその実績を持ってその他の航空会社に納品を行っていき、修理や保守も含めて投資回収していく、というのがビジネスモデルです。
ですから、初期の開発投資とその後しばらくの値引き販売に耐えられる財務力が求められますし、一度の開発の失敗が命取りにつながります。
実際、小型機のメーカーであったブラジル国営のエンブラエルは1990年頃開発した機体に価格競争力がなく、開発が中止、1994年に民間に売却されていますし、そのライバルであったカナダのボンバルディアも開発スケジュールが遅延し、経営不振となり、エアバスに買収されています。
三菱重工が「立ち止まる」とした航空機開発ですが、既存メーカーでも一度の失敗が命取りになるような、新規参入するにはかなり難しい市場であったことが分かります。
逆に、そこで実績を積み重ねていくこと自体が競争優位を生み出し、寡占化した市場で過去販売した機体の保守修理などで比較的安定的な収益を確保してしまえば、優位はしばらく揺らがない状態を作り出せる、ということも言えます。
→今後の2大航空機メーカーは今後どのようになっていくだろうか?
最後までお読みいただきありがとうございます。
過去の投稿は以下にまとめていますので頭の体操ネタに覗いていただければ幸いです。