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#553 KPIが目的化するのはなぜ?

ある営業部門の役員が「KPIの狙いが担当者に正しく伝わっていない」とぼやいていたのを聞いて、思ったことを、メモ。


1、KPIあるある!?

営業部門で働いております。販路の種類ごとに営業部門が分かれておりまして、その企画担当部署にいるもので、各役員とも話す機会があります。特にレポートラインでない、斜めの関係の役員は、気軽な感じで愚痴をこぼしたりすることがあります。

最近、数字が厳しい部門の役員が、「現場担当者から『KPIをこなすのに忙しくて、他のやりたいことができません』って言われたんだよね…」と愚痴をこぼしていました。

口を挟むのもなんなので、うなづきながら先を促すと、原因は、そもそも部長、課長に当たる中間管理職がきちんと主旨や目的を理解していない、だから担当者にそれを伝えられず、単にKPIを落としているから、「こなすだけのKPI」になっているのではないか、とのことでした。

いやーあるある、ですね。


2、数字が厳しいほどKPIは目的化しやすいが、その本当の理由は…

で、その部門の知り合い(その役員の部下)に聞いてみたところ、数字が厳しいのでKPIの設定値も増えていて、確かに現場から本来の目的である結果よりもKPIをこなせばいいんだろ、みたいな声が出ている、という話でした。

が、よくよく聞くと、そうなっている理由は、くだんの役員が会議の席などで、KPIの進捗を確認し、「KPIは必ずやるんだ」的な議論の余地もないような強い口調で言うので、部長たちもとにかくこなすよう指示を出していること、だったのです。

確かに、数字が厳しいとせめて「やることはやっている」と会社には報告したいところです。でないと自分の立場も危うくなるかもしれません。

と、まずこの段階で、「KPI重視」となっています。

そして、その指示やトレースを受ける部長の段階では、「会社から厳しく言われているようだな。KPIはやらないと」と、これまた「KPI重視」になっています。

そしてそして、その指示が降りてくる課長の段階では、「なんかKPI必達って最近すごくうるさいなぁ。やらないと厳しく言われるのでみんなに最優先でやってもらわないと」と、もう重視ではなくって「KPIだけとにかくやって」になっています。

そしてそしてそして、そうやって指示される担当者は「報告求められるのはKPIだけって言うことは、KPIだけやるのね。他のことやる余裕はないけどいいんだよね。KPIだけやっていれば。結果はともかく。」となるのです。

本来は、部門長がそういった指示をする背景を少しは分かっている部長が、課長や担当者に、その背景とともになぜこのKPIをやるのか、その結果、求めるべきものはこれなんだ、というコミュニケーションが必要なのです。

もちろん、部門長が直接やってもいいのですが、それも、それを解釈してそれぞれの現場レベルでの意義をきちんと各中間管理職が「翻訳」して伝える作業が必要でしょう。

それがないと、「KPI目的化」が起こるのです。


3、まとめ

いかがでしたでしょうか?

例によってどこの職場にもある、当たり前の話で恐縮です。
ただ、それだけよくあるのに当たり前に起こってしまう、ということでもあります。

なぜなのでしょう?

その理由の1つはすでに述べたとおりそのKPIが階層を経るごとに背景情報や狙いなどの濃度が薄くなることで、「また無茶なKPIが来たな、ほんと現場のこと分かってないよ」という残念な結果になることです。

そしてもう一つは、実はトップその人もKPIだけを重視しているから、ということもあるのです。

え?というところですが、本当です。

数字が厳しくなると、トップもそのトップに説明責任があります。競合他社や外部環境が厳しくてとてもじゃないが目標の数字は難しい、でも、いや、だからこそ、できることはやっている、ということで、説明責任を果たそうとするのです。

つまり、トップ自身も目標達成は難しい、だったら、会社への説明ができるように、高いKPIを設定して、それはやりました、という報告だけはしたい、という動機が働くのです。

だから、強い口調で「KPIは必ずやるんだ」というような発言が出るのです。
「KPIは」ということは目標はいかない、ということを無意識に含んでいるのです。

そういったトップの発言というのは驚くほど伝わるものです。
そして、数字に追われているトップはそれに気づく余裕もない…

苦しい時こそそのマネジメント力が問われるので、それではダメ、なんですけどね。


最後までお読みいただきありがとうございました。
例によって個人的な経験による個人的な見解でしたがどこかお役に立つところがあれば嬉しいです。

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