#530 日鉄のUSスチール買収にみる、強い強い慣性の力
2024年3月16日付日経新聞9面の「日鉄が挑む「アイコン」買収というコラムを読んで思ったことを、メモ
1、どんな記事?
日本製鉄がUSスチールを約2兆円で買収する件についてのコラムです。
新聞誌面の半分ぐらいを占めるので結構分量があるのですが、概要としては、労働組合だけでなく、トランプさんもバイデンさんも反対を表明し、政治的な色彩が濃くなりつつあって大変だけど、安定的に成長が期待できる市場は中国を除くとアメリカしかない中では日本製鉄も諦めずに理解を求め続けるしかない、というような内容です。
その中で私が印象に残ったのは、記事の本筋からは多少ずれるのですが、以下の部分です。ちょっと長いですが、引用します。
要するに、USスチールは今はもう米国内でも11.3%で3位にシェアを(つまり競争力を)落としているにもかかわらず、60年代のアイコンとしてのイメージから国民から強い反発=あたかも、アメリカの象徴が買われてしまう、というよな反発を招いている、ということです。
このどの部分が印象に残ったのか、といえば、人間というのはかくも長い期間も過去のイメージや印象に引っ張られるのだなぁ、という点です。
日本製鉄は雇用も守り、多額の投資もして高炉を水素対応型の最新のものに転換し、競争力を高める、と言っています。USスチールは今は投資する力もなく、競争力を落としているのですから、株主などは賛成しています。仮に買収されなければ、逆に業績不振からリストラによって従業員の解雇や高炉の追加的な閉鎖なども考えられる状況です。
そんな理屈を吹っ飛ばすぐらいのチカラを記事では「アイコン」に求めていますが、私は、「アイコン」が神話レベルとなってしまうぐらい年月が経っても「アイコン」であり続けるという事実に、人間の強い慣性を感じました。
2、まとめ
いかがでしたでしょうか?
ん?人間の慣性が強い、という話?と思われたかもしれませんが、これは何も国家レベルの話ではなく、企業や組織レベルでもあり得る話だなぁ、と感じました。
例えば、環境が変わっていても過去のやり方がなかなか変えられない、あるいは、変える必要性は理解して、変えようとしても、やり方、というか、組み立て方、の部分は、これまでを踏襲しようとする、といったことが起こります。
厄介なのは、後者で、変えられない、のであれば、変えるようにすればいい(これはこれで大変ですが、やることは明確)ですが、変えることに同意して作業レベルに入ると、既存のデータ構築方法に縛られてどうしてもここは変えられない、という部分が出てきたり、長年これまでのやり方に最適化して作業フローを構築しているので、担当者としては、できるだけ今までのやり方を変えないでできないか、という発想で作業をするために、結果的に本質が何も変わっていないものが出てきたりする、ということになります。
確かにシステム上の制約やデータの持ち方の制約などはあるのですが、どちらかというともっとも大きな転換が必要なのは、担当者の考え方だったりします。
「これはこうだから動かせない」「この部分まで変えると何が起こるかわからない」という発想です。
これを壊しに行くのはなかなか大変です。ですが、それをブレイクスルーしないと、結局は表紙だけ変えて中身が変わらず、「これまでとここが違う(けどここは一緒)」という説明になりがちです。
となると、現場や部門、企業全体としても、「なんだかんだ言っても、そこだけ合わせておけばいいのね」という受け止め方になりかねません。
そうして、しばらくすると、元に戻るのです。
ことほどさように、慣性のチカラ、というのは本当に強い、と感じている真っ最中です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
記事の思い切り個人的な感想のメモでしたが、どこかへぇ、と思っていただける部分があれば嬉しいです。