富士通「デザイン思考」1000人育成
今日の日経新聞16面に富士通が「デザイン思考」の知見を備えた専門人材を今後3年間で1000人育成する、との記事が掲載されています。
ちょうど昨日まで2回に渡って、デザイナーの方(nendo代表の佐藤オオキさん、good design company 代表の水野学さん)の本を2冊と、もう一つ、「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」(山口周著)とを合わせてご紹介したのですが、山口さんのおっしゃっていることの私の解釈がちょっと至らなかったな、と反省して補足のメモ。
1、どんな記事?
富士通が、顧客の潜在的なニーズを探り当て、課題解決策を提案するコンサルティング事業を強化する狙いで、「デザイン思考」の知見を備えた専門人材を今後3年間で1000人育成する。具体的には、7月に子会社のデザイン会社を吸収合併し、所属する180人のデザイナーを通じてデザイン思考に関するノウハウを社員に伝授していく。
富士通としては、これまで強みとしてきた、顧客の要望にきめ細かく応じたシステム構築が、収益性の低さや新たな技術提案につながらないといった課題があったものを、「デザイン思考」を取り入れて付加価値の高い提案型事業を強化し、ビジネスモデルの転換を目指す。
2、「デザイン思考」とは?
記事の中では「デザイン思考」について
デザイナーの仕事の進め方を応用して新しいサービスやビジネスを創ろうとする考え方
と紹介されています。
通常、「デザイン思考」という場合、ハーバード大学デザイン研究所のハッソ・プラットナー教授が提唱する、『デザイン思考の5段階』が出されるようですので、ご紹介します。
☑️ 共感(Empathise)
ターゲットを観察、理解し、ユーザー視点になりきってニーズを探る
☑️ 定義(Define)
掘り下げた観察による問題定義を繰り返しコアとなる問題を見つける
☑️ 概念化(Ideate)
実現性は度外視し、思いつく限りのアイディアを出す
☑️ 試作(Prototype)
アイディアを具現化して実現可能性(動くこと)を確認する
☑️ テスト(Test)
市場にリリースし、ユーザーのフィードバックを得て、定義した問題の解決となっているか確認する
また、ちょっと検索してみたところ、富士通の関連会社の富士通総研が「デザイン思考」について解説したページもありましたので、ご参考まで。
3、「美意識を鍛える」と「デザイン思考」との違い
冒頭、山口周さんが「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」でおっしゃっていることの私の解釈が至らなかったと考えた点ですが、
山口さんは「美意識」を経営に取り込んで成功している例として自動車メーカーのマツダの例を挙げており、マツダが世界三大デザイン賞のひとつであるレッド・ドット・デザイン賞で、アクセラ、CXー3、ロードスターの3車種がプロダクトデザイン部門で立て続けに受賞していることを挙げ、「美意識」をマネジメントとしてどのように商品化しているか解説する部分で、
マツダでは顧客の声を直接的にデザインに反映させることはしない、と前田氏(デザイン担当役員)は言います。
(中略)
これはまた、昨今様々な企業で検討・実践されているデザイン思考のアプローチの真逆とも言える取り組みです。
とおっしゃっています。
ここまではっきり書いてあるのに見落としておりました…
では、どうマネジメントしているか、というと、前田氏が「いいと思うかどうか、ピンとくるかどうか」で、最終的な意思決定をしているそうです。
山口さんは、このことを、
これはリーダーシップの問題と言えます。
アカウンタビリティというのは、絶対善のように思われている節がありますが、過度に「合理的な説明可能性」を求めすぎると、意思決定のプロセスにおけるリーダーの直感や美意識はほとんど発動されず、結果的に意思決定の品質を毀損する恐れがあります。これでは「美しさ」を競争軸にして戦っていくことは適わないでしょう。
としています。
つまり、もし、あるデザイナー担当役員に任せたとして、仮に失敗したときのことまで含めて経営陣が腹をくくり、出来上がってきたデザインに口を出さないで商品化できるというのは、デザイン担当役員だけでなく、経営陣がデザインに対して理解がないとできないことだ、だからエリートは「美意識」を鍛える必要があるんだ、ということが山口さんのおっしゃりたいことなのだと思います。
4、車のデザインで見る、過度なアカウンタビリティの結果
私は車オタクでもあるのですが、日産が低迷を極めた時期の車(セドリック)とマツダが先ほどの賞を受賞した車のうちのひとつ(CX-3)を写真でご紹介します。
古い車と最新の車を比べたらそりゃ新しい方がよく見えるのは当たり前なのですが、当時の日産の方のインタビューも合わせてみていただくと、まさに「美意識」とは真逆の「アカウンタビリティ」を過度に求めた結果のデザイン、経営不振だったことが分かると思いましたので引用します。
デザインに対してなんとか理論的な裏付けを求めようと、リサーチ会社を使ってアンケートを取ってデータを集めようとする。
(中略)
そうするともう、誰に向かってモノを作っているのかわからなくなってくるわけです。会社で承認されるために作っているのか、お客様に喜んで頂くために作っているのか、わからなくなる。それでどんどん説明しやすいもの、高級車は大きく立派なモノ、という固定観念から離れられなくなってしまったわけです。
(インタビューはこちら)
5、まとめ
昨日まで2回に渡って投稿したネタと関係した記事が日経に掲載されたので浮かれたのですが、自分の不明を恥じるばかりです。
でも、おかげで山口さんのおっしゃっている意味がより深く理解できた気がします(車の例では目でも確認できましたし)。
☑️「デザイン思考」というのうは、色々ある問題解決手法の一つである
☑️ それでは解決できないことが求められていてそのために「美意識」を鍛える必要がある
ということを、昨日までの投稿に付け加えさせていただき、「デザイン思考」と記述していた部分は私の理解不足だったところなので単に「デザイン」あるいは「デザイナーの仕事の方法」と修正させていただきました。申し訳ございません。
最後までお読みいただきありがとうございまいした。
お役に立つことがあれば嬉しいです。
昨日までの関連した投稿はこちらになります。
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