半沢直樹「帝国航空」にみる「組織の縦割り」の原因と解決例
日曜日の夜の「半沢直樹」ご覧になっていますか?
その中で、半沢が担当する帝国航空の問題点として指摘していたのが、「組織の縦割り」でした。
ちょうど私の今の仕事が組織改革っぽいことで、右往左往しながらやっていますので、「組織の縦割り」がどのようにして起こり、どのようにして解決されるのか、をメモしてみます。
最後までお読みいただくと得られそうな情報は?
✔︎ 組織の「縦割り」の定義
✔︎ 組織の「縦割り」が起こる原因
✔︎ 組織の「縦割り」を直そうとしてやってしまいがちな失敗例
✔︎ その失敗を成功に転換できた例
1、組織の「縦割り」の定義
「組織の縦割り」って日常的に使いますので、特段定義も何も不要に思いますが、こと、解決しよう、となると、この言葉の定義をしっかりしておく必要があります。
さて、「組織の縦割り」の定義、いかがでしょう?
意外と当たり前に使っている言葉ほど定義って出てこないんですよね。
色々な定義が考えられると思いますが、ここでは、
縦割りとは本来協力し合うべき同じ会社の人間がお互いを非難すること
それによって提供する商品、サービスにも問題が出ること
とします。
縦割りによって起こること、とも言え、厳密な定義とはちょっと違うと感じられるかもしれませんが、解決すべき「組織の縦割り」は何か?という観点で定義したものです。
つまり、「組織の縦割り」が解消されると、
同じ会社の人間が協力しあい、お互いを称賛し合い
提供する商品、サービスは素晴らしいものである
となる訳です。
え?むり?
目標は高い方がいい、と言うことで先に進みましょう。
2、組織の「縦割り」が起こる原因
実は、今、「組織の縦割り」は非常に起こりやすい状況です。
というのも、業務の専門化が進んでいるため、部署が細分化する傾向にあり、加えて、専門人材を育成する目的で、長く同じ仕事をさせる傾向が強まっています。
これにより、昔はできていた部門を跨いだ人事ローテーションができなくなってきています。
仮に人事ローテーションを行うと、前部署の経験というのはほとんど役に立たず、1から学び直しになったり、管理職級がローテーションとなると、ビジネスの専門的な部分の本当の理解が追いつかず、長くいる担当者の意見にそれ以上突っ込める根拠や材料を持たないため、おざなりのマネジメントしかできないまま、転勤していく、ということになり、ますます長くいる専門家に仕事が属人化されることになります。
このような部署、部門の集まりが会社ですから、経営者はすべての部門に対する専門性など持ち合わせるわけもなく、となると、先ほど同様、専門家である各部署、部門の長の意見に従うしかない、せいぜい、予算配分だけはコントロールする、というぐらいになります。
もちろん、経営者もそれでよしとはしない人もいますので、「組織の縦割り」で弊害が出てくると、「お互いにもっと尊重しろ」と指示します。しかし、「組織の縦割り」は精神論では解決しません。
この結果、仕事の全体の流れが分かる人がいなくなり、もはや組織間の連携のレベルでは解決不能な状態にまで「組織の縦割り」が進みます。
こうなったのは与えられた仕事を与えられた範囲で一生懸命やっている(各々が与えられた狭い範囲で一生懸命することでより一層「縦割り」が進むという悪循環)ので、「やるべきことはやっている」のだから、問題ない、となる訳です。
「半沢直樹」で登場した「グレートキャプテン」が「我々の仕事は飛行機を安全に飛ばすことだ」と言っていたところですね。その部分については愚直なまでに一生懸命な訳です。
3、よくある「組織の縦割り」の弊害
ドラマの中では「定時運行も世界でランキング上位」というようなセリフがありましたが、通常「組織の縦割り」が進むと「定時運行」は悪化するはずです。
例えば、ある飛行機の到着が遅れ、その飛行機を折り返し便に使う場合、定時に出発させようとしたら、清掃や整備など各担当が通常通り作業するのでは、折り返しの便は遅れるはずです。それをなんとかなんとかするには各担当の協力、連携が必要です。
しかし、「組織の縦割り」がある場合では、到着が遅れたことで作業時間を短縮しろとプレッシャーをかけられた整備スタッフは「急いで見落としては大変だ。きちんと整備するのが自分たちの仕事だ。遅れて飛ばしてきたパイロットが悪い」と文句たらたらでしょうし、次の便を操縦予定のパイロットは、定時に整備を整えることのできない整備スタッフに文句たらたらでしょう。
一番文句たらたらなのは、時間通り出発しないことで迷惑を被るお客様、ですね。
「組織の縦割り」の定義通りです。
4、やりがちな改善策とその失敗
こうした状況で、なんとかしようと経営陣がやりがちなことは、「定時運行向上委員会」などの組織を立ち上げて、原因究明に乗り出すことです。それにより発見できた原因を潰していこうとする訳です。
実は、これ、ますます「縦割り」を強化するリスクが高い打ち手です。
どうして?
こうなると、原因が自分たちにあることを絶対に認めようとしなくなります。原因が自分たちでない、という主張を通すために、原因は他の部署にある、とさえ主張します。
各部署がそう主張し合うのです。そうなったら敵です。絶対に弱みは見せませんし、協力なんてしません。
その結果、飛行機はますます定時に飛ばなくなります。
結果、顧客満足度が落ち、搭乗率が落ち、利益が落ち込む訳です。
5、有効な改善策の1例
では「縦割り」でなければ、どうなるか?
どの担当か関係なくできることを率先して手伝います。
例えばパイロットはお客様が降りた後の機内に残って清掃を手伝い少しでも清掃時間を短くしようとしたり、整備担当の負担を軽くするために自分たちでできる機内の整備などを率先して行うかもしれません。
機内清掃が終わった客室乗務員たちは空港カウンターでの受付業務を手伝えるかもしれません。
これにより、到着の遅れを挽回し、定時出発ができます。
お客様にも喜んでいただき、搭乗率も向上、利益も向上する訳です。
(すいません、航空業界の正確な知識を持ち合わせていないのであくまでイメージとして捉えてください)
こうなるためにはどうしたら良いか?
評価を変えることが考えられます。
定時運行ができない例の場合であれば、遅れて到着することの連絡を受けた部署は定時出発ができるためにプラスとなる支援をしたかどうかで評価される、とするのです。
となると、いがみ合っているよりも自分たちにできることを探してやった方が得なのでそう動きます。
つまり、「協力し合う意識改革をしよう!」とか「感謝し合う気持ちを持とう!」とかそういうのではなく(こういうのは大体言い出した経営者から言わなくなって尻すぼみになるのが予想つきますよね)、協力することが得になるという「しくみ」を作ることです。
これはやはり経営者の仕事、ですよね。
さらにこうした評価の変更は抵抗に合う可能性が高いです(以前ご紹介した「心の慣性の法則」ですね)。
こうした大きな変更を一気に加速させるのに有効なのが、「危機感の醸成」です。
シノゴノ言っていられるうちはまた経営陣の気分が変われば言わなくなるだろう、やり過ごそう、となりがちです。
シノゴノ言っていられない状況だ、と感じさせるのが有効、ということです。
帝国航空はまさにそんな状況のようですので、変わるときは一気に変わる、でしょうね(ドラマ的にも)。
最後までお読みいただきありがとうございました。
お読みいただいたお時間の分だけでも参考になることがあれば嬉しいです。
文中に出てきた「心の慣性の法則」(個人版ですが組織についても同じ事が言えます)についてはこちらになりますのでご興味がありましたらお読みください。
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