商業BL漫画短評2
『悪玉』吉田ゆうこ
万引きをネタにハラタという男に強請られる高校生まーくんのお話。
このハラタという男が善悪・愛憎が入り混じった複雑なキャラクターですっごく良いんです。
微妙にサイコパス風。
脅迫で関係が始まるんですけど、まーくんも家族の問題を抱えていてそのモヤモヤを「不健全な」ハラタにしか打ち明けられないという共依存的関係になっていく過程がワクワクしました。
面白かったです。
『箱庭』国枝彩香
山奥の廃屋に迷い込んだ豪太という男が、不死身の吸血鬼・絹と出会います。
作者本人も言ってますが「ホラーっぽいもの」でシリアスなホラーではありません。
豪太は底抜けに明るいしキヌちゃんはやたらカワイイし、全体的に明るい作風になってます。
ただわたしは手塚治虫の火の鳥みたいな「永遠の命という終わりなき絶望」を期待してたんですけど、そういう要素は薄めで、やや強引なハッピーエンドになってます。
うーん、生死が関わる物語ならもっと暗い方が好きかな……
『アンノウン』たらつみジョン
通りすがりの傷付いた少年を撮影し一躍名を上げる写真家のお話。
しかし少年あるとき突然姿を消します。
ラストシーンで立ち直った少年を見たとき、写真家は彼が愛した少年はもうどこにもいないことに気付くという、二重の喪失感がすごく良かったです。
自分が愛していたのは傷ついて空洞になっていたあの少年だったのだと。
この作者さんは目の表現が印象的でした。
(小膳)
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