わたしに対する風当たり
わたしはお酒が好きだが、週末だけにしているし、野菜も魚もよく食べる。
血液検査の結果はバッチリだ。
少ないほど良いとされる悪玉コレステロールは少なく、多いほど良いとされる善玉コレステロールは多い。
この綺麗な血を使ってほしい。
わたしはよく献血に行く。
雑誌や漫画が読めるし、飲み物やアイスが無料でいただける。
ポイントが貯まるとグッズが貰える。
10ポイント貯まった時、記念にお猪口を貰った。
わたしは普段、ビールからの焼酎派だが、誕生日と年末年始には日本酒を飲んで、特別感を味わいたい。
献血ルームのスタッフさんは、なぜわたしが日本酒が好きなことを知っているのだろう。
20ポイント貯まった時、記念にまたお猪口を貰った。
以前と同じ大きさ、同じ形の箱を開けると、以前貰ったお猪口の色違いだった。
年月をかけて、ペア猪口が揃った。
それは誕生日目前だった。
これは・・・
最近ふるさと納税で焼酎を頼むようになった。
南九州の芋焼酎は美味しい。
週末に少しずつ飲んで、1シーズンで4合瓶1本を飲み切りそうだ。
他の自治体の芋焼酎も飲んでみたい。
ほろ酔いでラインナップを眺める。
鹿児島県もいいし、宮崎県もいいなぁ。
4合瓶は720mlだから、2本セットでもいいか。
それか、1800mlの1升瓶1本でもいいなぁ。
1合は180ml。
4合は180ml×4で720ml。
1升は180ml×10で1800ml。
ほろ酔いながら、暗算で掛け算はできる。
焦ることもないので、ゆっくりと考えて後日注文すればいい。
気づけば眠りについていた。
数日後、身に覚えのない大きい重たい段ボールが届いた。
送付元は南九州のとある自治体。
中を開けると芋焼酎1升瓶が4本入っていた。
7.2ℓ
注文してもてる。
4合瓶か1升瓶かを悩んではいたが、酔ったまま1升瓶を4本頼んでいた。
1と4という数字だけが一人歩きしてもてる。
720mlか1800mlか、というところで悩んでいたが、7.2 ℓの焼酎をわたしは手にした。
計算式を教えてくれ。
7.2 ℓの焼酎を前に、わたしは呆然とした。
実家に帰った際に、このエピソード「酔拳で納税」を両親に話した。
母親は、一晩経ってもおもしろエピソードとして消化しきれなかったのだろうか。
酒に溺れる娘の末路を憂いたのだろうか。
翌朝、真剣な顔をした母親から正式に怒られた。
そして、4升のうち2升回収された。
この頃からだろうか。
わたしに対する風当たりが強くなり始めたのは。
自宅のテレビで、キーワード指定で自動録画設定をしているが、狙い通りにいかないことがある。
吉本興業の「和牛」さんと「ニッポンの社長」さんをキーワード指定しているため、黒毛和牛を食べるグルメ番組や、ベンチャー企業の社長さんを特集した番組が録画されるのは分かる。
稀に、本当に身に覚えのない番組が録画されていることもある。
先日は、NHKのヨガ番組が録画されていた。
その日のポーズは「二日酔いに効くポーズ」だった。
これは・・・
わたしは金融機関に勤めている。
お客さまが窓口に 1万円を払い出しに来られると、口座から払い出して1万円札を1枚お渡しする。
「千円札でください」と言われた場合は、千円札を10枚お渡しすることになる。
金種指定だ。
わたしは業務中パソコンに「金種指定」と打ち込もうとすると、「禁酒してい」と変換された。
これは・・・
ペア猪口を揃えてくれた献血ルーム。
あの頃にはもう戻れないのだろうか。
じわじわと、各所からのメッセージが浮かび上がってきている。
この調子でいけば、今後、わたしに対する風当たりは強くなる一方なのだろうか。
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さて、次回の #クセスゴエッセイ は
「やりすぎ吹奏楽部」
をお届けします
お楽しみに〜
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