
Photo by
ibaraki_nakai
現代語俳句への旅 42 〜明らかに鶴〜
「 明らかに鶴 」
~現代語俳句集~
平和通りいまは静かに木の葉降れ
恋二人セーターに陽があたるまで
あるときは嶺々あるときは冬光よ
コート着て都会は都会富士は富士
さいごにはゆう焼けてこそ十一月
奈良じゅうに耳をすまして冬の空
木枯らしのあちらこちらで疫病か
だれも行くマスクの白を盾として
能登がただ散っているだけ冬怒涛
あかるさよはるかに滅ぶふゆの星
◇
おおさかのこのしずかさが雪の音
詩じんとは寒暮の灯りそのものか
護国寺というさいげつよふゆの虹
じんるいにかんけいのなく鯨跳ぶ
かお上げてもう三歳の日なたぼこ
降る雪よ背中をむけたほうが過去
旅の能登はじめての雪降ってきた
明けをまつ列ながながと除夜の鐘
ゆく道のかなたまで未知落葉踏む
◇
山みちのあしあと凍りついていた
さいげつよ押し黙るとき年の暮れ
その夜にむかって聖樹かがやくか
見るひとも金閣として日なたぼこ
あるだけの星を見て去れスキー場
くしゃみして大空すこし遠のくか
くしゃみして五秒世界に遅れたか
いっせいにたぬきが跳ねて罠の音
鳴くこえは風の間に間にたぬき山
◇
えきびょうに寒むざむニ〇二〇年
らい年へさらいねんへと餅伸びよ
蕪村忌よ発句に技の美こころの美
ゆきの夜よ折り鶴すべていのり鶴
うたうとき遥かな国歌ラグビーよ
さいごにはすべてを焚べて夕焚火
焚火してうたがうべくもない濁世
夢追いの果てのジンギスカン鍋か
明らかに鶴飛んでいるあかつきよ
11月27日〜12月16日
発表日順
いつも
ご覧いただき
ありがとうございます