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⑥『何者かになりたい』熊代亨(2021・イースト・プレス)/ 第6章 大人になってからの何者問題

中年の暴走

ああ、ありますよね。こういうの。
気持ちもよくわかる。

健康が少しずつ損なわれ、社会的な立場や役割も変化していく中で、「自分が何かに挑戦できるチャンスがあと何回ぐらいあるのか、そもそもこれが最後のチャンスではないか」と意識させられる場面がたくさんあります。

中年期はもう、自分自身の構成要素を探し求める時期というより、すでに何者かになった・なってしまったあとの時期です。それだけに、せっかく手に入れ、十分に馴染んだアイデンティティの構成要素を失ってしまったときの再出発はなかなか大変です。
そうして、思春期とはまったく違った形で「自分はいったい何者なのか」という問いがよみがえったり、「自分はもう何者でもないのではないか」という疑いが生まれることがあるのです。

中年期に経験する子供の巣立ちや、家族との別離。退職。身体の衰え。

高齢になることとは、死別や解散や打ち切りによって自分自身の構成要素が虫食い状に失われ続けていくことでもあります。


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