【読書メモ】科学的に正しい筋トレ 最強の教科書(庵野 拓将)【#75】
筋トレを始めようとした友人が買ったのだけれど、専門的すぎる!ということで借りて読みました。確かに、初心者にはマニアックな情報すぎます。本格的に筋トレ始めようって人か、頑張ってやってきたんだけど思ったほど結果が出てないという人に向いていると思います。最新の医学論文に基づいていて、今までの常識が否定されているところも多いので、ある程度知識がある人の方が楽しめます。
いろいろな新常識があるのですが、気になったところを抜粋してみます。
トレーニングの常識について
筋トレの効果は、高重量(運動強度)ではなく、「総負荷量」による。バーベルやダンベルの重量ではなくて、「重量×回数×セット数」が大きい方が良いということです。重い重量を低回数というのは怪我にもつながるので、低重量でも回数を多くすると、高重量と同じ効果が得られます。
休憩は1〜2分間。短ければ良いということではなく、ある程度休んで総負荷量を増やす方が良い。
可動域の一部を使うパーシャルは、より高重量でトレーニングができるけれど、全体を使うフルレンジの方が結果として筋肉の総負荷量が大きくなるので、筋肥大という意味ではフルレンジ・トレーニングが良い。ただし、筋損傷が起きやすいので、しっかり回復時間を取る必要がある。
伸ばして曲げるまでの時間が8秒以内で。8秒以内であれば、早くても遅くても効果に差はない。8秒以上のスロトレは筋肥大には効果がない。
ネガティブトレーニングの方が効果が高いというのは否定されていて、ネガティブの方がやや効果が高い傾向はあるけれど有意な差はない。なので、ネガティブ動作の運動スピードを緩やかにすることを意識しつつ、総負荷量を高めるように計画する。
1回あたりだけでなく、週単位でも総負荷量が重要。総負荷量が同じなら週の頻度は3回でも6回でも効果は同じであった。なので、「週単位の総負荷量」を決めて、それを基準に体調や疲労の度合いに応じて、トレーニング強度や回数、セット数、頻度を調整することが近道である。
ストレッチは運動回数を減少させてしまう。ただ、ストレッチしないと気持ち悪いという場合は、1つの筋肉に対して30秒内で済ませる。30秒以内であれば、運動パフォーマンスに影響はなく、怪我の予防にも有効であるという報告がある。
ウォームアップは、有酸素運動を中等度の負荷(最大心拍数の60%)で10〜20分行うのが良い。その後に、特異的ウォームアップ(これから行うトレーニングと同じ動きのウォームアップ)を1RMの30%程度で20回、50%程度で8回行ってから目標としているトレーニングに入るのが良い。
タンパク質摂取について
トレーニング強度に関係なく、疲労困憊まで行えば、筋タンパク質の合成感度は24時間後まで継続する。ゴールデンタイムにこだわるのではなくて、筋トレ後24時間、3食分の食事でバランスよくタンパク質を摂取するのが大切なので、翌日の朝食を抜いてはいけない。
BCAAの摂取で筋タンパク質の合成は高まるけれども、ホエイタンパク質を摂取すればさらに高まる。なので、普通にプロテインを摂取すれば問題ない。ただ、ロイシンは筋タンパク質合成に強く影響しているので、ロイシンが2g以上含まれている食品やプロテインが良い。
タンパク質の摂取量の細かい数値は本書に書いてあります。僕の場合は、アラフィフで75キロくらいなので、1回に30グラムは必要で、24時間で121.5gは取りたい訳です。卵1個がタンパク質6gなので、毎食5個、1日で20個、鶏肉だと1食120g、24時間で486g。結構食べないと満たせないものです。プロテインバーが1本10〜15g、ホエイプロテインが1回20gくらいなので、今の摂取量だと3分の2くらいしか取れてないです。もうちょっと食事を意識しないといけないと反省しました。
朝昼晩の3食で同量のタンパク質を摂るのと、夜にドカ食いするパターンを比較すると、3食バランスが良い方が効果が高いということで、バランスよく食事することは大切です。
補助として飲むプロテインは、食事と一緒でも食間でも効果は同じ。筋肉量については。でも、脂肪の量は食事と一緒の方が減少傾向が高かったそうなので、太らないためには食事と一緒に摂ってしまった方が良いようです。
就寝前のタンパク質摂取は、即時的に筋タンパク質合成作用を高めるだけでなく、効果は長期的に継続して、さらに筋肉を増大させる可能性があるそうです。でも、寝る前に飲むと胃腸が休まらない気がするので、筋トレという面では効果があるのかもしれませんが、胃腸が弱い人は控えた方が良いように思います。エビデンスのない個人の感想です。
僕は休日の朝に筋トレしているのですが、最も効果が高いのは夕方だそうです。
プロテイン摂取が腎臓に悪いという噂があるが、腎臓病を患っていない健康な人にとっては全く問題ありません。赤身肉(牛肉、豚肉、羊肉)をたくさん食べる人は腎臓病発症のリスクが高いという話と混同されていると思います。乳タンパク、鶏肉、魚は腎臓へのダメージはほとんどない。
トレーニング後に500mLの全乳を飲んだ場合は、早期の筋力回復、筋肉痛の軽減、痛みの減少が認められました。卵は卵白だけでなく、卵黄も一緒に摂取した方が筋トレの効果は高まる。
HMBはトレーニング未経験者や初心者のみに効果があって、経験者やアスリートには効果が期待できない。
筋トレを続けるべき理由
トレーニングを1週間に1回以上行っている場合、トレーニングをしてない場合と比べて、ガンによる死亡率が33%減少する。1週間に2〜3回の頻度で継続的にトレーニングを行なっている場合は、すべての病気の死亡率が23%減少する。週2回以上のトレーニングと週150分以上の有酸素運動は、ガンによる死亡率が31%、すべての病気による死亡率が23%減少する。
ジムでのトレーニングでも、家での自重トレーニングでも、同等の死亡率の減少を示して、両方している人はさらに死亡率の減少が認められた。これらのメカニズムとして、トレーニングによる血圧低下、糖尿病のリスク低下、グルコース代謝の改善、全身性炎症の減少、抑うつ症状の軽減、認知機能の改善、筋肉量の維持・増加などが挙げられます。これらの効果が包括的に作用していると考えられます。
筋トレは、睡眠の時間は増やさないけれど、質(睡眠の中身)を改善させる。また、健常者の不安を大幅に改善させて、不安障害などの患者の不安も改善する。なので、不安や落ち込み、ストレスを感じた時は筋トレをしましょう。
筋トレが続けられないわけ
ジムに通い始めた人の96%は1年以内に脱落します。1年後に残るのは、たった4%だそうです。というのも、そもそもヒトというのは、生き延びるために少ない摂取エネルギーを狩猟や生殖活動へ優先的に使用されて、それ以外の余暇の時間は極力、エネルギーを使用しないように最適化されて進化したと考えられます。なので、心は「無駄なエネルギーを使わないように、ゴロゴロしていいんだよ」と語りかけてきます。
筋トレを続けるには意志力を強化するのではなく、限りある意志力という「資源」を「上手にマネジメントする」ことである。
有名な「マシュマロテスト」に毎回挑むのではなく、「イフ・ゼン(もし〜したら、そのときは〜する)」で対応する。「もし(if)誘惑に直面したら、その時は(then)こう行動しよう」と、あらかじめ決めておくだけで、意志力を使わずに誘惑を回避できる。誘惑と戦うのではなく、プランによって行動するだけの状態にしておく。
本書では「行動覚醒」と書かれていますが、いわゆる「作業興奮」です。とにかくやり始めると、ドーパミンが分泌されてやる気や意欲が湧いてくるということです。やる気がなくても、ジムに向かって出かければ、その行動がやる気を生み出します。
おわり