デザインを活用した開発で成功するための3つのポイント
今年を振り返る中で、2024年10月に大阪勧業展で行ったセミナーの内容をnoteにまとめ投稿することにしました。
私は、デザインの本質を「課題解決」にあると考え、「想いをつたえる、想いがつたわるデザイン」を大切にしながら日々活動しています。商品企画からデザイン・設計、量産まで幅広く携わる中で、このセミナーを通じて「なぜ自分がデザインに情熱を注ぐのか」を改めて見つめ直すことができ、デザインの本質や自分自身の活動を振り返る良い機会となったからです。
セミナーでは、デザインを活用した開発で成功するための「3つのポイント」を中心に、実際の歯ブラシ開発事例を交えながら、情報収集、ヒアリング、検証といった製品開発の具体的なステップをご紹介しました。また、企業がどのようにしてデザインを効果的に取り入れるべきかについてもお話ししました。
40分のセミナー内容を3回にわけて投稿しました。
第1回 デザインを活用した開発で成功する3つのポイント
第2回 子どもの喉つき事故を予防する歯ブラシの開発
第3回 社外デザイナーとのコラボレーションについて
デザインを通じて何を成し遂げたいのか――それは、私自身がずっと考え続けているテーマです。この文章が、少しでも多くの方にデザインの可能性を知っていただくきっかけになれば嬉しいです。
デザインとは
デザインとは何か?
「デザイン」という言葉は、ラテン語の「デジナーレ(designare)」が語源で、「計画を記号に表す」という意味があります。つまり、デザインとは、ある問題を解決するために思考や概念を組み立て、それをさまざまな媒体を通じて表現する行為です。
この「さまざまな媒体」というのは、モノ(製品)であったり、印刷物であったり、ウェブサイトであったりします。デザインは、ただ形にするだけでなく、それが商品として機能する形態へと昇華されるのです。私はプロダクトデザインを専門としていますので、商品という形でその役割を果たしています。
デザインはだれもがおこなうクリエイティブ活動
デザインは、必ずしも「デザイナー」という肩書きがなければできないわけではありません。むしろ、何かしらの媒体を使って考えを表現し、それが何かの課題解決を提供するようなクリエイティブな活動であれば、それはすべてデザイン行為といえる。と私は考えています。
たとえば、仕事でパワーポイントを作成したり、資料を整理して相手にわかりやすく伝える工夫をしたりすることも、広い意味ではデザインの一部です。こうした視点でデザインを捉えると、身近な活動にもデザインの力が生きていることに気づくかもしれません。
デザインの「広義」と「狭義」
「デザイン」という言葉には、広義と狭義の2つの意味が存在します。それぞれの違いを理解することで、話題がどちらを指しているのかを意識しやすくなります。
狭義のデザイン
狭義のデザインは、伝統的な「形を作るデザイン」を指します。具体的には、製品や物理的なモノを対象とし、その形や色、機能を作り上げる活動が該当します。たとえば、家具や家電、パッケージなどがその典型例です。
広義のデザイン
一方、広義のデザインは、単なる形作りに留まらず、ブランドやストーリーの構築を含む、より抽象的な活動を指します。たとえば、企業のブランドイメージを作り上げたり、商品の背景にある物語をデザインしたりすることが含まれます。
「デザイン」に感じる違和感の原因でもある
「デザイン」という言葉を聞いたとき、話し手が広義のデザインについて話しているのか、それとも狭義のデザインを指しているのかを明確にしないと、少し違和感を覚えることがあります。このズレが問題の原因となることも少なくありません。
たとえば、ある人は「デザイン」と言うと製品の形や見た目をイメージしますが、別の人はブランド戦略やコンセプトをイメージするかもしれません。この違いを理解しておくと、デザインについての会話がスムーズになります。
デザインの範囲の広がり
現代では、デザインという言葉の意味や範囲が広がり、従来の「形作り」にとどまらず、抽象的な価値を生み出す活動も含まれるようになっています。これを覚えておくだけでも、「デザイン」に対する理解が深まり、違和感を感じる場面を減らせるでしょう。
想いをつなぐデザインの力
私がデザインにおいて最も大切にしていることは、「想いを伝える、想いが伝わるデザイン」を実現することです。この理念は、企業とお客様、さらには作り手と使い手をつなぐ重要な架け橋となります。
想いの循環を大切にする
私が特に意識しているのは、この「想いの循環」を実現することです。
企業の想いをお客様へ伝える:製品を通じて、企業のこだわりや理念をお客様に届ける。
お客様の想いを作り手へ届ける:お客様が感じた使い心地や意見を、次の製品開発に反映させる。
この双方向の循環がうまく回ることで、企業とお客様、そしてデザイン全体の価値が高まります。
デザインの役割:想いをつなぐ架け橋
デザインは単なる「形を整える作業」ではなく、企業の思いとお客様のニーズをつなぐ架け橋です。その過程で、想いが行き交い、双方にとっての価値が生まれる。これが私たちが目指すデザインの本質です。
右側の少し薄いズレについては、この後の詳しい説明の中で触れていきますが、このようにデザインを通じて「想い」をつなぎ、大きな価値を生むことを目指して活動しています。
デザインを活用した開発で成功する3つのポイント
デザインを活用した開発で成功する3つのポイント
商品開発を成功に導くためには、以下の3つのポイントが重要です。
どんな課題を解決するのかを明確にする
商品開発の第一歩は、解決すべき課題を明確にすることです。
商品を開発するときには、どんな社会課題を解決するのかを切り口にすることで、多くの人に価値を届けるアイデアが生まれやすくなります。何のための開発かを明確にする
開発の方向性を「価格重視」「価値重視」「未来重視」の3つの軸で考えることで、より具体的な戦略が見えてきます。ゴールを明確にする
ゴールを明確にすることは成功への鍵となります。このゴールには、市場での狙いや提供価値、自社の財産をどう活かすか、コストなどの目標を明確に定めることが、成功の鍵となります。
これらのポイントは、何もデザイナーに依頼しなければできないことではありません。
プロジェクトには、リスクがつきものです。プロジェクトに取り掛かる前にこれらをしっかりと詰める、事前準備をおこなうことで、商品開発がスムーズに進み、成功の可能性を高めることができます。
この続きは、3つのポイントの事例や具体的な手法について詳しく解説します。
ここから先は
¥ 120
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
よろしければサポートおねがいします。サポートいただいたらとっても嬉しいです!