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どん底で彼が蓄えていたもの〜本のひととき〜

「絶望名人カフカの人生論」フランツ・カフカ 頭木弘樹・訳

先日感想文を寄せた「病と障害と傍らにあった本」の著者のひとり、頭木弘樹さんの著書である。
新聞で紹介されていて、メモしてあった。
だってカフカ。絶望名人って一体。

カフカといえば「変身」。
正直この1冊しか読んだことがない。
学生時代にふと
「世界の名作を読んでおこう」という気分になり、薄くて読みやすそうなカフカを選んだのだった。

朝目覚めたら虫になっていた男の話。
乱暴に要約するとこうだが、虫化のインパクトが強すぎて物語の細部までは記憶に残っていない。

そのカフカは絶望名人だそうだ。

絶望って極めるものなの…?

全15章。
各章の冒頭は、黒紙に白抜き文字でタイトルが示されている。
第1章から

「将来に絶望した!」


である。しかもビックリマークつき。


そもそも絶望とは。

希望を全く失う(が無くなる)こと

三省堂 新明解国語辞典 第3版 


目次を読むだけで気が滅入ってきそうだ。

何がどうしてこうなるのか。
何が彼をそうさせた。
彼はどうして絶望したのだ。

不思議なもので、だんだんカフカに興味がわいてくる。
あまりにも絶望的で、かえって笑えてくるのだ。

ネガティブにハマっている人にとって、
ポジティブは意味をなさない。
そんな簡単に気持ちを切り替えて前を向くことなんてできない。

それならどん底まで落ちてしまえば?
底についたら、あとは浮上するだけだ。

何事にも絶望してしまうカフカは
かえって潔いのではないか。
徹底しているし、ブレない。
その集中力と意志の強さ、
方向を変えたらすごいものができそうな気もする。

絶望が間違っていたということではありません。人は絶望からも力を得ることができるし、絶望によって何かを生み出すこともできる、ということです。

著者のことばより







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