「ブラック」な職場に光る「彩」を探す
僕のした単純作業が この世界を回り回って
まだ出会ったことのない人の 笑い声を作っていく
そんな些細な生き甲斐が 日常に彩りを加える
モノクロの僕の毎日に 少ないけど 赤 黄色 緑
これは僕の大好きなMr.Childrenの「彩り」の歌詞の一部です。何度聞いても心が震え、胸が高鳴り、熱い想いが込み上げてくる。疲れた体にも染み込んでくるような、心を温かく包んでくれる素晴らしい曲です。
多くの方に刺さる曲だとは思いますが、なぜこんなにも僕の心に響いてくるのか?
それは教師という仕事が、まさにこの曲の歌詞にぴったり合うと感じるからです。
➣僕の仕事は世界とつながっている
教師の仕事には、一見無意味に感じる仕事がたくさんあります。仕事の効率が上がらない古いシステム、機械に任せた方が早そうな単純作業。「何でこんなことやってるんだろうな?」「これって意味あるのかな?」と思う仕事が山のように積まれていきます。
しかし「僕のした単純作業」はすべて子どもたちに返っていきます。一見無意味な仕事や古いシステム上やらざるを得ない仕事もさっさと処理してしまえば、その分授業づくりの時間が取れます。早く仕事を切り上げて私生活を充実させるのもいいでしょう。教師の生き方そのものが、子どもたちに何かしらの影響を与え続けているからです。
そして、その子どもたちとつながる人たち、さらには子どもたちが大きくなってから関わる人たちにも何かしらの影響を与えます。僕たちの仕事は、子どもたちの人生の一部に関わることができる素晴らしい仕事です。それは「まだ出会ったことのない人の笑い声」にまで届く可能性に溢れているいます。
実際、担任した子どもたちが大きくなってきてから、「○○くんが■■に就職した」とか「○○さんが留学するんだって」とか嬉しいニュースを聞くことができるようになってきました。僕の仕事は世界とつながっている。そう思えると、嫌な仕事にも不思議とやりがいを感じてきます。
➣「ブラック」がつくる「モノクロの毎日」
一方で、「小学校教員採用倍率が過去最低」というニュースが僕の耳にも入ってきました。
採用倍率が過去最低になった主な理由としては、受験者数が減少し、採用者数が増えているからだそうです。ここ数年、受験者数が減少しているというニュースは、やっぱり一教師としても悲しいものがあります。
受験者数が減少する背景には、やはり学校の長時間労働を苦にしているという理由があります。教師という仕事にやりがいを感じる一方で、プライベートを犠牲にせざるを得ないということ。様々な人間関係による精神的ストレス。そうした中で自分が働き続けることができるかという不安。これらを考えると、教師になるのをためらうのも分かります。20代の頃の僕も、全く同じ悩みを抱えていました。そして、今もこの仕事をずっと続けていけるのかという不安は拭い切れていません。
いわゆる学校は「ブラック」な職場だということ。「ブラック」はどんな「彩り」を加えても、きれいな色にはなりません。せっかくきれいな「彩り」を増やしても、そこに「ブラック」があると全部濁ってしまいます。僕の心にある「彩り」もブラックな環境では輝かず、「モノクロの毎日」が続いてしまうのです。
黒は白で埋めてもグレーになるだけ。ということは、「ブラック」は根本から取り除く他ない、ということでしょうか…。
➣「ブラック」を取り除こうとする動き
しかし、「ブラック」を取り除く可能性を秘めたささやかなニュースも入ってきています。
まずはGIGAスクール構想。1人1台のタブレット支給です。タブレットに組み込まれているアプリによって、大変な丸つけや回収物の点検作業など業務の負担が軽減される可能性があります。
そして35人学級の本格実施。まだまだ多く感じますが、約40年変わらなかった40人学級の壁をついに突破しました。単純に教室の人数が減ることは、子どもたち一人当たりに目を向けられる時間が増えることを意味します。同時に、若干ですが丸つけや朱書きなどの作業量も減ります。
さらには部活動も徐々に廃止の流れが加速しています。スポーツ大好きで子どもの頃部活にばかり打ち込んでいた僕にとってはちょっと寂しいところもあります。今部活動に打ち込んでいる子どもたちの気持ちを考えると、胸が痛みます。しかし、教師の残業時間の多くを占める部活動が廃止されるという点においては、とてつもなく大きな変化となりそうです。
これらによって「ブラック」な職場が改善されたとは全く思っていませんし、まだまだ教育現場の課題は山積みです。しかし、少しずつ令和の時代に合う学校へシフトチェンジしようとする追い風に期待を感じずにはいられないのです。
➣「彩」を探す
育休に入る前、僕は教師を続ける自信を失っていました。忙しさのあまり心が「ブラック」に支配され、まさに「モノクロの毎日」だったのです。しかし、育休で心を休めた後に、もう一度頑張ってみようと思えました。この育休期間で心の中の多くの「ブラック」が取り除かれてきたように思います。
つまるところ、結局はこの仕事が好きなんです。続けられるならやっぱり続けていきたい魅力的な仕事なんですね。一人でも多くの人が教師の仕事に魅力を感じてほしいとも思います。
しかし、続けていくには自分自身で「ブラック」を取り除く術を身に付けなければなりません。ブラックに支配されるたびに休んでいては、やはり戦力にはなれないからです。
学校が変わる追い風に乗りながら、自分から自分の身の回りのことを少しずつ変えていく。その中で「彩」を探し、少しずつ拾って心の中にしまっていく。「そんな些細な生き甲斐」を見つけていけば、「僕の目の前の子どもたちの笑い顔を作ってゆける」だろうな。「にじんでても 金 銀 紫」だ。
なんて、Mr.Childrenっぽく考えてしまう今日この頃でした。さ、もう一回「彩り」聴こう!みなさんもぜひ!