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ジェフの母・ジャッキー・ベゾスから学ぶ「子育ての軸」

 Amazon.comの創業者ジェフ・ベゾスは3人の兄弟と共に育ちました。その母ジャッキーは並外れて好奇心旺盛な人です。ジャッキーはこう語ります。

「とにかく子どもたちのことにものすごく興味がありました。一体この子たちはどんなふうに成長するんだろう、将来どんなことをするんだろう、と思って。それぞれの子がどんなことに興味を持っているのか知りたくて、よく注意して見ていました。一人ひとりみんなちがったんです。それで、子どもの興味に合わせていきました。子どもたちが自分の好きなことを思い切りやれるようにしてあげるのが、私の責任だと思っていました」

 ジャッキーの好奇心の先は、常に「子どもたちがどんなことに興味をもっているのか」にありました。


➣幼少期 -大きなベッド-

 ある日、3歳のジェフは母ジャッキーにこう言いました。

「ぼくも大きなベッドで寝たい」

その時のジャッキーの答えは、おそらく世の中の多くの母たちと同じ答えでした。

「大きくなったらね。でも、まだだめよ」

 次の日、ジェフの部屋に入ると、なんとジェフはドライバーを持って幼児用のサークルベッドを分解していました。

 あなたなら、その様子を見てどうしますか?「大きくなったらねって言ったでしょう!」と怒りますか?

 ジャッキーは怒りませんでした。それどころか一緒に床に座って手伝ってあげました。その晩、ジェフは望みどおり「大きなベッド」に寝たのでした。


➣中学生 -奇想天外な装置-

 中学生になったジェフは奇想天外な装置を次々に発明しました。

 たとえば、自分の部屋のドアにアラームを取り付けて、弟や妹が部屋に入ろうとした瞬間に、とんでもない音が鳴り響くようにしました。

 あるときは、キッチンの食器棚の扉の取っ手を糸で全部つないでしまいました。だからジャッキーがひとつの扉を開けると、全部の扉がいっせいに開いてしまいました。

 そんなジェフをジャッキーはサポートし続けました。ホームセンターに何度も通い、部品が足りなくて一日に4回も買い足しに行ったこともあるんだとか。

 ジャッキーに家族がつけたあだ名は「カオスの船長」。ジェフのやりたいことを全部認めたからです。


➣高校生 -飛行機の実験-

 高校生になったジェフは、自宅のガレージを研究室代わりに、発明と実験を繰り返しました。

 ある日のこと、ジェフの高校から電話がかかってきます。ジェフが午後の授業を欠席したというのです。ジャッキーは帰宅したジェフにたずねました。

「午後はどこに行っていたの?」

ジェフは答えました。

「飛行機の翼に働く摩擦と抗力を、実際の機体を使って実験したいと思っていたんだ。そうしたら、地元の大学の教授が実験をやらせてくれるっていうから」

 ジャッキーにとっても思いがけない返事でした。自分だったら何て言うでしょうか?

「実験したい気持ちは分かるけど、授業を抜け出して行くのはダメよ。きちんと先生やお母さんに言って、学校を休むことを伝えてから行くべきよ」

 こんな感じでしょうか?なるべく子どもの意見を受け入れた上で、いけないことはきちんと伝えられるようにしてみました。

 しかし、ジャッキーはさらにその上をいきます。

「そうなの。わかったわ。じゃあ授業時間以外に実験をさせてもらえるかどうか、頼んでみましょう」

 ジェフの行動を指摘するどころか、よい解決案を共に探り、ジェフの望みが叶うように後押ししたのです。


➣ジェフは何を身に付けたのか

 ジェフ・ベゾスは、やがて世界最長の大河にちなんだインターネット書店、アマゾン・ドット・コムを設立します。

 ジャッキーの下で育ったジェフは、一体どんな能力を身に付けて世界一の資産家へと成長したのでしょうか?

 それはもちろん、様々な能力が複雑に絡み合って成し遂げられたものと思われますが、一つ大きな力をあげるとするならば、それは問題解決能力ではないでしょうか。

 ジェフがAmazon.comを設立し、世界に誇る大企業へと成長させるまでには、僕たちの想像の何倍も大きな問題が山のようにあったに違いありません。しかし、ジェフにはそれらの問題を解決できる力がありました。だからこそ、Amazon.comはここまで成長し、今もなお成長を続けています。

 ジェフが幼少期に抱えた「ぼくも大きなベッドで寝たい」という問題。そしてこれを解決するという作業。ジェフは何年経ってもその時の自分が興味を引き付けられる問題を何度も何度も解決していきました。きっとその繰り返しの先に、Amazon.comがあったのではないでしょうか。


➣ジャッキーが信じたもの

 ジェフの能力にジャッキーは気づいていたのでしょうか?

 僕は、冒頭のジャッキーの言葉から想像するに、ジェフがどうであれ、ジャッキーは自分の「子育ての軸」を貫いた、と考えました。

 ジャッキーの「子育ての軸」というのは、「子どもの興味に合わせて、自分の好きなことを思い切りやれるようにしてあげること」です。ジャッキーはどんなときでもその軸をぶらさずにジェフに接しました。

 そして、信じていたんだと思います。

「この子はいずれ大きな才能を開花させる」と。

 このような母の下で育ったジェフだったからこそ、自分の興味の向くままに才能の羽を伸ばし、たぐいまれなる問題解決能力を身に付けることができたのではないでしょうか。

 問題解決能力を親が意図的に育てることは、簡単なことではありません。僕はあくまでもジャッキーがジェフの興味を信じ、後押しし続けた結果として、ジェフの才能が開花したのではないかと感じています。ジャッキーにとっては、ジェフが何に興味をもつかはどうでもよかったのではないでしょうか。

 ジャッキーがジェフを産んだのは17歳。つくづく子育ては年齢や経験ではないことを実感しますね。


➣子育ての軸

 自分に「子育ての軸」があるかと問われると、胸を張って言えるものは何もないように思えてしまいます。親としての責任、周りの目、新しい情報などを気にすると自分の「子育ての軸」というものがぶれていきます。

 そして親になると、どうしても自分の子どもをきちんとしつけないとという気持ちになってしまいます。自由にのびのびと育てたいと思いつつ、つい口うるさくなってしまうのが親心。こんなこと何度も言いたくないと思いつつ、また言ってしまう自分がいます。

今の僕にできそうなことは、子どものことを信じること。

 いい時も悪い時も、「この子は今何かを学び、何かの力を得ているんだ」と信じること。

 どんな力がついているかなんて知らなくてもいい。ただ常に良い方向に向かっていると信じること。

 そうやって子どもを信じていく中で、自分の「子育ての軸」が少しずつ太くなっていけばいいと思っています。これが僕がジャッキーから学んだことです。



この記事はこちらの書籍を参考にして書いています⇩⇩⇩


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