AIに負けない!「読解力」を身に付けるには①-幼児期編-
昨日の「約150年変わらなかった学校教育の転換期。公教育にイノベーションを!」の記事では、青山光一さんの記事を皮切りに、日本の公教育の危うさとパラダイムシフトについてお話させていただきました。
その記事にも度々出てきた「AI」は、私たちの未来を豊かにする存在でありながら、仕事を奪われるかもしれないという恐怖さえも与える存在です。
それに関連してか「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(著 新井紀子)という本がベストセラーとなりました。インパクト抜群なタイトルからも感じる通り、この本が日本中に衝撃を与えたのは今から約3年前のこと。
確かに何もかもAIとなれば、一部の仕事はなくなりますし、仕事内容も大きく変化すると思います。教師の仕事も劇的に変化するでしょう(むしろ変化してほしいのですが)。
しかし、僕たち教育者が考えるべきところは、「教科書が読めない子どもたち」の方ではないかと思うのです。つまり「教科書が読めない子どもたちがたくさんいることにどれだけの大人が気づいていますか?」ということです。筆者の新井紀子さんは、確かにAIが得意とする仕事はAIに代替されていくだろうが、AIにできない仕事もあると述べています。それは国語や英語、特に「読解力」を必要とする分野です。しかし問題は、そのAIにできない仕事は、人間にとっても苦手な仕事だということです。教科書のような簡単な文章を読むことができない(=読解力に乏しい)中・高生が3人に1人。我々はこの現状に危機感を感じなければなりません。
読解力はいかにして身に付けるのか -幼児期編-
では、AIに負けない子を育てるにはどうすればよいのでしょうか。それは単純に、AIでは身に付けることが不可能とされている「読解力」を身に付けること。
「読解力ないわ~」という方、多いのではないでしょうか。僕もその中の一人です…。どうすれば読解力は身に付くのでしょうか?
それが新井紀子さんの待望の続編、「AIに負けない子どもを育てる」で示されました。
今回はAIに負けない「読解力」を身に付けるための方法を、本書から探っていきます。
まずは「意味がわかって読める」子どもに育つために、幼児期に身近な大人ができることについて筆者の考えをいくつか紹介し、手短にまとめます。
これらは「科学的」に証明されたものではなく、複数の自治体からのヒアリングや教室での子どもたちの観察などを通じて、筆者が主観と論理から導き出したことです。さらに僕の主観や子育ての経験も交えて自由に書きますので、参考になるところだけを切り取って読んでいただければと思います。悪しからず…。
➣身近な大人同士の長い会話を聞く機会を増やすこと
まだ言葉が話せない赤ちゃんは、どのようにして話せるようになるのでしょうか?それには、身近な大人たちが使う母語となる言葉のシャワーの果たす役割が極めて重要です。耳で聞いていく中で少しずつ言葉として声に出てきます。
直接子どもに話しかけることもいいですが、幼児期の子には大人同士の会話を聞かせることも効果的です。確かに僕たちは、無意識のうちに大人と会話する時と子どもと会話する時で、話す速さや選ぶ言葉の難易度を変えています。それを子どもは全部理解できていなくても聞いています。その中で自分にも理解できた言葉を使ったり、速さに慣れて聞き取れるようになったりするのかなと思います。英語のリスニングのようなものなのかな?と感じました。
➣ごっこ遊びができる環境を作ったり、実際に社会に出て体験したりすること
社会に関心を持つようになったら、ごっこ遊びを通して社会の仕組みを知る経験を増やすと良いです。おままごとやお店屋さんごっこ、小さい人形を操っておもちゃの車や電車に乗って遊ぶなど、社会の成り立ちについて学べます。
また、実際に貨幣を使ってお店でお金を払ったり、電車に乗ったり、一緒にお料理をしたりする機会を増やすのも良い経験となります。実際に経験することで、小さな世界で行われていた自分の経験と社会の仕組みとがつながり、世界が広がります。その中で、商品名や看板、広告や駅名などを読み上げてあげたりすると、語彙がさらに広がっていきます。
➣身近な自然に接する時間を取ること
例えば、水は高いところから低いところへ流れること、月が満ち欠けすること、秋になると紅葉して葉が落ちる木とそうでない木があること、鳥が巣を作って卵を産みヒナを育てること、などが含まれます。これらのことを子どもが十分に満足するまで、じっくりと観察したり感じたりする時間を取ります。
自然は大人が感じている以上に多様な変化をします。子どもはその変化を敏感にキャッチしますよね。娘も今日のお月様の形をいつもチェックします。その中で「月は満ち欠けすること」を感じているんだと思います。自然に接する中で、「なぜ」「どうして」と疑問をもつことは、論理的に考えるきっかけの第一歩となるでしょう。
➣自分の関心に集中できる時間を十分に確保すること
モンテッソーリ教育では、子どもが集中している状態のことを「フロー状態」と呼びます。フロー状態に入った子は、自分の遊びに夢中になり、無言になって遊びます。例えば、プラレールを並べている時、ブロックを作っている時、ぬり絵をしている時などです。
娘は工作が好きなので、工作をしている時によくフロー状態に入っています。作品をつくっている時は無言で黙々とやっているようですが、よく観察をしていると頭の中は目まぐるしく回転していることが分かります。「どうしたらここに輪ゴムをつけられるだろう?」「あ、こうしたらいいのか!」「あれ?」「じゃあこうかな?」などなど、脳内会話をしている様子が見られます。これは論理的な思考を繰り返し行っているものと思われます。
自分の頭で考えて、自分で解決できる経験は自信を深める上でも重要なので、ぜひ意識してやらせていきたいですね。
➣同世代の子どもたちと十分に接する機会が確保されること
娘は親の仕事の都合上、1歳半から保育園に通っています。そして、保育園でたくさんの言葉を覚えてきました。やはり家庭で過ごすよりも圧倒的に多い言葉のシャワーを浴びる中で、言語能力が発達していくのだと思います。
筆者は、「『すべての幼児はゼロ歳から保育園に通う権利がある』『すべての小学生は学童保育に通う権利がある』と法律に明記すればよい」とさえ言っています。それくらい、読解力を育む上で同世代の子どもとの関りが重要であるということがうかがえます。
また、近所の公園に遊びに行くと、娘がよく自分より少し年上のお姉さんの様子をじっくりと観察したり、一緒に遊んでもらったりする機会があります。筆者も少し年上の子どもたちがすることを真似たり、憧れたりする機会が確保されることが大切であると述べています。
まとめ -幼児期から読解力は育てられる-
小学生の子どもたちの読解力について、保護者の方から相談を受ける機会がたくさんあります。小学校で行われるテストの点数で「読解力がない」ということがより顕著に表れるので、心配になられるのかと思います。
しかし、本書を読んでいると、読解力は小さい頃からの積み重ね、経験がいかに重要かということが分かります。まだ親が読解力のことなんて考えてもいない幼児期からでも、これだけできることがあると知って驚きました。
自分が子どもの頃に感じていたように、「読解力は一朝一夕にして成らず」というところなのでしょうか…。それくらい小さなことの積み重ねが大切なんだと思います。
では、読解力について最も気になる小学生に対して、どのように育てていけばよいのか。それはまた次の記事にまとめていきます。