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半側空間無視患者に対する姿勢制御アプローチの可能性~論文紹介~



はじめに

初めまして、くろと申します。
臨床4年目、回復期リハビリテーション勤務の作業療法士です。

今回は、論文紹介を行いたいと思います。

問題

本所究では、半側空間無視を有する片麻痺患者の座位姿勢
を正常に近い状態で制御することにより、身体図式の基盤となっている情報を適切に入力し、空間認知が改善されるかをBITにより検討した。
あわせて、精神状態の変化をPOMSとローレンツプロットを用いた自律神経機能の定量的測定法を用いて調べた。


方法

対象者
・BITにて半側空間無視を示す症例7人
評価指標
・線分二等分検査
・脈波センサー:
 →動脈波を検出し、心拍変換プログラムでR-R間隔とLF/HF比を算出した。
 →→R-R比をもとにCVI(副交感神経指標)、CSI(交感神経指標)を算出した。
・POMS短縮版
手続き
・ABA実験デザインを用いてリハビリ室の評価室で個別に実施。


結果

・t検定を用いたところ、
CSIに有意傾向が認められた。
緊張・不安感得点、CVI、LF/HF比には認められなかった。
・効果量を求めたところ、
線分二等分検査の中央からのずれ、CSIに大きな効果量が認められた。
緊張・不安感得点には中等度の効果量が認められた。
CVIに小さな効果量が認められた。


考察

半側空間無視を有する片麻痺患者の座位姿勢を正中位での対称的な姿勢で制御することにより、線分二等分線検査での中央からのずれが減少し、緊張・不安が減少した。
さらに副交感神経活動が減少し、交感神経活動が増加した。
これらの結果から、身体図式の基盤となっている情報を適切に入力することによって空間認知が改善され、それに伴い精神状態も改善される可能性が示唆された。


結論

・半側空間無視の患者様には、正中位での対称的な姿勢でリハビリテーションを行った方が、「不安感などの精神状態の軽減」や、「覚醒、注意機能などの高次脳機能が働きやすく、半側空間無視のズレが軽減した状態」を作り出すことができ、より有意義なリハビリが可能となると考えられます。
・その中で、片麻痺に対する治療や、鏡を使用した姿勢の自己修正などを行うことによってより良い効果を生み出せる可能性があるかもしれません。
・そのためには、座位姿勢時の姿勢評価、声掛け等の様々なスキルが必要になってくると思います。そこで経験や自己研鑽がより活きるのではないでしょうか。
・これからも自己研鑽を怠らず、出会った患者様との経験を大切にして、介入をすすめていきたいですね。

参考文献

原口 雅浩, 古川 香, 木藤 恒夫, 半側空間無視患者に対する姿勢制御アプローチの可能性, 日本心理学会大会発表論文集, 2011, 75 巻, 日本心理学会第75回大会, セッションID 2AM060, p. 2AM060, 公開日 2019/02/02, Online ISSN 2433-7609, https://doi.org/10.4992/pacjpa.75.0_2AM060,



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