見出し画像

【New Journey】Future of Coffeeの序章に立ち会い、バリスタとして旅を続ける ― Ida Kohei

コーヒースタートアップ「Kurasu」の成長は、多様なバックグラウンドを持つ仲間たちによって支えられています。連載記事「New Journey」は、そんなKurasuでの活躍を経て、新たな一歩を踏み出すメンバーたちのストーリーを記録する場。彼ら・彼女らの言葉は、同じコーヒー業界で挑戦を続ける人々へのインスピレーションとなり、Kurasuの未来を形作る貴重なインサイトとなるでしょう。

今回取り上げるのは、バリスタのKohei(Ida Kohei)。KurasuのEbisugawa店のバリスタとして入社し、その後は2050 COFFEEのストアマネージャーとして活躍。2月でKurasuを卒業したあとはアイルランドでバリスタを続けるとのこと。バリスタ一筋でここまで歩んできて、その歩みを今後も続けていくだろう彼がKurasuで過ごした時間を振り返り、その軌跡を書き留めます。


\こちらもどうぞ/

Kurasuで得たもの、2050 COFFEEで試されるもの

——カナダ、東京でのバリスタ経験を経てKurasuに入社したとのことですが、最初の印象はいかがでしたか?

バリスタとしてスキルアップを目指し、シングルオリジンを扱うコーヒーショップで働きたいと考えていました。以前勤めていた「Allpress Espresso Japan」ではブレンドのみの取り扱いでエスプレッソ系のメニューが多くて。次は味わいの変化が顕著に表れるシングルオリジンを提供するお店で、コーヒーの技術や知識を高めていきたいという想いがありました。

Kurasuに入って最初に働いたEbisugawa店の第一印象は、「バリスタにとっての夢のような空間」でした。僕自身、ハンドドリップに力を入れたかったこともあり、豆の種類や抽出器具が豊富な環境に惹かれました。例えば、フィルターの違いによる抽出の変化を検証するなど、細かなディテールにこだわる機会があることも魅力でした。個人ではなくチームで動きながら、そのディテールを追求できる環境が整っていることは、当たり前のようでいて、実はとても貴重なことだと感じています。

——Ebisugawa店にすっかり馴染んでいたと思いますが、何がきっかけで2050 COFFEEに異動したのですか?

もともとキャリアプランを細かく考えるタイプではなく、どちらかというと、目の前の「好きなこと」に夢中になる性格です。2050 COFFEEについては話に聞いていたものの、特に意識していたわけではありませんでした。そんな中、たまたまYozoさんから声をかけていただいたことがきっかけです。
全自動のエスプレッソマシンとタップコーヒーだけを置くというオペレーションの話を聞いたとき、「この環境で、どうすれば本当に美味しいコーヒーを作れるのか?僕、バリスタとして試されているのでは?」という直感が働き、むしろその難しさにワクワクしました。

バリスタの中には、より高度な技術を学ぶために、マニュアル抽出を重視する店舗へ転職する人もいます。その逆の選択をしたことに意外だと言われることもありますが、僕自身は「いただいた仕事を全力でやる」ことを大切にしているんです。それが結果として、自分の成長や新しい挑戦につながると考えています。

目の前の一杯、その先のコーヒーに広がった目線

——マネージャーとなって、初めての経験やチャレンジングな場面も多かったのではないでしょうか?

初めてマネージャーという立場になり、店舗のマネジメントやスタッフの育成、さらには外部とのつながりを築くことなど、これまで経験のなかった業務が一気に増えました。基本的には不慣れなことしかありません。それでも「コーヒーに関わる仕事をしている」と感じる瞬間が日々あって、それがモチベーションにつながっていたと思います。

これまで意識していませんでしたが、今振り返ると、自分は目の前にあるもの、一つひとつ経験を積み重ねて前に進んでいくタイプなのだと思います。とはいえマネージャーの立場では、現場のメンバーと経営側の間に立ち、「少し先のことを考える」視点が求められます。それが、今までとは違う大人な視点なのかもしれないと感じることもありました。

また、2050 COFFEEは「2050年問題」に真正面から向き合うビジョンを持ったお店で、初めは一バリスタとしてスケールが大きすぎると感じてしまったのも正直なところです。しかし、その運営を支えるYozoさん、Masaさん、Kangさんといった経営陣と仕事をする中で、視野が広がることが多かったですね。

中央にIdaさん。左がMasaさん。右は経理のMaedaさん。

これまでバリスタとして、つまりプレイヤーとしてコーヒーにまっすぐ向き合ってきましたが、2050 COFFEEでのマネージャー経験は、視点を「+1cm」広げるきっかけになったと感じています。

——特に印象的なことはありますか?

自分でも不思議なのですが、今、アイルランドでバリスタの仕事を探すにあたって、気づけばコーヒーショップがどんな社会的・環境的な取り組みをしているのかを自然と気にするようになっていました。海外のコーヒーショップでは「Transparency Report(透明性レポート)」を作成し、自分たちの取り組みを可視化しているところも多くそうした動きに関心を持つようになったんです。

コーヒーを始めた頃よりぼやっと生産地への想いを馳せることはあったのですが、Kurasuや2050 COFFEEでの経験によって、コーヒー生産者の目線に立って、コーヒーやそれを取り巻く環境にスポットを当てて考えるようになりました。そして気がつけば、2050 COFFEEが掲げる「Future of Coffee」というテーマが、無意識のうちに自分の中でも軸として芽生えていたんです。

それに伴い、以前は漠然としていた「いつか生産地に行きたい」という思いも、少しずつ現実味を帯びてきました。ヨーロッパに行くと、アフリカのコーヒー産地も日本よりずっと近くなります。今後は生産地の視点から、これまで極めてきたコーヒーを改めて見つめ直してみたいという気持ちが強くなっています。

——少し余談を挟んで、京都という街で「働くこと」「暮らすこと」はどうでしたか?

京都の街には、異文化のバックグラウンドを持つ人々やインバウンドの旅行者が点々と歩いています。それにもかかわらず、彼らは京都独特の街のオーラに溶け込み、まるで風景の一部になっているように感じられます。京都という「結界」の中に、さまざまなものが煮詰まっているような、独特な空気感があるのが不思議ですね。その距離感が、とても興味深いです。

京都で働くことで見えてくるものもあります。僕の場合はバリスタという仕事を通じて、京都の景色や人々の流れを感じていますが、パン作りをしている人にはパン作りだからこそ見える景色があり、料理をする人には料理を通して見える京都がある。ある意味、当たり前のことかもしれませんが、仕事と街の距離が近い気がするので、京都という街の多面的な表情が働く上でも浮かび上がってくるのだろうと思います。そして何より、流れに身を任せて生きやすい街だと感じます。

プロローグに立ち会えたこと

——2050 COFFEEでの経験を振り返って、今は、どのように感じていますか?

「2050 COFFEE」が目指しているものはとても大きく、だからこそ、一つの部分を切り取って「これができた」と言い切るのは難しいと感じます。ただ、さまざまなコラボレーションや、店舗のあり方そのものを試行錯誤する中で、何かしら次につながるものを残せたのではないかと思います。

これからも2025年、2026年、2027年と、さまざまな人が2050 COFFEEに関わり続けていくことで、2050年には何か大きなインパクトを残しているのだろうと想像します。2050 COFFEEのドリップバックやTシャツには、映画のエンディングロールのように年が記載されていますが、その2024年、2025年というタイミングに自分が関われたことが、素直に嬉しい。誇らしい経験です。

例えば、今や世界中にあるスターバックスも、シアトルの1号店から始まりました。成功した今だからこそ美化されがちですが、創業当時はもっと泥臭い、挑戦の連続だったはず。そうした「始まり」にある人間らしさを、2050 COFFEEの現場で実感できたことも、自分にとって大きな学びでした。

そう思えば、新しいことを始めるとき、さまざまな葛藤があって、正解なんてわからない、だからこそ話し合って決断して一歩進んだことが軌跡になっていく。その経験を目の前で感じられたチームのメンバーには心からの感謝と深い絆のようなものができたと感じます。

個人的には、いつか自分のお店をつくりたいという目標がある中で、今回の経験は必ずその未来につながるだろうと思っています。最近、iPhoneの画像フォルダを見返していたら、ちょうど5年前の今日、アイルランドに旅行に行ったことに気づいたんです。カナダでのワーキングホリデーの時から、次はアイルランドワーホリを考えていたので、帰国の道中にその視察がてらアイルランドに寄ったら、街に漂う空気感、雰囲気が気に入りました。日本に帰国後、アイルランドワーホリはコロナで一時断念しましたが、そのおかげで東京と京都でバリスタとして時間を過ごせたんです。2050 COFFEEで勤めるなんて思ってもいなかったし、そこで新たな視点を得たあと、再びアイルランドにいってバリスタとして挑戦できるなんて。よくある話かもしれませんが、点と点がつながったと思いましたね。着実にいい時間を過ごせたと思います。

——Koheiさんの歩みを見ていると、良い意味でオールドファッションなバリスタだと感じるのですが、ご自身ではどう思いますか?

「オールドファッション」という言葉は、時代遅れとも訳せるかもしれませんが、同時に「かっこいいもの、美しいものだけが残る」とも言われます。長い年月をかけて証明されたかっこよさには、独特の安定感がありますよね。最近、改めてオールドファッションの良さを感じています。

バリスタとして一生懸命に働くことは、「人」と向き合う仕事であるからこそ、悩むことも多いです。でも、その中には、日々の幸福感や、等身大で生きられる自由がある気がします。

インタビューを終えて

Kurasuを卒業し、アイルランドへと旅立つKoheiさん。彼が淹れるコーヒーは、どんな場所でも、どんな環境でも、心地よく溶け込んでいくことでしょう。

コーヒーショップの物語がなぜ魅力的なのか。それは、きっと、サプライチェーンにおける人々の小さな物語が積み重なり、思いがけないインパクトを生み出すからなのかもしれません。Yozoさんも「インパクト」というキーワードを大切にされていますし、Koheiさんの話を聞きながら、編集部としても、今も日々、生まれている生きた成長のストーリーを、Kurasuのファンやコーヒーラバーの皆さんにしっかりと届けたいと感じました。

Kurasuは、一緒に働く仲間を募集しています!

Kurasuでは、コーヒーを通じて人々の暮らしを豊かにし、笑顔溢れる社会を実現するビジョンに共感するメンバーを募集しています。

一人ひとりの情熱と知識を大切にし、自由な発想と責任感を育む環境のなかで、生産者から消費者まで、コーヒーに関わる全ての関係者とのつながりを深める経験が得られる、そんな場所です。

変化を恐れず、新しい価値を追求し、市場の変化に対応するKurasuで、コーヒー産業のグローバルリーダーとして共に成長しましょう。