和紙という素材の可能性:ISSEY MIYAKE 『On Kamiko-紙衣によせて-』
こんにちは
「和紙」、「紙」と聞くと皆さんはどのような印象を持つでしょうか。
記述するもの、折るもの、包みもの、などが浮かんでくるかもしれません。
しかし、歴史を辿っていくと和紙は「着るもの」としても用いられていました。
そこで今回は1000年以上の歴史を持つ和紙を「衣服」として仕立て上げたアパレルブランド「イッセミヤケ」の展示を見に行ったお話をしていこうと思います。
個人的にとても興味のある作品が並び、空間と共に学びのある時間となりました。
それではいきますね。
|和紙と衣服とイッセイミヤケ
三宅一生氏(1938-2022)は世界的ファッションデザイナーとして活躍し、伝統的な技術と現在の技術を掛け合わせ新たなデザインの可能性を追求してきた方、というのがボクの印象です。
数年前にお亡くなりになりましたが、三宅氏が手掛けてきたデザインをこれからも学んでいきたいと思います。
紙衣(かみこ)とは
和紙をこんにゃく糊でつなぎ合せ、柿渋を塗って乾燥させたうえ、もみほぐし仕立てた和紙の生地。軽くて、布地とは異なり繊維が詰まっているため保温性に富み防寒着として用いられたり、または古代から僧衣として、戦国時代では陣羽織として紙衣が使用された記録が残っています。
紙衣は和紙を生地として扱うものです。
伝統的な技術ではありますが、製品の需要などの観点から現在では和紙で衣服を製作することはほぼないと思います。
そうした現状の中、作り手の端くれとして、第一線で活躍するISSEY MIYAKEというアパレルブランドがどのようにして伝統的な素材「和紙」や製法「紙衣」と向き合い、作品を製作したのかがとても興味がありました。
展示空間は仕切りも和紙で、作品写真も和紙に印刷されており、全体が和紙で包まれていて、透通す軽やかさと柔らかさのある空間が広がっています。
日の差込みとぼんやりとした照明の演出を感じるだけでも面白さがあります。
展示されている衣服を見ていくと素材の特徴を考慮し、直線的な仕上りではあるものの和紙特有の質感と「麻紙」そのままの色味から温かさを感じます。
|伝統から学び、向き合う
では、ここからはボク自身の取り組みと照らし合わせたお話を綴っていきます。
ボクも和紙や紙衣から着想を得て家具を設計しました。
木と和紙の椅子「紙木折々(しきおりおり)」というスツールやベンチがそれに当たります。
伝統的な技術、とはいえ調べていくと参考になるモノ(着物など)がないですし、紙衣用の和紙が製造されているわけではありませんでした。
ですので、どう作るかの前に和紙を生地のように扱うにはどうしたら良いのか、まずそこからが出発点。
参考となる実物があまりにもないので手探りの日々を過ごしていたのを覚えています。
今回のイッセイミヤケの展示で製作協力をしているアワガミファクトリーさんにも問い合わせたり、作ってみては不具合を調整したり、失敗の連続ではあったものの、少しずつ紙という素材を生地的な使い方が可能なところに近づいていった感じです。
そんなこんなを経て、今はボクなりに紙衣的な扱いが出来るところまできましたし、商品としてオンラインショップで販売しています。
2022年には木と和紙の椅子シリーズ「紙木折々」はウッドデザイン賞2022も授賞することもできました。
布地のように伸び縮みする素材ではないので、まだまだ検証を重ねて、より製品として良いモノにしていくためにも和紙の探求は続けていくつもりです。
そう言った意味でも、今回のイッセイミヤケの展示を拝見出来たのは勉強になりましたし、伝統的な素材や技術と今を結ぶための取組みを自分なりに進んでいこうという気持ちにもなりました。
ISSEY MIYAKE「On Kamiko ー紙衣によせてー」は1月28日(火)まで銀座のギャラリーで開催されています。
興味のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
大阪のギャラリーでも同時開催(26日まで)されているようです。
ということで、
今回はこの辺りで失礼します。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
ではまた
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