読書メモ『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』西口一希著
この本はマーケティングを担当することになったけど何をしたら良いかわからない人、マーケティングが必要だと言ってはみるもののマーケティングが何かをはっきりと説明できない人、ひいては、すべてのビジネス人にとってマーケティングを理解するために必読の本です。
西口一希さんは、1967年生まれ。大阪大学経済学部卒業後、P&Gジャパンに入社し、ブランドマネージャー、マーケティングディレクターとして「パンパース」「パンテーン」「プリングルズ」などのブランド担当をします。16年後にロート製薬に移り、執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「デ・オウ」など60以上のブランドを統括します。さらに9年後にロクシタンジャポンの代表取締役社長に就任します。そして2年後に今度はスマートニュースに参画して大きく成長させました。素晴らしい経歴と経験の持ち主です。
西口さんの講演を聞いたことがありますが、論理的で明解で、説得力があります。
私はマーケティングの基礎講座を行っていますが、私がいいたいことは、まさに西口さんが言っていることです。
マーケティングの定義はたくさんありますが、西口さんは結局はキーワードは「お客さま」「価値」「創造」だと言います。
私のマーケティングの定義は、フィリップ・コトラー先生から学んで、「お客さまを特定し、お客さまの問題を把握し、それを解決する価値を提供すること」としてきました。大切なのは、お客さまが誰であるか、そのお客さまの悩み・問題を解決するために提供できる価値は何なのかを明確にすることです。
西口さんは同じことをさらにわかりやすく説明しています。「マーケティングとはお客さまにむけて、価値を創造すること」と。
そして重要なのは、目先の手法、ツールに惑わされないことだと言います。これはHOWに当たることです。
これはありがちです。〇〇マーケティングという言葉がたくさんあります。毎年のように新しいマーケティング手法が出てきます。しかしそれに振り回されてはならないのです。「Instagramマーケティングが良いらしいから、やろう」ではないのです。その前にWHO-WHATの組み合わせをまず考えなければなりません。
WHO:一人のお客さま
WHAT:商品の便益(ベネフィット、メリット、選ぶ理由)と独自性(他を買わない理由)
つまり、どのようなお客さまに、商品の便益を提供して、価値を感じてもらうかがまず大事なのです。
便益と独自性が価値を生み出します。しかし価値は人によって変わります。自分事にできないと価値は成立しません。西口さんの例がわかりやすいです。
例えばアルコールが飲めない人には、「喉越しの良いビール」に価値は感じないので、響きません。しかしアルコールの飲めない人にも「ビール好きの人への贈答に最適」と伝えれば価値を感じるのです。
便益と独自性は、価値を感じている人からヒアリングをして見つけるのだと言います。一人のお客さまに絞ってヒアリングして確定するのです。ポイントは一人に絞って深掘りすることです。西口さんはこれを「N1分析」と呼んでいます。私はこれだと思いました。それまでペルソナを作るワークをしたりしていましたが、今ひとつピンときていなかったのです。
一人に絞って大丈夫かとよく言われました。西口さんは、その一人を深掘りすれば必ず同じように価値を感じる人が少なからずいるので、問題はないと言います。
それでも商品が売れない理由は
①価値を必要とする人に伝えきれていない
②便益と独自性にお客さまが価値を見出していない
だと言います。腹落ちします。
西口さんの本を読んで、私が今やるべきことは、
①対象になるお客さまを一人決めて、その人の悩みや要望、それを解決するためのギャップ、よく見るメディアや、よく行く場所など、深くヒアリングすること
②お客さまの課題を解決する価値を明文化すること
③商品の便益と独自性をしっかりと把握して文章にすること
④見出した便益と独自性をどのように表現したら対象の一人に響くのかを考えて表現を明文化すること
⑤対象の一人に伝えられるメディアをリストアップし、リソースを考えて、もっとも効果的と思われるメディアで伝達すること
⑤これをぐるぐる回すこと
マーケティングは闇雲にいろいろやってみるのではなく、基本をしっかり回すことです。