人生を立て直す羅針盤『あっという間に人は死ぬから』感想
いい本に出会えたので、今日は本の感想と紹介です。
簡単にまとめると、「人生は短いのではなく浪費してしまっている」という論点からスタートし、その原因を明らかにして、どんな風に生きていけばいいのかを指南してくれる一冊です。
単なる時間術の本ではなく、メンタルヘルスにも触れられた一冊なので、自分が考えてきたこととリンクしていて、大変楽しめました。
軽く自己紹介すると、30代男性、教員です。メンタルダウンを経験し、3年間休職しました。その後復職し、「5年後も笑って働く」を目標にしております。よろしくお願いします。
どんな人が書いた本なの?
著者は佐藤舞(サトマイ)さん。データサイエンティストでYouTube登録者数は40万人を超えています。就職後にキャリアチェンジをされた方で、「人生の立て直し」も実際に経験されています。読んだ人の「人生の羅針盤」となるように本書を執筆されたそうです。
この本の強みはどこなの?
さまざまな哲学、科学、心理学などのデータやエビデンスに触れながら論を進めているところが強みだと感じました。
時間が無いと言いながら、ついスマホを触ってしまうよね
→時間術にはいくつか有効なものがあるから紹介するね
→でも、それではなかなかうまくいかないよね
ここまでは普通なんですけど、
死ぬこと、孤独、責任から目を逸らしているのが問題なんじゃないか?
→確かにそれは事実っぽいけど、どうやって生き方を変えればいいの?
ここで一段と著者のギアが上がる印象を受けて、面白かったです。詳しくは、ぜひ本書を読んでみてください。
この本の独自性はどこなの?
「時間が足りない」という問題の解決策を、メンタルヘルスの視点からアプローチしているのが独自性だと感じました。
具体的には、コーピング、認知行動療法、ACTが取り上げられています。
コーピングは、意図的なストレス対処法です。不安から目をそらすために、ゲームに没頭するなどが挙げられます。
認知行動療法は、簡単に言うと、気分や感情、身体症状は直接は変えられないから、変えられる認知(ものの考え方)と行動を変えていこうねというアプローチです。
ACTは認知行動療法をさらに発展させたもので、自分の中にある気持ちをありのまま受容し、価値に向かって行動をしていこうねというアプローチです。
ACTは僕も人生を立て直す中で取り入れてきた手法で、「自分が何を大切にしたいか」を丁寧に明らかにしていくと、どこに向かって走ればいいかわかってくるんですよね。
本書でもバスの例えが出てきます。あなたはバスの運転手で、乗客は不安などをすごく訴えるんですけど、それを黙らせるのはよいアプローチではなくて。
バスの運転手としては、不安などのさまざまな感情にとりあえず座ってもらって、騒いでもらってもいいから、安全運転で目的地まで辿り着くことが大事なんです。
詳しくは本書、あるいはACTの導入本を読んでみることをおすすめします。
この本は誰に向けられている?
簡単に言えば、「人生このままでいいんだろうか?」と思っている人、人生を立て直したいなと思っている人におすすめです。
時間の使い方を見直すのがテクニックだとすると、それ以前に、どんな人生を歩みたいのか、自分の価値観を作って行動していくことが大事になります。
率直に言えば、メンタルヘルスに深刻な問題を抱えた方には、少しおすすめできない部分があります。
僕もそうだったのですが、療養中の方は、とにかく逃げることが大事な時期があって、不安を直視するより、趣味を楽しんだり、コーピングに逃げるほうがよかったりします。
ただ、本書にも紹介されていますが「短期的によくても、長期的に見て人生を台無しにしてしまうコーピングはマズいのではないか」というのは大事な視点です。
それを受け取れる状態にあるのであれば、本書をおすすめしたい。
どちらかと言えば、メンタルヘルスの調子を崩す前に読んでほしい。また、調子を崩しても、もう一度人生を立て直そうと再起を誓った時期に読んでほしい。そんな一冊です。
この本から始めてほしい
ちょっとだけ自分の話をします。
僕はこれまでいろんな本を読んできましたが、だいたい次のような変遷を辿ってきたように思います。
病気(メンタル)をどうにかしたい。
→人生の価値観の軸を作りたい。
→後悔のない人生を送りたい。
→時間の使い方を変えたい。
→経験に投資したい。
→よりよいキャリアを歩みたい。
→物語を意識したい。
ときどき戻ったり寄り道したりしながら、この辺りをウロウロしています。
自分にとっては、そんな試行錯誤してきたテーマが、ギュッと詰まった書籍だと感じました。
この本から始めてほしい。この本を出発点に、いろんな本を読みながら、人生と豊かさについて考えてみてほしいなと思います。
読んでいただき、ありがとうございました。