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『オッペンハイマー』映画感想文。原爆の街・ロスアラモスと涙の理由
アマプラに『オッペンハイマー』が来ていたので観ました。
個人的評価としては3.6くらいなのですが、自分のモヤモヤを整理するために、感想を書きます!
今日はちょっと暗めなので、メンタル崩したくない方は引き返してくださいね。
簡単に紹介すると、原子力爆弾の開発者オッペンハイマーの人生を描いた物語です。外国に行って物理を勉強し、アメリカでプロジェクトを立ち上げ、原爆開発後は核競争に危機感を示す。
みなさんご存知、8月6日に広島に、8月9日に長崎に投下された原爆は、数えきれない人の命を奪い、その後も人々を苦しめました。日本人として、歴史を学んできた者として、あまりいい気持ちにはなれませんでした。
ただ、一人の人間として、これは観る必要があると思った。
ネタバレありです。一番印象に残ったのは、原子力爆弾の開発のためにロスアラモスという街を作り、そこで人々が協力する姿でした。
オッペンハイマーを突き動かしたもの
彼は原子力爆弾の開発、そしてそれが日本に投下された後も葛藤を抱えていました。
「自分は開発するまでが仕事、その後の使い方は僕のコントロールできる範囲ではない」と言いつつも、それが人を殺す兵器として使われることは理解していた。
物理学者としての純粋な知的好奇心ではなく、彼は「ナチスに先を越されるわけにはいかない」という信念で動いていた。それを他人にも、自分にも言い聞かせているように感じた。
海の向こうには、少なくともドイツには自分と同等、あるいはそれ以上のレベルのヤベー物理学者がいる。それを知っているからこその行動力。
そんな彼は、街を作ります。物資の搬送、実験場などを考慮した結果、砂漠が広がる広大な地域に、街を作る。そして、学者たちを勧誘する。
ロスアラモスという街と人々
軍人がオッペンハイマーとトップに据え、街づくりと同時に原子力爆弾の開発プロジェクトを動かす。
家族と共に移住してきた天才たちは、何を作るか最初は聞かされない、でも途中からだんだんわかってくる。何を作り、どうするのか。
でも、彼らにも生活があるし、知的好奇心もある。そして、軍の機密に触れた以上、今更逃げるわけにもいかない。
軍服を着て指揮を取るオッペンハイマーに「そんなもの脱げ。君は学者なんだ」と諭してくれた友人が、わずかな良心でした。
僕が吐き気を感じたのは、原子力爆弾が軍部の極秘プロジェクトではなく、街レベルで多くの人が関わって作られたこと。そして砂漠での実験が成功したとき、人々が苦労が報われたように喜んだこと。
嵐の中での起爆実験、失敗すれば投資してきた時間とお金が無駄になる。なんとか成功して「やったぜ!」となる。
実験が成功したということは、その爆弾は誰かの頭上に落とされるということ。苦労したプロジェクトの成功というものに、逃げ込んで、集団で必死に目を逸らしていると感じました。
自然と涙が流れたところ
原爆が完成した頃には、すでにヒトラーは死んでいた。原爆を落とすなら日本。候補のうち、どの街に落とすか。
京都はやめよう。私がリストから外した。以前旅行で行ったが、いい街だった。いや、他の街はいいのかよ。
原爆を落とすと告知して、避難させればよいのでは?いや、それで失敗したら、ソ連を含めた他国への影響が。
日本の気力を挫く必要がある。アジアで戦う兵士たちを国に帰してやろう。
重大な決定が、地図の上で決められる。そこに人はいない。葛藤を抱えるオッペンハイマーでさえ、人々のことではなく、次のことを考えている。ソ連との軍拡競争だ。
これが戦争なのだ。頭で理解しつつも、腹の中にはドス黒い感情が生まれていた。原爆の投下に成功し、歓喜するロスアラモスの人々。迎えられるオッペンハイマー。人々を喜ばせる言葉を残す。自然と涙が溢れた。
歴史を多角的に知ること
『オッペンハイマー』は無理に日本人が観なくていいと思うが、アメリカに住む人々のリアルな雰囲気を知ることができるというのは、ひとつ大きな学びであった。
彼らにとって、脅威はドイツだった。その後は、ソ連だった。日本は、本当に眼中になかったのだ。第二次世界大戦の終結、冷戦の幕開け。水爆の取り扱いはどうする?
コテンラジオで第一次世界大戦を勉強したが、近代兵器の登場、塹壕を使った戦術などにより、戦いは泥沼化したという。これまでの常識、「この辺で終わろう」が通用せず、それぞれの国は兵士を投入し、多くの人が亡くなった。
第二次世界大戦もその延長線上にある。核兵器の登場によって、いったん、いったん終わらせることができた。今の平和は、その上に乗っかっている。もちろん、ウクライナやパレスチナの問題は現在進行形だ。
アメリカの中にも、共産主義勢力の話、ソ連のスパイがいるのではないか?という不安、そしてくだらない権力闘争。いろんなものが渦巻いていた。ロスアラモスの人々は必死に生きていただけなのだ。
『進撃の巨人』のエレンとライナーの会話を思い出しました。仕方がなかった。お互い、環境があって、悪魔になった。それを理解したとしても、戦いは止められない。
おわりに
落ち込んで終わるのはもったいないので、コテンラジオ『アメリカ開拓史編』の視聴を始めました。とりあえず、アメリカの国の歴史をざっと学んでみます。
僕はロスアラモスという街のことを知りませんでしたし、その後ケネディが大統領になり、ソ連との付き合いがどう転んだか、詳しく知りません。
そんでもって、今回のトランプさんの再選まで、全ては繋がっていると思いますので、いったん歴史の勉強をしてみます。
僕の中の『はだしのゲン』は怒っていますが、世界の一員として、結論を保留にして、もう少し冷静に眺められるようになりたいです。
読んでいただき、ありがとうございました!