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小説 | 友達の彼女の誕生日
今日は友達の彼女の誕生日。
でも今日、一人らしい。
「お祝いしよっか?」というと「うん!」と嬉しそう。
その子の家の近くにオシャレなイタリアンがある。そこを予約し、誕生日用にお花とケーキを用意してもらった。最近はネットで完結する。便利なもんだ。
二人で会うのは初めてかもしれない。
僕たちは「3人」で仲がいい。
なんかちょっと緊張してきた。
待ち合わせに現れた彼女。
「お祝いしてもらおうじゃない」っていたずらっぽく笑う彼女は、僕の知ってる「いつもの」彼女だった。ほっと胸をなでおろす。
ご飯は盛り上がった。
小学校、ポケモンしかしてなかった、ゲンガーが好きという彼女。
中学、陸上部。誰よりも速かったという熱く語る彼女。
高校、海が学校から見える。そこを二人乗りした。「そんな典型的な青春ある?」ってこれまでに見たことないようなドヤ顔の彼女。かわいいな。
僕はサッカー部。モテると思って入ったけど、モテるやつはどこにいてもモテてただけだったってわかった。
高校、陸の孤島。男子校とまではいえないけど、女子がクラスに2人。それって逆に弾けられない。今までモテたことがない。
そんな話も「見る目ない女の子しかいなかったんだね」って。
3人のときの彼女はもっとおしとやかだけど、僕は今のほうがずっといい。二人でずーっとずーっと笑ってた。
電気が消える。
お花とケーキ。花火付きでやってきた。
そ、そこまでしなくても・・・って思ったけど、最初からこれを狙ってたんですけど?って顔を一生懸命つくった。周りから拍手をもらう。
「想定外?」
僕の顔を見ながら彼女は言った。
「うん」
正直にそう言うと彼女は笑った。
「だよね。でもありがとう」
もっとちゃんとやればよかったかな。プレゼントとか。
帰り道。
彼女の家まで歩いていける。
公園があった。
「ちょっと寄らない?」
うなずいて彼女に続く。
今韓国のアーティストにハマってるらしい。その動きを公園でやってくれた。あまりに本気でやってくれたから僕は今までにないくらい笑ってしまった。
「もう、そんなに笑う?」
膨れた顔の彼女。でも目の奥は笑ってる。とっても魅力的。
「次はこれね」
そういってスマホを見せてくる。よく見えない。少し近づく。肩が触れる。肩が当たる。彼女のコートから熱が伝わってくる気がした。
「ねぇ」
彼女が振り返る。
キスをした。
触れるだけの。
冷たい空気が胸に刺さる。痛い。
そういえば今日、僕たちは一度も「彼」の話をしていない。
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