古道をあるく 風の道【葛城の道】 奈良県 後編
前回の続き、葛城の道を歩きます。
地図で見ると三分の一どころか四分の一ぐらいしか進んでいない。
高天彦神社からスタート。
次の高天寺橋本院へ
里山を少し下っていく。
だいぶ雲が取れ、晴れ間が出てきて明るくなってきたのが嬉しい。
すると出てきた石碑『史跡 高天原』
ここ、というよりこの辺り一帯が神話の高天原といわれる場所。
高天寺橋本院
高天寺の山門をくぐるといらっしゃる、あのお方。
現在は高野山金剛峰寺に属し、真言宗の開祖である弘法太師を祀っている。
本堂の隣に大師堂がある。
少しかわった境内の配置。
ここも季節ごとの花が色々咲き、華やかな様子が目に浮かぶ。
納骨堂の裏手には桜の木が、納骨堂前の庭には蓮池が。
春から極楽になること間違いなし!
その裏手の道が葛城の道になる
穏やかな道を行くとすぐまた柵が。
ここからまた古道っぽい道に。
その流れにちょっとおっかない橋が掛かる。
橋を渡るとすぐまた柵。
出たところは、まさしく高天原を示す場所。
なるほど・・・
バックに金剛山、そして大和盆地を見下ろすこの地に降り立ったのか・・・
飛び立ったのか・・・
次は極楽寺へ
坂を下り、県道に出てまたちょっと上がったところに
極楽寺
極楽寺という名のお寺、たまにあります。(鎌倉の極楽寺など)
奈良の極楽寺、謂れは奈良らしい古さと格調高し。
次は長柄神社を目指す
すっかり晴れ上がった空はやはり気持ち良い!
田畑の間の道を下りたり横に進んだりと、少しずつ下っている?!
地図上にあった住吉神社でもお参り。
南北に伸びる高野街道と東西につながる水越街道が交差する
名柄というエリアは、かつて様々なひとや物、文化が行き交う場所だったのであろう。
そういう地が、ここ奈良を歩いているとよく出てくる。
街道と街道の交わる宿場町や巷。
郵便局を過ぎて突き当たりを右に曲がると
長柄神社(ながら)
いわゆる村、町の神社といった佇まいで、とても親しみやすいというか
立ち寄りやすい雰囲気だった。
でも復習で、よくよく縁起を見てみると時代はやはり天武と・・・古い。
次は一言主神社へ
川を渡り、古い建物が見え、黄緑色の暖簾が掛かるドアが開いていたので
覗いてみたら・・・
巨大な樽が目に入る!
正面を見れば、樽、樽、樽。
醤油蔵、初めて見る。
確かに、芳醇でまろやかな醤油の香りが蔵内にただよっていた。
こんな大きな樽で作られるとは!
誰も姿が見えないので、お話を伺うことができなかった。
調べたら、昭和6年創業、奈良県産の大豆を主原料にし
杉の大樽で自然発酵、熟成させて作り無添加無調整の醤油とのこと。
樽は100年近いものもあるよう。
醤油、日本料理の基本調味料だがあまり拘って使ったことがない。
大体、ヤとかキのもの。
こんな蔵の樽や製法をみると、ちょっといいお醤油使ってみたくなる。
味もやはり違うのでしょうね。
醤油蔵からすぐに現れた、一言主神社の鳥居
葛城一言主神社
祭神 主神 葛城一言主大神(かつらぎのひとことぬしのおおかみ)
幼武尊 (雄略天皇)
創建 不詳
全国の一言主神を奉斎とする神社の総本社。
一言のお願いを聞いて叶えてくださるという。
一言って・・・どのぐらい一言?
とりあえず一つお願いした。
拝殿の前に大木が!
もう暗くなりよく見えない。
銀杏(乳銀杏)の古木、樹齢1200年とも言われる御神木。
こちらの手水舎の龍さんがかっこ良い!
よもの花はさかりにて、
峯々はかすみわたりたる明ぼののけしき、
いとど艶なるに、
彼の神のみかたちあししと、
人の口さがなくよにいひつたへ侍れば、
猶見たし花に明行く神の顔
松尾芭蕉
葛城を訪れて詠んだ芭蕉の句
まわりまわって?!・・最近ずっと芭蕉の大波がワタシにきている・・・
ドッシャ〜バッシャ〜と
間違えた、ザブン〜ザブン〜でした。
なるほど・・・一つ繋がった・・ムフフ(独り言)笑
この一言主神社の参拝を終えると3時を過ぎていた。
西を背にした山の麓、どんどん陽が陰り暗くなってきている。
まだ先は少しあり急がねば!
夏ならまだカンカンに陽が出ている時間だが、冬のそれでなくても
夕暮れが早いなかの山裾歩き。
次の九品寺へ急ぐ
門限ギリギリ!?で九品寺到着
九品寺
聖武天皇の勅により行基が開基した戒那千坊の一つ。
室町時代に兵火をまぬがれて今に残る。
古刹中の古刹といえる。
御本尊の阿弥陀如来坐像は藤原時代の造というではないか
今回は拝観できなかったが、いつかぜひ拝見したいもの。
またこちらの千体石仏も拝見していないので、これも次回必ず!
見事にきれいに整った境内。
隅々まできっちりしている。
どのお寺にも言えるが、手入れがよく行き届き気持ちが良い。
一方で、苔むした灯籠や石の鳥居、枯葉が積もる神社の境内も実は大好き。
こちらも花がきれいなお寺のよう。
いよいよ陽が翳り暗くなってきた。
最後の六地蔵までもう一息!
その前に駒形大重神社通過
田んぼを抜け住宅街に入ったところにいらっしゃるはず・・
一度わからず通り過ぎてウロウロ探した。
あっ、これね!笑
道の真ん中にドン!
六地蔵石仏
前からずっと思うのですが、お地蔵さんや石仏に前掛けをつけるのは
どんな意味があるのでしょう?
これ、ワタシはとにかく好きでないのです。
せっかくの彫られた姿が全然見えないではないですか!
何か強烈な意味があるなら仕方がないが、本来の姿をみたいものである。
それはさておき?!
石、岩は残る!
どんなに何月が経っても、雨風吹いても、地震や火事でさえ残ることができる。
この六地蔵様のように流され場所が変わっても、ちゃんと残り居続ける。
頼もしい歴史の遺物、いや、今でも健在の現役物!
後の一千年もまた場所が変わるかもしれないが、
どっしりと人々を見守ることでしょう。
ということでこれにて葛城の道完走ならぬ完歩。
御所駅へ。
山辺の道でもそうなのだが、終点から駅までがこれまた結構な距離がある。
石上神宮でゴールと思っても、天理までまだ数キロ歩く。
これがかなり遠い。
今回も御所駅まで1キロ以上ゆうにある。
下る。
どんどん下る。
駅到着
11時から5時間ちょっとの歩き旅、
たった5時間で千年以上の時の流れを神社、お寺、石仏、古木などで
通り過ぎて行った。
神話のことになるとなかなか理解しにくく、一生懸命?!古事記も学んでいるが
やはり難しい。
しかし、風の吹くところに風の神様、水の流れるところに水の神様
そんなんで十分のように思えてきた。
そのような自然信仰の話がワタシにはしっくり納得できる。
この葛城山麓は水がとにかく豊かな印象。
水があれば人の生活は潤う、当たり前のことだが大切なこと。
また鴨氏が何に目をつけここに・・と歩きながら思った。
その鴨氏はどこからきたのか・・・
妄想のネタには事欠かない大和の歴史と道。
古きを歩き新しきを識る
樹と水と磐と風を感じた、冬の葛城の道を歩いた。
おまけ
近鉄御所駅の観光案内所で入手した、御所市の案内パンプレット?!が
とても素敵だったのでご紹介。
まず紙がゴージャス!
ちょっとやそっとじゃボロボロにならないタイプ。
そして画、これは版画でしょうか?
ざっくりとしたタッチで、各スポットの特徴をしっかり表現され
とても味わいと雰囲気のある素敵な絵。
写真ではないのがとても良いと思った。
そして全部開いた反対面は本格地図。
これ、最高!
そうそう、こういうのが見たかったの、知りたかったの!
と背中の真ん中の痒いところをかいてもらったかんじ(笑)
御所市さんなかなかやるではないか!
ただ、これだけ案内には力を入れているのに、誰も歩いていないのは・・・
せっかくこれだけ見どころ歩きどころ満載の道なのに。
標識などもしっかり整備されていて、分かりやすく歩きやすいのだが・・・
ちょっとした休憩スポットが少ないとまず思った。
まあ古い道を歩くということなので、あれもこれも現代的なものはいらないが
何かが惜しい感じがしたのは確か。
でも静かにモクモク、一人ブツブツ言いながら歩きたいワタシには
もってこいでした!
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