『なんらかの事情』妄想力に脱帽!笑える本をおすすめするならこれ!翻訳家、岸本佐知子のエッセイ集
おもろい。おもろすぎる。ずっと「何これ?」って思いながら読んだ。
電車やカフェで、ふいに周囲の会話が耳に入ったりするじゃないですか。で、思いがけずツッコみたくなる会話ってあるけど、このエッセイは、それと同じ匂いがする。
ずっとボケてる。いや、たぶん著者の岸本さんは大真面目なんだけど、それはそれで、妄想力、発想力に脱帽する。
退屈で刺激を求めているあなたに、ぜひ読んでほしい1冊です。
これは、エッセイなのか?岸本ワールドに吸い込まれる1冊!
いちおう、ジャンルはエッセイということになっていますが、これから読む方には、「ダマされるな!」と言いたい。
だって、おかしい。何かが、おかしいの。
もちろん、まぎれもなくエッセイなんです。「レジで一番遅い列に並んでしまう才能に長けてる」とか、「アロマにハマりました」とかね。
でも、良い意味で、途中から話が変な方向に行く。「あれ?何の話だったっけ?」ってなるような。
お笑いで例えると(お笑い興味ない方すみません)、漫才のジャンルで「コント漫才」というのがあります。たとえば、コンビニ店員やりたい→やってみよう→俺がお客やるからお前店員ね、でコントが開始するやつ。
それと同じルールでいくと、岸本さんのエッセイは、「エッセイ物語」って感じ。エッセイの中に、フィクションが差し込まれてる。
「は?」って思った方は、一度読んでみて。この意味がわかるはずです。とりあえず、おもしろいことは確実なので。
オリジナリティあふれるワードセンスに、思わず笑ってしまう!
前述の通り、この本をおすすめした理由として、構成がおもしろいのもあるけれど、ワードセンスの鋭さも触れずにはいられない。
一言でズバッ!というよりは、「何その表現、新鮮!」っていう類のワードセンス。
たとえば、「ボタン運がなくて、買った服のボタンがその日のうちに取れてしまう」という話では、猿が縫い担当をやってると疑ってて、笑える。
たいてい細い糸でひどくいいかげんに縫いつけてあり、猿がやったのではないかと疑いたくなる。なぜ私が必ず猿がボタン付けをした服を買ってしまうのかわからないが、その同じ猿がしばしば私の買う服の裾のまつり縫いも担当しており、だから私には裾運もない。
ほかにも、クスッと笑えるところがたくさんあった。
さいごに、思わず噴き出したエッセイの冒頭を載せておきます。これで心つかまれた人は、ぜひ。
ダース・ベイダーも夜は寝るのだろうか。
二週間ほど前にその考えが浮かんで以来、ずっとダース・ベイダーのことを考え続けている。
■この本が気に入った方には、こちらもオススメ
自身も、岸本佐知子さんのエッセイのファンと公言する、お笑い芸人、Aマッソ加納愛子さんの初エッセイ。岸本佐知子さんが、以下の帯メッセージを送った1冊です。
めくるめく脳内フェスティバルと、キレキレの言葉のサーカス。最強の書き手が、あらわれた!――岸本佐知子
この本の紹介記事は、こちらから↓↓↓
■次はコレ!この本が好きなら、これも好きなはずシリーズ
・『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』阿佐ヶ谷姉妹――読めば阿佐ヶ谷が好きになる、癒し系エッセイ。ゴッドタン発の小説も収録!
・『そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか』能町みね子――週刊文春の連載「言葉尻とらえ隊」を書籍化。あの発言の心理をネチネチ分析
・『わたしの容れもの』角田光代――アラフィフ作家が、歳とともに身体に起きた異変を受け入れて、面白おかしく見つめるエッセイ集
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