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帯に短し襷に短歌

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素朴に歌を詠むということへの憧れがある。素朴に詠めるようになりたいと思うのである。とにかく詠んでみないことにははじまらない。「こんなものは短歌とはいいません」なんて言われたってい…
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#俳句

月例落選 2022年5月号

月例落選 2022年5月号

俳句の方は1月末日消印有効で短歌は2月15日必着分。時間順で俳句から。

題詠の兼題は「真」または「夜」。今回は「夜」を選んだ。

雪化粧夜の名残の烏かな

烏だけ雪に残して夜が明けた

東京は殆ど雪が降らなかった。雪が降れば住まいの窓から見える小さな公園が雪に覆われる。今暮らしている団地には様々な鳥がやって来るので、実は烏は遠慮してあまり近付いて来ない。だから頭の中でこしらえた風景なのだが、夜が

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月例落選 2022年4月号

月例落選 2022年4月号

今月からは『短歌』と『俳句』のダブル。俳句の方は12月末日消印有効で短歌は1月15日必着分。時間順で俳句から。

題詠の兼題は「望」または「砂」。

砂を噛む話ばかりで年暮るる

季語は「年暮るる」(冬)。『広辞苑』によれば「砂を噛むような」は「味けないことや感興をそがれることの形容」の意。具体的にどうこうというのではないが、「今年もロクなことがなかった」というだけのこと。何かを伝えたいとか詠みた

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芍薬採集

芍薬採集

芍薬が郵便受けで咲き誇り
(しゃくやくが ゆうびんうけで さきほこり)

芍薬は夏の季語。華やかな花で美しさの代名詞のように言われる。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉もある。でも、そんな花が郵便受けで咲いていたら、ギョッとするかもしれない。この句の「芍薬」は花ではなくて、ペンネームだ。別の記事に書いているように『角川 短歌』という月刊誌を定期購読していて、毎月そこに歌を投稿し

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歌仙

歌仙

美術館に頻繁に出かけた時期がある。和洋平面立体ありとあらゆるジャンルのものを、とりあえず見たのである。東京には「ぐるっとパス」というものがある。都内の美術館や博物館の入場券や割引券が冊子にまとめられたものだ。有効期限が比較的短いのだが、これを何冊も使い尽くした。今はそういうことはやらない。

そんなことはどうでもよい。よく三十六歌仙と題した絵がある。36人の歌人が歌とともに描かれている。「仙」は仙

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言語幻想

言語幻想

仕事で翻訳の真似事のようなことをしてみたり、他人様が書いたものを直したり、というようなことをしている。言葉を別の言語に置き換えるというのは、基本的に不可能だと思っている。イメージで言うと、木彫りの仏像をレゴブロックで写すのが翻訳というものではないかと思うのである。レゴブロックには組み立ての技能についての認証制度があって、そういう認証を受けた人が作るものはたいへん精巧だ。レゴブロックで作ったものを見

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初心

初心

改めて俳句の通信教育で詠んだ句を眺めてみた。なるほどひどいもんだと思う。その入門コースは標準6ヶ月で5回の課題レポートを提出することになっていた。確か、6ヶ月では間に合わずに少しオーバーしたはずだが、一応「修了証」なるものを頂いた。以下が、その5回のレポートのなかで詠んだ句だ。

迷い道抜け出す先の春の空

記念すべき最初の一句。お題は「旅立ち」という言葉から連想する場面を思い起こし、そこから句を

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歌を詠む

歌を詠む

言葉というものに素朴に興味がある。かといって具体的に研究しようとか勉強しようというようなことは考えたこともない。俳句や短歌を詠むんですよ、なんていう人の話を聞くと、カッコいいなぁと素直に思うのである。

しばらく前に落語を頻繁に聴きに出かけた時期があった。当時は寄席にはそれほど興味はなかった。何かで知って気に入った噺家の独演会に、多いときで月に2回ほど足を運ぶ程度のことだった。噺のマクラに川柳や俳

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