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帯に短し襷に短歌

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素朴に歌を詠むということへの憧れがある。素朴に詠めるようになりたいと思うのである。とにかく詠んでみないことにははじまらない。「こんなものは短歌とはいいません」なんて言われたってい…
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2021年4月の記事一覧

月例佳作

月例佳作

静かなる街が新たな日常に感染症の御利益なりや
(しずかなる まちがあらたな にちじょうに かんせんしょうの ごりやくなりや)

静かなる不要不急の美術館ケースの中の顔が微笑む
(しずかなる ふようふきゅうの びじゅつかん けーすのなかの かおがほほえむ)

静かなる街を包んだ見えざる手ゲノムの真意「適者生存」
(しずかなる まちをつつんだ みえざるて げのむのしんい てきしゃせいぞん)

不自由が

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三者三様

三者三様

同じ時同じ所を旅しても見る風景は三者三様
(おなじとき おなじところを たびしても みるふうけいは さんしゃさんよう)

同じ時同じ世界に暮らしても思うところは三者三様
(おなじとき おなじせかいに くらしても おもうところは さんしゃさんよう)

同じ時同じ家族に生まれても運の行方は三者三様
(おなじとき おなじかぞくに うまれても うんのゆくえは さんしゃさんよう)

子供の頃からずっと抱えて

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証拠写真

証拠写真

人混みの向こうから見た「私」と微笑み交わすあの日あの時
(ひとごみの むこうからみた わたくしと ほほえみかわす あのひあのとき)

人が闇雲に写真を撮るようになったのはいつの頃からなのだろう。その昔、カメラはもちろん貴重品だったが、フィルムも安くはなかったし、現像もそこそこのコストだった。しかも、フィルムカメラの場合、思うような写真が撮れていたかどうかは現像してみないとわからなかった。だから、写

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自動精算

自動精算

精算が必要なのに無人駅 精算機無く駅舎も無し
(せいさんが ひつようなのに むじんえき せいさんきなく えきしゃもなく)

精算機切符とともにあのことを 一気呵成に清算済ます
(せいさんき きっぷとともに あのことを いっきかせいに せいさんすます)

成算の無い清算に向かうとき 時間を稼ぐ精算機前
(せいさんの ないせいさんに むかうとき じかんをかせぐ せいさんきまえ)

聖餐に慌てて出かけ精

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ハメ外し

ハメ外し

生活を変えましょうと旗を振り いつもの店でいつもの宴
(せいかつを かえましょうと はたをふり いつものみせで いつものうたげ)

役人は「型」を守ってナンボなり 花も嵐も踏み越え宴
(やくにんは かたをまもって なんぼなり はなもあらしも ふみこえうたげ)

稟議さえ通れば後は全力で 予算の執行期末の宴
(りんぎさえ とおればあとは ぜんりょくで よさんのしっこう きまつのうたげ)

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