みつばちの土産
「け、何だこいつ。なに左腕横に出してんだ。しかし見たことないが、顔の笑いの角度が微妙に中途半端だな」ネット作家のオロチヤマタノスケは、ネットで見たあるキャラクターの顔を見つけると、突っこみながらとあるSNSに投降した。
ところがこれに反論するコメントがついてしまう。
「拝啓オロチ様、このキャラクターを冒涜するのはあなた様の自由です。しかしこのキャラクターの正体をご存じの上で、このようなことを書いていおられるのでしょうか?」
これがまったく見知らぬ「荒し」のような輩であれば、無視をしたヤマタノスケ。ところがこのことを指摘したのは、知っている存在。相互フォローをしている関係どころか、リアルなオフ会の席でも面識のある「スズカ」という人物だから放置できない。
「スズカさん、このキャラを知っているのか」ヤマタノスケは、DMを使って質問をした。
「もちろん、これはジョリビーのキャラクター。昔住んでいたマニラでは。このキャラクターがうじゃうじゃいるのよ」
「じょ、ジョリビー? 聞いたことがない。フィリピンのキャラか。で、そもそもナニヤツだ」ここからは半ばチャット状態が続いた。
「ジョリビーというのはフィリピンのファストフードの店。一応フィリピン以外に、ベトナムとブルネイで見かけたわ。日本には来てなかったかしら? いっとくけど、あれ、ああ見えてミツバチなのよ」
「見えないな。中途半端な火星人かと思っていた。そうか確かに後ろのほうに小さな羽根のようなものがついているな」
ヤマタノスケは打ち込みながら、いろいろと頭の中で想像した。
「いいわ、ジョリビーに関しては私には思い入れがあるの。悪いけどその話させてもらってもいい」
「ああ、いいよ」「じゃあ一時間後、ZOOMでね」
ーーー
「おお、スズカさん。久しぶり」「オロチさんも相変わらず」こうしてふたりのZOOM対談が始まった。
「さっそくだけど、ジョリビーにはフェルナンド先生の思い出があるの。オロチさんは、多分あの不思議なキャラに突っ込んだんだけど、それはちょっとね」
「そうか、それ知らなかったから。悪いことしたみたいだ。謝るよ」
「わかってくれればいいんだけど」と画面越しに笑顔になるスズカ。
「で、せっかくのZOOMだ。そのジョリビーとフェルナンド先生のエピソードを教えてもらえないか」作家活動をしているヤマタノスケはその内容が気になって仕方がない。
「もちろん。そのつもりだったから」ここでスズカは画面越しに姿勢を正す。そして語り始めた。
この前も言った通り、ジョリビーはフィリピン中にあって、特にマニラには本当にどこにでもあるの。で私がフィリピンで語学留学していたとき、フェルナンド先生とジョリビーで食事をする機会があったわ。
まあ食事自体は、もうジョリビーがどんな料理を出しているか知っているからそれは問題ない。ところが金髪で派手なアクセサリーをつけている変な若者が3人で店の中に入って来て突然。
「け、ジョリビーだってよ。ふん、こんなまずいもの食えるわけねよな」「ああ、同じように見えるけどさ。マクドナルドは、世界的にやっているだけまだ食える。でもこれを食っている奴って絶対に頭おかしいよな」
「そうそう。甘いわけでもないのに、何でミツバチがキャラクターなんだ。それってDランドのキャラクターでもあるネズミのパクリじゃねえのか」
突然ジョリビーの悪口を大声でわめきだした。みんな「変な奴が来たな」といって無視していたけど、ついにこの若者たち店のスタッフにも絡みだして。「お前たちこんなまずいもの客に出してバイト料稼いでいるの。バカじゃないの?」「そうそう、こういうまずいもの出して金もらっているって、まるで詐欺だよな」「そう、君たちまだ若いのに詐欺の片棒なんて担いだらダメだな。ハッハハハハハ!」
勝手にジョリビーが嫌いで文句言うのはどうでもいいけど、わざと大声でみんなに聞こえるようにこんなこと言ってるの。嫌がらせ行為そのものだった。誰かに依頼されたのかもしれないけど。
見たら従業員たちは辛そうな表情をしてるけど、黙って反論せずに堪えていた。私それ見て本当不快。けど若者3人相手ならとても反論できないと思っていたら、突然フェルナンド先生が立ち上がったの。
「君たち、客に迷惑かけてんだねえ!」と3人を恫喝した。それを見た3人は先生に視線を合わせて、「おっさんは黙ってろ」と罵声を一言。
ところが先生はひるむことなく。「黙ってられねえだよ。てめえらのやっていることは営業妨害。誰かに雇われてんのか。おう」と若者以上に強い語調で反論した。
それを聞いた若者。3人のうちふたりはおとなしくなったけど、その中で小太りで腕力も強そうなリーダー格のひとりは
「おい、おっさん黙って聞いていたらいい気になるじゃねえ」と突っかかった。そして相手は先生に殴ろうとする。ところが先生、それをうまくかわしたわ。
そうしたら相手はさらに怒りを上げて殴り掛かるけど、先生はすべてかわすの。あとで聞いたけど、カンフーを習っていたとかで、それで柳のようなしなやかな動きをしてたのね。
そんなことがしばらく続き、3人はどうにか先生を殴ろうとしても先生の動きはさらに早い。空回りを続けて疲れてきた3人。ちょうど誰かが警察を呼んだらしく、そのまま3人は連れていかれたわ。もちろん先生もその場で事情徴収みたいなの聞かれたけど、すぐに解放された。
で若者たちが捕まると、店内で拍手が起こって。
先生は照れながら「いや、僕は大したことしてません。でも言えることはただひとつ。僕はジョリビーが大好きです」と大声でみんなの前で言ったからまた拍手喝采。
私それを見て先生のこと本当に尊敬したの。信頼関係がさらに強くなったのかしら? あれから私は先生の指導のもと英語力がアップした。先生様様だわ。
ーーーー
「スズカさん。いい話ありがとう!」ヤマタノスケは笑顔で礼を言うと、スズカも笑顔で礼を返す。「そうだ、素晴らしいエピソード教えてもらったから、お礼にはちみつ送るよ」
「は、はちみつ? それってジョリビーだから」「まあそれもあるけど、実はあるメーカーに応募して『お土産用ハチミツセット』というのを試供品をケースで送ってもらったんだ」
「それってモニターか何かなの」「そうなのかなあ。特にアンケートとか何もないけど。でもこの前1瓶試しに開けて食べたら、結構よかったよ。トーストとの相性がバッチリで」
「へえ、それ楽しみね。本当にいいの。なら1瓶お土産にもらっちゃおうかなぁ」画面越しに笑うスズカ。
「ああそうだ、ちょうど今日3月8日がみつばちの日だった」ヤマタノスケはこれはあまりにも『出来すぎた設定』ではないかと少し疑った。しかしスズカは嬉しそうだし。それ以上は突っ込まない。
「みつばちの日! これってジョリビーの日。ちょうど良かった。わかった楽しみにしているわ」対照的にうれしさが前面に出ているスズカである。
「あと」と言いかけたヤマタノスケ。しかしそのままZOOMの通信は終了した。「別のお土産・さば鮨もと言いかけたけど、それはいっか
」残されたヤマタノスケは独り言をつぶやき。口元を緩ませながら、はちみつのケース探し出す。そして見つけると、その中からしっかりと中身が充填してるハチミツの小瓶ひとつを取り出すのだった。
追記:今回登場したオロチヤマタノスケ。以前こちらで私が呑んでしまったために、代わりに物語を書いてもらいました。
非常に奇想天外な内容ながらも、「この発想は無い」「面白い」という評価を頂きます。私は文責者の立場から、これを深堀して歴史ファンタジーのような小説にしたいと思いました。
そこでヤマタノスケ本人了承の下、私がより詳細に執筆したものです。このたび文責者でもある私名義の作品として電子書籍の出版をしました。
現在無料ですからご興味あれば、ご一読願えれば幸いです。
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シリーズ 日々掌編短編小説 412/1000
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