芥川賞ぜんぶ おらおらでひとりいぐも
芥川賞をぜんぶ読むぞ、と言いはじめて早6ケ月。
ちっとも読めてないやん、嘘つきめ!の声が四方から発せられているが、実は月に二冊はしんどいので月一冊ペースで読んでいる。遅い、でもちゃんとゆっくり進んでるから見守ってやってください。
おらおらで ひとりいぐも
なんとカッコイイおばあちゃんなんだろう。
家を飛び出し、好きな男と結婚し、二人の子供を育て上げ、満ち足りた日々。そしていま、頭の中の大勢のひとと「老い」と共にいきる。
「老い」と「自由」が同義語のように語られるなんて今までなかった。自由、とくれば「若さ」と決まっているもの?青春小説の対極、玄冬小説の立ち位置おみごとである。いずれ自分もゆく道だから、ふむふむと頷きながら爽やかに読み終わった。
第158回芥川賞 若竹千佐子 6/82作品
ヘヴン
なぜか読み逃していた川上未映子さん。「ヘヴン」小説が英国ブッカー賞候補、の記事で目に留まった。
「斜視」で暴行をうける男子と「汚れ」でハブラれるコジマ。正しいこと、負けないこと、罪悪感などを根源から考えさせられる小説だ。
弱いやつらは本当のことに耐えられない。人生なんてそもそも意味がないなんてそんなあたりまえのことにも耐えられない、といじめる側の男子生徒が言う。思春期ゆえに、暴力から性的辱めに泥沼化するさまも痛々しい。
小学生の時いじめられ、中学から転校した自分自身のひりひりした過去を思いだした。
138回 乳と卵 芥川賞作家 川上未映子 7/82作
マヤルカ古書店
ところで、私は大手ブックストアではなく個人経営の本屋めぐりが好き。
今夏、京都の奥屋敷・貴船神社に青紅葉と川床お昼飯を堪能したあと、ちょっと足を延ばしてこちらのマヤルカ古書店へ。「芥川賞作家の…」と言うと、奥から「おらおらで…」を取り出してきてくれた。ありがとう。
良書と書店との出会いも一期一会である。