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猛スピードで母は : 芥川賞ぜんぶ
クモガタ・サダノリって知ってる?
20代の頃、使い道が謎だったクモガタ・サダノリこと『雲形定規』。彼の存在をすっかり忘れてたが、この小説中に二度も登場し、しかも1度目は主人公が私と同じく、変な形、何に使うものだろうと不思議がっていた。
サダノリ、元気だった?
彼の名を思い出させてくれて、ありがとう。
※以下ネタバレを含むため、未読の方はご注意ください。
結婚するかもしれない、と慎に告げたのは、自力でタイヤ交換できるし、車は猛スピードでかっ飛ばす、むかし漫画家を目指した、シングルマザーの母だ。
“母は二本立てが好きだった。観終えて外に出ると昼は夕方に夜は真夜中に、あるいは晴天が豪雨に、という風に世界ががらりとかわっているのがよいのだという。帰りの車の中で今観た映画の感想を語る母はもう結婚という単語を口にしたことすら忘れているみたいだ。“
さて、この小説中、名前が出てくるのは、慎と母の恋人の慎一さんと登校仲間の須藤くん、の三人だけ。
つつましい暮らしの中で、母と息子がときどき映画館で映画を観て過ごすのがとても鮮やかに描かれる。
一方、祖母が危篤のときも、祖父が倒れたときも、母は自分時間を削って、やるべきことをつらぬく、その後ろ姿ほれぼれする。
慎がいじめられてると気づいたときも「莫迦が多いんだね」と一蹴する。
正しい、よりも、カッコいい生き方を!
名前のない母に、エールを贈る。
余談だが、装丁イラストが佐野洋子さん(100万回生きた猫)なのもカッコいい。
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芥川賞特賞コーナー ありがたや
42/113冊
第126回芥川賞 2001年下期