「彼女のいない部屋」アマルリック監督に質問をぶつけてみた。
その一行だけの最小限情報とともに、観客は大海原に放り出される。結末は決して明かさないで、と監督が懇願した家族の物語。
何かがおかしい、分裂症?
過去なのかそれとも未来なのか⁈
噛み合わなかった歯車がぴたりとあったとき、息をのみ絶句してしまう。とはいえ、思わせぶりなシークェンスに勘のいい人は結末をわかってしまうのだが。
プロローグのポラロイド写真からはじまる迷宮の映画を、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
ティーチインの法則
さて鑑賞後のティーチインがはじまると...
すばやく真っ直ぐ挙手! ←これ鉄板ルール
理由1:進行を速やかにしたい司会者の目にとまる。
理由2:登壇者は第1質問だから、集中して丁寧に答えてくれる。
理由3:最初だから他の質問と被ることがない。
で、私の質問内容はこうでした。現実と仮想現実
“台風で移動が大変な中、来てくださってありがとうございます。(映画は)とても良かったです。
クラリスが現実と仮想現実を行ったり来たりするのが描かれてましたが,撮影は現実部分と妄想部分をどのように撮影していったのですか?そのエピソードなどあれば…。”
アマルティス監督の回答
“ありがとう、台風よりちょっと早めに到着したので大丈夫でした(場内笑い)。
人間は身を切るような辛い現実に出あったとき、イマジーネションしようとする。真実でも偽りでもなく、実際の人生も秩序だった通りにいかず、人生はいろんな方向にすすんでいくものなんですよね。”
他の質問についても紹介しておこう。原題と邦題の違いについて
“原作となった戯曲とは異なり、フランスでは「わたしを強く抱いて」というタイトルです。私は、それぞれの国の扉を開けるように各国のタイトルが違っていいと考えます。
邦題は「彼女のいない部屋」
彼女=メロドラマ× いない部屋=亡霊?
二つのジャンルがこのタイトルに含まれており、わたしはとても気に入っています。”音楽について
“音楽がとても印象的でした。とくにチェリー。音楽は監督自ら選んだのですか?”
“実は、私は子供の頃ピアノを習っていました。ですから、ピアノの練習曲については良き理解者です。(本作では)ピアノの旋律が映画の心象をよく表すように考え、娘役2人の女の子には俳優ではなくピアニストから選びました。クラリスがドライブしながら歌う「チェリー」は実際にヴィッキーが歌ってとても良かったので,三度も撮影しました。”
プロの方がまとめたティーチイン・レポートはこちら
彼女のいない部屋
SERRE MOI FORT (2021年) フランス
監督:マチュー・アマルリック
出演:ヴィッキー・クリープス
字幕:横井和子 配給:ムヴィオラ
さて、私的に2022年はフランス映画大豊作。4/1の”アネット“以来、旧作や監督特集も含め”彼女のいない部屋”で9作目。ミニシアターに感謝しかない。