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1分程度で読める怪談です。
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#小説

くちゃっ【怪談】

くちゃっ【怪談】

「あっ」
「え?あ〜も〜!」
その場で足を上げると、靴底にねっとりと張り付いている。
「早く言ってよねー?」
「ご、ごめん」

その日を境に、彼女は私の目を見ながら、魚の目をつついて食べるようになってしまった。

彼女は踏んだのはガムだと思っているようだが、本当の事を伝えた方が良いのだろうか。

天の糸【不思議な話】

天の糸【不思議な話】

その現象を初めて発見したのは、アメリカ南東部に住む15歳の男の子だった。ふと空を見上げると、純白で途轍もなく細長い紐の様な物が見えたと言う。不思議な形の雲かと思ったが、それにしては風に靡く様子も無ければ大きさも変わる様子も全くない。そしてその紐は自分以外には見えず、近付けば手の届く高さにあると気付くのに時間は掛からなかった。
その紐は世界中で発見された。他人が観測出来ないが為に実証のしようが無かっ

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気にしてはいけない子供【都市伝説】

気にしてはいけない子供【都市伝説】

父方の祖父の実家には小さな子供が住んでいる。
しかし、誰もその子の世話をした事がない。
勝手に物を食べ、飲み、風呂に入って服を着る。
特に悪さをする訳ではないが、寝室に立っていたり音もなく廊下の角から現れたりと、驚く事が多々あった。
何故この家にいるのか、何故誰も気にしてはいけないのか、明確な理由は定かではない。一度話しかけた事もあったが、無視された挙句祖父に大目玉を食らったので、以降は話かける事

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返事する家

K子さんの家では、帰宅する度にどこからともなく「待ってるよー」と声がするらしい。特に何かがある訳でもないし、気にしないようにしていた。
ある日、酔っ払って帰ってきてつい「はーい」と返事をしてしまった。すると「待ってたよー」と声がして、酔いが冷めたとの事。

大声で話す男

透き通った青
空高く聳える入道雲
そこかしこで泣き喚く蝉
少し下に目を向ければ青々とした森が目に飛び込んでくる
茹だるような暑さの中、私は次の電車を待っていた

次の電車まであと15分
今にも溶けてしまいそうだ
構内アナウンスが回送列車の通過を知らせる

列車が通れば数秒だけでも涼しくなるだろうか
さっき買った水も既に飲み干し、それでもまだ喉の渇きは収まらない
無意味どころか悪化させると分かってい

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ショーケース【オカルト】

幼い頃から、夢の中でショーケースに入れられた人間が出てくる。すると翌日のテレビにその顔が映し出され、暗いトーンでアナウンサーが原稿を読んだ。

今日の夢では、凡そ数えきれない程の顔がひしめいていた。この事を誰かに伝えたとしても信じて貰えそうにないので、黙っておくことにした。