神戸教養大学

会議通訳をしつつ、大学でSDGsと英語を教えています。また研究者の卵(D1)です。 お問い合わせはこちらまで。onishiryohei@gmail.com

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最近の記事

結局は、言語力が全てだ。

極端なタイトルです。ですが最近、この気持ちを強くしています。今日は神戸で会議通訳のお仕事がありました。帰りの電車で本を読んでいると、ふと頭に思い浮かびました。「暴力以外に、人や世界を変えるのは言語しかないのではないか」と。 実際、他にも芸術という表現手段もあるので、私の話は少し極論ですね。ですが書き続けたいと思います。 小学一年生の壁 娘が小学生に上がり、勉強の面倒を見ることが増えました。すると一学期はひらがなやカナカナをなぞったり、書けるようになったりという内容です。

    • 同志社大学今出川キャンパス通訳ツアー

      通訳授業の新しい試み2024年1月20日。私の通訳の授業で初めての試みをしました。その名も「同志社大学今出川キャンパス通訳ツアー」です。講師である私が英語ガイドになって、学生が通訳ガイドになる設定でツアーを二言語で開催します。 これまでにも通訳の授業では、私の出身地である神戸を舞台に通訳ツアーを開催してきました。そこでは京都の学生だとあまり行かない神戸について、そして阪神淡路大震災について、通訳を通して知ってもらおうという狙いがありました。 今回も同様、通訳活動を通じて、

      • 英語の授業でSDGsを教え始めた二つのきっかけ

        最近はnoteに書いた記事をスキしてくれる方が少しだけ増えてくれて、これまで全く人の目を気にせず書いていたものに読者の目を意識するようになりました。もちろん何十もスキをいただいているわけではないので、まだまだ独りよがりの文章の域を出ませんが、今日も書いていきたいと思います。今日のテーマは、僕が大学で英語を教えている際に感じている、二つの危機についてです。 地球の危機 堅達京子+NHK BS1スペシャル取材班著『脱ブラスチックへの挑戦〜持続可能な地球と世界ビジネスの潮流』(

        • 不完全なままで

          竹内敏晴著『からだ・演劇・教育』(岩波新書)を読破した。レシートに11/1と書いてあったので、新書としては珍しく、2ヶ月かけて読んだことになる。 この本は70年代から80年代の定時制高校について、演劇を学校教育に組み込んでいこうと苦闘する教師の記録だ。詳細は是非とも読んでいただきたいが、僕の読了感としては、教育っていうのを軽々しく口に出す時点で、今の僕の授業もたかが知れているのだろうな、という一種の諦観だ。 出来るだけ学生の意見を聞こうと、それに対して反応しようとしている

          小一の壁と研究のポジショニングを考える

          娘の算数。小学校一年生の壁と言いますが、早速ぶち当たってしまったようです。「男のことが13人います。女の子が9人います。どちらが何人多いでしょうか。」という問題です。翌日が算数のテストなのです。 娘は足し算しました。すると22人になってしまい、それは多すぎるよねと。足し算じゃダメならどうしたらいい?と聞くと、でも足し算でしょ?と。どうやら「多い」という言葉がトリガーになって、足し算をしてしまっていたのでした。 私も妻も引き算にしたらいい理由を、マグネットを使って説明したり

          小一の壁と研究のポジショニングを考える

          レゴ型教材がSDGs達成に貢献する

          来週、母親が引越しをすることになり、荷物の整理をしていました。するとダンボールの中にレゴが大量に入っていたのが見つかりました。それは私が30年ほど前に遊んでいたもので、「これ、子どもたち遊ぶんじゃないか?」と、30年の時を経て子どもの手に渡りました。 レゴはデンマークのおもちゃで、「よく遊べ」という意味です。もらう前、一つ気になっていたのが、ブロックをくっつける穴の大きさです。もしかしたら規格が変わって、今のブロックと合わなくなっているかもしれないと心配したのですが、杞憂に

          レゴ型教材がSDGs達成に貢献する

          🇮🇷イラン人のパパ友と語る🇮🇷

          息子が通っている幼稚園には、イラン出身のパパ友がいます。Aさんとしましょう。日本人のお父さんも幼稚園で会うことがあるのですが、以前Aさんが幼稚園で何か説明しようとしていて話が通じなかったように見えたので、通訳したことがあります。それ以来、Aさんと話すようになりました。 イラン人の方とお話することは今までなかった為、とても新鮮な感じがします。世界史でもイランの歴史を扱う箇所は若干ありますが、王朝の変遷の羅列だったので、無理やり暗記した割にはあまり記憶に残らなかった経験がありま

          🇮🇷イラン人のパパ友と語る🇮🇷

          Creating Shared Value (CSV)

           When trying to understand the SDGs, people sometimes get confused by a number of terms that look very similar to each other. A good example is CSR and CSV. What are they? Is there any relationship between the two? This chapter aims to desc

          Creating Shared Value (CSV)

          スパイラル学習のススメ

          私は、大学生と社会人に通訳を教えています。レッスンでは通訳の結果である訳出ももちろんチェックするのですが、それと同じくらい大事にしているのは、通訳本番に至るまでの準備です。プロダクトとプロセスの両方の研鑽が通訳者としてやっていくためには欠かせないと、私は思っています。 通訳準備では、色々な分野の資料に触れることになります。中には一回きりの仕事もあるかもしれませんが、有難いことに定期的にお呼びいただくようなイベント通訳もあります。先週末通訳させていただいた国際カンファレンスの

          スパイラル学習のススメ

          横文字の通訳を考える

          二日前、鎌倉サステイナビリティ研究所(KSI)様のウェビナーで同時通訳をさせていただきました。ゲストはロンドン・ビジネス・スクールのアレックス・エドマンズ教授。『Grow the Pie』という書籍の日本語版が出版され、記念イベントが開かれたのでした。 https://www.kamakurasustainability.com/blog/grow-the-pie-alex-edmans しかし、通訳準備はなかなか進みませんでした。学生の力も借りていたのですが、最近よく聞

          横文字の通訳を考える

          子どもには親しかいない。

          大学で教えていると、学生の色々な側面に触れることがあります。もちろん、人間のプライバシーを守る観点から、ここに書けないことはたくさんあります。ですのでこの記事では学生の言葉のうち、特に胸に刺さったものについて想いを巡らせる記事を書こうと思います。 先日、学生とZOOM面談をしました。授業内であまり話す時間を取れなかった反省と、学生が精神的な悩みを持っていることを人前で話すのは避けたかったのではないかと考えて、オンライン面談にしました。 その学生の言葉で一番突き刺さったのは

          子どもには親しかいない。

          大学入試はメッセージだ。

          以前、東京外国語大学の入試問題を解いていた時期があります。東京外大の二次試験は英語と地歴の2科目で、私は世界史の問題を解いていました。 東京外大の世界史は一問一答と論述問題に大別されます。論述は最大600字ほどを書かせる大論述と言ってもよい規模で、馴染みがない地域や時代が出題されるとほぼお手上げのような難問です。 それもあって、一問一答を出来るだけ全問正解しておくことが非常に重要です。論述で落としても一問一答で合格最低点を狙う、という戦略です。 そんな一問一答ですが、2

          大学入試はメッセージだ。

          初スポーツ記者会見通訳で学んだこと4つ

          これまで2回、初めてのスポーツ記者会見通訳について書いてきました。最初は通訳当日までの準備について、そして2回目は当日、通訳前の移動やコンディショニングについて書きました。こちらの記事では当日の通訳を振り返り、この仕事で何を学んだかについて書いていきたいと思います。 ちなみに最初の記事はこちらです。 こちらが2回目の記事です。 さて、実際の記者会見ですが、YouTubeにその一部が上がっています。ライアン氏がご挨拶をされるところの動画で、私の通訳もついています。実際にど

          初スポーツ記者会見通訳で学んだこと4つ

          初めてのスポーツ通訳(当日編)

          前回は初めてのスポーツ記者会見通訳について、前日までの準備について書きました。この記事では当日、本番が始まるまで私がどのようなことを考えて行動したのかについて書きます。 現地までの移動 6月15日。この日もいつも通り、子どもの送迎をしてから現場に向かいます。現場の最寄駅はJR名鉄線の刈谷駅です。私は神戸市在住なので、以下のルートで現地に向かいました。 最寄駅→新神戸(神戸市営地下鉄) 新神戸→名古屋(新幹線) 名古屋→刈谷(JR名鉄線) 刈谷→現場(タクシー) バスケ

          初めてのスポーツ通訳(当日編)

          初めてのスポーツ通訳(準備編)

          0) エージェントからのメール 2023年6月12日。大学の授業を終えた帰りの電車で、通訳エージェントから案件メールをいただきました。今まで経験がないバスケットボール分野の、それも記者会見通訳でした。シーホース三河というBリーグのプロバスケットボールチームに、アメリカNBAから新監督が就任されるという内容の記者会見です。 会見は三日後の6月15日。バスケットボールのことを全く知らない私は、帰りの電車で早速新監督とバスケットボールの情報を探し始めました。幸い、YouTube

          初めてのスポーツ通訳(準備編)

          仕事と教育

          通訳でお世話になるお客様のうち、仲良くなっていくにつれ、大学教育の話になることがあります。その中で嬉しいのは、通訳の授業でスピーカーをお願いしたいとかいう際に「もちろん!何でもするよ」とご快諾くださるお客様がいらっしゃることです。 通訳の授業は生かすも殺すも教員次第なところがあって、学生に通訳をさせるのはもちろん、「どんな人の話を通訳させるのか」が非常に大事です。その人が教員の知り合いがスピーカーだと、非常に深い話まで通訳演習に盛り込むことができ、学生も多くのことを学べると