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「遠い家族」前田勝さんの本を読んで深く深く考えた(基本ネタバレだらけ)その1

 お母さんの国韓国で生まれ、途中でお父さんの国台湾に渡る。離婚して日本に出稼ぎに来たお母さんに呼び寄せられて来日してみれば、そこには再婚してお義父さんとなった男の人がいて・・・。
 3人で暮らし始めるけれど、お義父さんはモテ男で、何度も浮気が発覚し、その度に大ゲンカ。
 ある日お母さんはお義父さん(お母さんにとっては夫)を殺して、自分も飛び降り自殺をしてしまう。
 前田さんに、
「人生捨てたものではない」
 という遺書を残して。
 ものすごくかいつまんで言えば、「遠い家族 母はなぜ無理心中を図ったのか」新潮社刊は、このような前田さんの人生を描いた自伝。
 お母さんとお義父さんの遺体を見せられ確認したのは、前田さん。その時彼は、たったの18歳だった。
 今日にいたるまで、どれほどの辛い経験をしたのかと想像しようとしても、ちょっと難しすぎる。折々のできごとに対する前田さんのその時の感情がリアルに描かれているからこそ、よけいに。
 もちろん、読もうと思ったのは、前田さんの家族が明らかに「機能不全家族」だと思ったから。同じように機能不全家族で育った私は、彼は、この修羅場をどのように乗り越え、生き抜いてきたのかをとても知りたいと思った。
 文中にもあるけれど、お母さんはお義父さんを殺してしまったわけだから、そちらの親族から恨まれることになる。
 この事件が起こったのは、前田さんが大学に入学する直前の春休み。まだ未成年だった。
 いくらお母さんが人を殺めてしまったとしても、前田さんには何の罪もない。逆の状況、つまり殺人を犯してしまったのが子どもの方なら、そんな人間に育ててしまった親としての自分を責めるべきかもしれないけれど、前田さんこそ母を亡くして悲しい時に、お義父さんの親族から、
「お母さんは、死んでしまったから恨む相手はあんたしかいない。一生背負っていくように」
 と葬儀の席で言われるくだりは、怒りが噴出する。
 そんなこと、未成年に言うな。
 思ったとしても、人として口をつぐむべきだろう。
 前田さんは、母と義父の2つ並んだ棺の前に立ち、誰も寄りつかないお母さんの方に寄り添っていたと言う。お義父さんにだって日本に来てから世話になっていたのだし、一緒に暮らしていたのだから、悲しい思いをじゅうぶんに持っているのに、近づくと親族の冷たい目が痛かったとある。
 

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