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ナッジ理論って知ってますか?(世の中に溢れているナッジとダークナッジ)

インターネットの記事を見ていて、“ナッジ理論”なるものの存在を知りました。

2008年に、アメリカの経済学者リチャードセイラ―と、キャスサンスティーンが、「ナッジ(実践行動経済学)」で提唱したのが始まりだそうです。彼らはその後2017年にはノーベル経済学賞を受賞しています。
全く知りませんでした。

この記事の中でも、色々と今日本で応用されていることが紹介されていますが、どれも「あ!そういうことだったのか!」とびっくりさせられるものばかりです。

例えばトイレの張り紙です。
昔は「みんなのトイレです。きれいに使いましょう。」というような表現が多かったのですが、いつの頃からか、「きれいにお使いいただきありがとうございます。」というように変わっていったのです。

私は英語の「Thank You For Using ~」のような、ありがとうを先に言う表現がスマートだから取り入れたものとばかり思っていました。
英文のやり取りでもしょっちゅう出てくる「Thank you for e-mail yesterday.」というあの使い方です。
しかし、これがれっきとした経済理論に基づいていたとは思いもよりませんでした。


<ナッジ理論とは>

ナッジ(Nudge)は、英語で“そっと後押しする”、“肘でつつく”という意味があり、ナッジ理論とは人々の選択や行動を無理に強制するのではなく、自然に、より望ましい選択や行動を促すための方法ということです。

(ナッジ理論の応用例)

前述の記事に紹介されていたのは、東京八王子市が大腸がん検診の受診者の翌年度受診率を上げるために実施した比較実験です。

A「今年度大腸がん検診を受診された方には、来年度大腸がん検査キットをご自宅へお送りしますます。」という文章と、
B「今年度大腸がん検診を受診されないと、来年度ご自宅へ大腸がん検査キットをお送りすることができません。」という文章の2種類で通知したところ、言っていることは同じなのに、
Bのほうが受診率が高かったということです。
2018年のベストナッジ賞に選ばれたと言います。そんな賞があったことも驚きですが、自宅に送ってくれるという“お得”よりも、送ってもらえないという“損する”ことを避けることの方がインパクトがあったということです。

又、レジ待ちの列に「間隔を空けてお並びください。」と言うよりも、床にフットプリントを間隔を空けて貼る方がはるかに効果があったといいます。

面白いのは、レストランで、1700円と1200円のメニューしかないと、ほとんどの人は1200円を選ぶけれど、3000円のメニューも加えて3種類にすると1700円のメニューを選ぶ人が増えるというのです。
これはは“極端性回避”という心理のようです。

面白いので、ナッジ理論がどのように応用されているのか、他も見てみましょう。

  • タバコのパッケージに、「喫煙が健康に及ぼす影響」の警告を大きく表示して、健康の促進を図る。

  • ゴミ箱の横に「リサイクルすると、**kgのCo2削減につながります」と書いて環境保護を意識させる。

  • 銀行のATMの画面に、「今月の貯金目標はもう達成しましたか?」と表示して貯蓄を意識させる。

  • イギリス政府が、税金の未納税者に、「90%以上の市民が、期日までに納税を済ませています。」と書かれた督促状を送ったところ、納税率が5%向上した。

  • Googleは、社員の健康を考えて、健康的な食べ物を目立つところに配置してジャンクフードを目立ちにくくしたり、飲み物のコーナーで水を目立たせてソーダ類を取りにくくしたり、皿を小さくして食べすぎを防いだりしている。

  • 「この商品は95%の方に支持されています。」と表示する。

これらは、自分自身が主体的に選んだと思って納得しているように見えますが、実は知らず知らずのうちに、そう選ぶように誘導されているということです。仕掛ける側にとっては、は、リスク回避の最善の方法と言えるでしょう。

<ダークナッジとは>

しかし、ここで今の社会に潜む闇が見えたような気がします。

知らず知らずのうちに人の行動を誘導するということは、相手の自由意思を意図的に操作しようとしているとも受け取れます。
こうしたことが大衆の意識操作に役立つと認められというのがノーベル経済学賞受賞の本当の理由だとしたらと思うと。・・・。
ちょっと都市伝説のようになってしまいましたね。

実際、ナッジ理論を悪用したダークナッジという手法があるのです。
人々を望ましくない、不利な選択へと誘導するのです。
悪徳企業やブラックな組織が利益を不当に得るためにダークナッジとして実際に使われているのです。
これにより一般の消費者が知らず知らずのうちに時間やお金、個人情報までも搾取されているのです。

(ダークナッジの手法)

ダークナッジの代表的な手法とは次のようなものです。

➀ ユーザーが解約を諦めるように、手続きをわざとわかりにくくしたり、複雑にしたり、解約ページを隠したりする。

② 「残り1点!今すぐ購入しないと手に入りません。」、「買わないと損をする!」と思わせ、急がせてプレッシャーを与え、焦って購入させる。

③ わかりにくい追加料金を隠し、最終的な支払いを高くする。

④ ユーザーにとって不利な選択や高額なオプションをを初期設定(デフォルト)にする。

⑤ 「NO」を選びにくくしたり、誤操作を狙うUIデザインを使う。

⑥ 「みんなやってますよ!」と社会的圧力をかけて、不利な決断をさせる。

(ダークナッジの回避方法)

これらのダークナッジを回避するにはどうしたらいいでしょう。番号順に見てみると次のようになります。

➀ 登録が簡単なサービスは、解約方法も先に確認する

② 焦らず、本当に「限定」なのか調べる

③ 「最終価格はいくらか?」を必ず確認 する

④ 「デフォルトの設定を変えられるか?」を確認 する

⑤ ボタンの文言や配置をよく見てから操作する。

⑥ 「本当に他の人がやっているのか?」を疑うクセをつける。

<洗脳とは>

又、ダークナッジとも違う手法で人の行動や思考に影響を与えるのが洗脳です。

洗脳は強制的に特定の思想や行動を植え付け、個人の自由な意思決定を奪う手法です。
カルト宗教の洗脳や国家のプロパガンダなど、心理的圧力や情報操作によって、本人の意図しない方向へと誘導されてしまいます。

ナッジ理論は個人の自由を尊重しますが、洗脳は個人の自由意思を奪うため、倫理的にも非常に危険なのです。

(洗脳を避けるポイント)

➀ 複数の情報を確認し、誰かが得をするような、或いは怒りや恐怖を煽るような情報でないか冷静に判断する。

② 様々な価値観の人々と交流し、多種多様な考え方に接する。

③ 「今決めないと損する」というような圧力や、「あなたは間違っている」というような脅しに注意する。

④ 「みんなやっているから」とか、「成功者の体験談」など、言葉のトリックに騙されない。

⑤ 自由に選べる選択肢があるのかどうかを確認する。

このように、一旦落ち着いて、「本当に自分にとって正しい選択なのか。」と考えて、「罠にはまっていないか。」と常に疑ってみることも必要になってきています。

情報がこれだけ溢れている時代だからこそ、そのような誘導に惑わされず、本当にその選択が自分に有益なものになるかをナッジやダークナッジにかかわらず常に考えて行動する必要が増してきていると思います。

今日もお読みいただきありがとうございました。スキ・フォローを頂けると嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。

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