【暇人日記】本屋で1番興味がない本を選んでみる
特に理由はない。
いつもと反対のことをしてみようと思っただけだ。
1番興味のない本を選ぶにあたって、ルールを3つ決めた。
①小説以外を選ぶ
②平積みされている本は選ばない
③当日中に読み切る
書店が大好きで、書店がある建物に入ったときには、用事があってもなくてもふらっと立ち寄る。
主に見るのは、小説コーナーだ。
平積みされているものはやっぱり買いがちで、
それ以外だと好きな作家さんの本、表紙の絵がすてきだと思った本、
ぱらぱらめくってみて直感的によいなと思った言葉を見つけた本をよく買う。
書店に来ている人のほとんどがそうだと思うが、わたしもいつも何らかの理由で興味を持った本を選ぶ。
わたしは本を読むことよりも本を選ぶことのほうが好きで(もちろんどちらもかなり好きではあるのだが)、
本を選びたいから、本を買っているようなところすらある。
本を読むだけなら図書館でも済んでしまうが、
お金を出す、という条件のもと選ぶ本と、無料で借りられる本とでは、
選び方の熱量が違ってくる。
読む時の熱量ももちろん。
選ぶために今日も書店に足を運んだわたしは、なんとなく、いつもと違う選び方をしてみたくなった。
あんまり凝ったことは思いつかないので、いつもの真逆、「1番興味の湧かない本」を選ぶことに決めた。
小説はオールジャンル読むので除外。
平積みされている本は、興味をそそられやすいため除外。
そして今日中になんとしても読み切ること。
(積読がただでさえたくさんあるので、
興味がない本を積読の仲間入りさせてしまったら、読まずに忘れ去られる可能性が高い。いや、絶対に忘れ去られてしまう)
いざ。
とりあえず、新書コーナーに向かう。
コーナーで言うと、1番興味のないコーナーだ。
できるだけ、実生活から離れていることや今まで触れてこなかった分野のものをタイトルから探すのだが、
意外と難しい。
どの分野も、意外とどこかしらで生活や日常と結びついているし、
やはり本を出版するにあたってかなりタイトルは考えられているのだろう。
どれも、絶対に買わないような本であるはずが、タイトルから興味が持ててしまう。
あまりに専門的な内容では、きっと読みきれずもったいないので、
なるべく自分が読めそうな、興味のない本。
…難しい。
宇宙や科学については特に興味をこれまで持ってこなかったのだが、
「わかりやすい◯◯」などと書かれていると、素人の私でも…と期待と興味を持ってしまうではないか。
20分くらい、新書コーナーをうろちょろする。
興味は少し湧くのだが、やはりベースの興味が足りないコーナーであるので、段々と眠くなってくる。
いい兆候だ。
そしてついに一冊、購入。
わたしは普段バナナをほとんど食べないので、
この本に決めた。
バナナという身近だけれど、愛着はあまりないフルーツという距離感がちょうど良かったのだ。
しかし、興味がある本ではなく、興味がない本を紹介するというのは少し心苦しい。
自分にとって興味のないものは、誰かにとってのよりすぐりの興味なのだなと思う。
だから、膨大なテーマが一冊の本となって出版され、書店に並び、誰かの手に渡るのだ、
と当たり前のことがなんだかすごいことのように感じられる。
購入したのだ。
読まなければ。
すぐさま、近くの図書館へ行き椅子に腰をかける。
日当たりが良い場所だったこともあり、
すぐにうとうとしてしまう。
それでも一文一文をしっかり目で追いかけて、
バナナと向き合う。
バナナというよりも、副題にあったようにバナナをめぐる労働搾取がテーマのようだった。
図書館で、その後カフェで、その後家で、
ちゃんと理解ができていない箇所もたくさんありつつ、読み進めた。
そして、読み終える。
知識がないことでこれだけわからないことがあっても、興味がないテーマだったとしても、
一通り読むと、ちゃんと伝わるなと感じた。
軽い気持ちで選んだが、
かなり、重いテーマの本だった。
安くて栄養価が高いバナナ。
その背景について細かく記されている。
外資企業による土地の支配と労働の搾取、末端でバナナを作る人たちは多額の借金を抱えて身動きが取れない状況であるそうだ。
出版年を見ると、この本の出版は1982年だった。
もう40年ほど前のことだ。
少しの希望を抱いて、インターネットでバナナと労働について検索をしてみた。
当たり前のように、今でもバナナをめぐる労働搾取は存在していた。
わたしも、
安いものは安いという理由だけで手に取りがちだ。
「安い、栄養価が高い。」
こんなにいいことはないではないか。
それがどれだけ一方的なものの見方であったのかを再確認させられた。
バナナだけでは絶対にないのだよなとも思う。
わたしが普段、使っているもの、口にしているもの、消費しているもの全般、
「安い」という自分側の見方ではなく、
少しでもその背景を知ることが大切なのかもしれない、と感じた。
この本を選んでよかったな、と思う。
また興味のない本を選びに、書店へ行こうとも思った。