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新学習指導要領で 「化学を教える先生へ ・学ぶ生徒へ」 ”勝手に”エンタルピーとエントロピーの指導方法を考えてみました~(セリフ付き)

2022年度の高校1年生より【新しい】学習指導要領が始まります。年次進行ですが,2024年度の大学受験からは「新学習指導要領の内容」を含んだ試験問題になると想像できます。浪人生を配慮するのかな?!

さて,別の記事で「高校化学から熱化学方程式が廃止!めでたい! 何が問題で、どう教えるか。きちんと、エンタルピーで教えるようになります。」を掲載していますが,アクセス数が万越えしたので,「勝手に」実践方法を考えてみました。。。

私の指導方法なんか読みたくない!」という方は,やっぱりアトキンス物理化学です。私的にはフルカラーで読みやすくなったしおススメです。

新 学習指導要領の抜粋

上記の別記事で記載したように,日本の高校だけで教えていた「熱化学方程式」が廃止され,エンタルピー変化とエントロピー変化で「化学反応と熱」を教えることが始まります

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さて,赤線を引いた文章を分析すると,エンタルピー変化とエントロピー変化を教えるだけではなく,どうやら「反応の自発・非自発」についても教える必要があるんではないかと考えられます。
つまり,大学1年生が「ヒーヒー」言っちゃう,ギブズエネルギー変化(ΔG)による「反応の自発・非自発」の事です。

ただ・・・

個人的には,ギブズエネルギーまでをがっつりやるのは化学の単元広くない?っと思っています。

エンタルピーとエントロピーの指導(案)

① まずはエンタルピーから

さて,エンタルピー(変化)は「熱」の事です。エントロピーと音が似ていますが,全然違いますし「(定圧下での)熱」なだけです。

YouTube動画(06:35)の抜粋です。

エンタルピーとは

エンタルピー変化によって,反応が【発熱反応】なのか【吸熱反応】なのかを見分けることができます。YouTube動画(10:00)の抜粋を示します。

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発熱反応は,熱エネルギーを放出する反応です。エネルギーの高い状態(H1)からエネルギーの低い状態(H2)に移動する際に,そのエネルギー差(ΔH)を熱として放出するのが【発熱反応】です。

エネルギー差(ΔH)は,ΔH = H2 ー H1 なので,ΔH<0である「負」の時に発熱反応です。その逆であるΔH>0である「正」の時が吸熱反応です。

生徒(および大学1年生)も,「水が上から下に落ちるのが自発的」と感じるように,発熱反応と吸熱反応の図を見ると,発熱反応が【自発的】と考えてしまうようです。

このエンタルピー変化だけだと,反応が自発かどうかを判断できないことを強調しないと,「自分のイメージ」と「先生が言ってること」に解離が生じて,「何言ってんの????」となります。じゃないと,思考の階段を滑り落ちちゃいます。自発的に・・・。

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「発熱反応が自発っぽいけど,これが違うんだな~」です。

② エンタルピー変化(ΔH)だけでは,自発か否かの判断はできない

ご存知の通り,吸熱反応でも自発的に反応が進むものが多数あります。つまり,エンタルピー変化(発熱か吸熱か)だけでは,反応が自発かどうかを判断することはできません

自発的に進む【吸熱反応】の具体例としては,中学理科で学ぶ「塩化アンモニウムと水酸化バリウムの反応」があります。身近に手に入るものとしては「たたけば冷える!瞬間冷却材」ですね。
※叩くエネルギーで冷えているわけではありませんからね。

ここで,すかさず

「なっ! 吸熱反応でも自発的に進む反応があるでしょ」です。

さらには,もっと身近な例としては,氷が水になる融解反応が「吸熱反応なのに自発的に進む反応」です。

H2O(固体) → H2O(液体) ; ΔH = 6.0 kJ/mol (吸熱反応)

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③ エントロピーの登場

ここで,乱雑さを表す尺度であるエントロピー(乱雑さ)の登場となります。「自然は乱雑になろうとする傾向があり,さらには一度乱雑になったものは自然には元に戻らない。」。家の中でもフラスコの中でも,このエントロピー(乱雑さ)が増加する報告に自発的に変化します。

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「先生の部屋もー!いつの間にか汚くなるんだー!」
「・・・・・」
「ここ、笑うところだぞ」です。

エンタルピー(乱雑さ)の増加の例として,部室や教室が汚くなること・コーヒーにミルクを入れると勝手に混ざり始めること・全校集会後の解散した生徒のこと などなど,エントロピーが自発的に増加する例はたくさんあります

さて,氷が水になる融解反応が「吸熱反応なのに自発的に進む反応」に話を戻します

H2O(固体) → H2O(液体) ; ΔH = 6.0 kJ/mol (吸熱反応)

吸熱反応なのに自発的に反応が進む理由は,固体に比べて液体の方が水分子が整列しておらず「エントロピーが増大する」ためです。水分子にしてみれば,エンタルピー変化によるエネルギーを吸収(吸熱)してでも,エントロピーが増大する方向に自発的に反応が進むということです。

つまり,この段階で「自発かどうかを判断する」には,エントロピー変化とエントロピー変化の両方を考える必要がある。あるいは,

「つまり,エンタルピー変化とエントロピー変化の両方が反応の自発を論じるうえで重要になってくる~!」です。

④ エントロピーと温度の関係 

そして,たたみかけるように,次の質問が重要な意味を持ってきます。

「お~ぃ!佐藤さん!この融解反応を止めるにはどうすれば良いと思う?」です。
「ん? 鈴木さん。 わかってるんなら、大きな声で答えるんだぞ」です。

この融解反応を止めるには「冷凍庫」を使えばいいんです。つまり,自発的に進む吸熱反応である融解反応を止める(自発変化を止める)には,温度(T)を制御すればよいということになります。

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つまり,吸熱反応(ΔH>0)である氷の融解反応は,氷から水になるエントロピー(乱雑さ)の増加(ΔS>0)という要因が大きく,【室温】では吸熱反応でも自発的に進みます
一方,温度を下げると,このエントロピーによる要因が抑えられるというイメージが付くと同時に,「自発か否か」はエンタルピー変化とエントロピー変化のバランスで成り立っているというイメージもつくかと思います。

そうです。
エントロピー変化(ΔS)に温度の積がつく説明になっています。

「エンタルピー変化だけでは,反応が自発かどうか判断できないぞー」
「だって、吸熱反応でも自発的に反応が進む例があるだろー」
「例えば、氷の融解反応だー!」
「エンタルピー変化に比べて、エントロピー変化の方が大きいからだ!」
「でも、この反応は温度を下げると止まるよなー!」
「おぃ!田中さん、聞いてるかぁー」
「温度にはエントロピーを変化させることができるってことだ!」
「そして,”エンタルピー変化の大きさ”と”温度で変化するエントロピー変化”のバランスで、反応が進むかどうかがわかるぞー!」

です。

このバランスの式が,ギブスの自由エネルギーの式ということになります。ギブズエネルギーの式は,

ΔG = ΔHーTΔS
ΔG<0 自発的
ΔG>0 非自発的

どうでしょうか? 無理なくギブズエネルギーの式まで持ってこれたような気もしています。

あるいは,

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語呂合わせでもいいかもしれませんね。

「こんな,語呂合わせもあるぞー!」です。

反応の自発的な変化について,ギブスエネルギーの変化として暗記させるのではなく,エンタルピー変化とエントロピー変化のバランス,さらには温度で変化するエントロピー変化までを理解させることで,ギブズエネルギーの式の理解が深まると考えています。

本文は以上です。

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