漢方の名前が読めない…でもそこには意味がある。漢方処方名の由来の話
葛根湯、小青竜湯、銀翹散…
読者の皆様はこの漢方処方名を正しく読むことができるだろうか。
漢方薬の名前は案外、漢方に精通していないと読み方が分からないものだ。
例えば、桂枝加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯など、ずいぶんと長い名前の漢方処方名もある。
このように漢字の洪水となると、もはや読むこと自体にお手上げしたくなってしまう。
ちなみに、冒頭の漢方薬だが、正しくは葛根湯はかっこんとう、小青竜湯はしょうせいりゅうとう、銀翹散はぎんぎょうさん。
桂枝加竜骨牡蛎湯はけいしかりゅうこつぼれいとう、柴胡桂枝乾姜湯はさいこけいしかんきょうとうと読む。
そういえば昔の話だが、漢方薬の知識が全くない社員さんしかいないとあるスーパーマーケットにて、お客様の要望で何種類かの漢方薬を扱って販売することになったことがあった。
そこで私はパートさんが作ったプライスカードを見て思わず目が点になったことを今でも覚えている。
そのプラスカードには、
葛根湯(クズネトウ)
小青竜湯(コアオリュウトウ)
柴胡桂枝乾姜湯(ムラサキコカツラシカンキョウトウ)
たしかこんな感じになっていたのである…。
おもわず、クスッと笑ってしまった…。
もちろん速やかにそのパートさんと一緒に、すぐに正式な読み方に修正をしたのだが、漢方に触れたことのない人々にとってはこれは当然の事なのだなと改めて思った出来事である。
そこで、今回は、漢方処方名に興味と親しみを持ってもらいたく、名前の由来について紹介したいと思う。
漢方薬の名前の由来に関して、一番多いものは使用している中心生薬からくるネーミングである。
冒頭で紹介した葛根湯(かっこんとう)などが代表的なものである。
葛根湯は風邪の引き初めにさむけが強いときに使うもので、体を温めて抵抗力を強めてくれる漢方処方だ。
葛(くず)はマメ科のクズで、その根なので葛根(かっこん)というのである。
でんぷんを多く含み、古来、葛湯(くずゆ)などの民間療法で使われてきたのはご存じの方も多いだろう。
そのでんぷんから作ったものとして、葛餅、くずきりなども有名だ。
次に、作用と関連の深いものを名前の由来にしているものを紹介しよう。
冒頭2番目に紹介した小青竜湯(しょうせいりゅうとう)がそれだ。
小青竜湯はスギ花粉症などのアレルギー性鼻炎に使う処方である。
青竜(せいりゅう)とは古代中国の神様の名前で、東と水を守るものであり、つまり鼻水などの水との関連を感じさせる名前である。
ちなみに、南は朱雀(すじゃく)、西は白虎(びゃっこ)、北は玄武(げんぶ)、これが各方位を守る神様とされている。
余談だが、奈良県キトラ古墳の壁画に描かれているのもこの四神である。
漢方処方名には、文字通りの作用に由来しているものもある。
例えば、疎経活血湯(そけいかっけつとう)などである。
疎経活血湯は、活血すなわち血行を促進して神経痛、関節痛、筋肉痛などを改善する漢方処方だ。
最後に、ユニークなのものを紹介する。
痔に使う乙字湯(おつじとう)という漢方処方だ。
乙字湯の乙だが、甲乙丙丁の乙で2番目を指しているのだという。
漢方薬を使用したことがある方はご存じだと思うが、漢方薬は番号で表示されていると思う。
実は、これは江戸時代からの流れで、乙字湯は2番の乙がそのまま処方名になったのである。
今回はここまで。
読者の方に少しでも興味が生まれ、漢方に触れるきっかけになれたなら嬉しく思う。
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