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運動が人生を豊かにする

なぜ幼児・児童期に運動することが大事なのか

 子供たちが大人になるまでの発育・発達には、身長や体重を表す「一般型」、体を守る免疫系の「リンパ型」、生殖器や乳房などの「生殖型」、脳や脊髄や視覚器や感覚機能の「神経型」の4つの型があります。そして、この型は個別に成長しやすい時期とそうでない時期があります。
 その中でも「神経型」は、生後から5歳までで成人の80%、12歳でほぼ100%発達してしまいます。(スキャモンの発育曲線)
 私たちは、視覚、聴覚などで得た情報をもとに脳を通じて上肢や下肢に信号を送り、身体を動かします。例えば、飛んできたボールを捕る時は、ボールの位置を目で確認して手を動かし、タイミングよく捕球するといった動きになります。これらの信号の伝達を運動神経といいます。
 つまり、運動神経を含めた「神経型」の発育には幼児・児童期にどれだけ運動したかが鍵を握っているのです。

生まれつき運動神経が悪い人はいない

 次に、運動神経は先天的なものではないということ。
 スポーツが得意な子と不得意な子の神経伝達の速さは変わらない中で、パフォーマンスに差が出るのは、自分の体を自在に操る機能の神経回路の差によるものです。これは、引き出しみたいなもの。ボールがこう来たらこう動くというような体験をどれだけたくさん積んできたかが決め手になります。 
 つまり、運動神経は、生まれつきではなく後天的、つまり、幼児・児童期にどれだけ多くの運動体験をしてきたかによって成長の度合いが大きく変わってくるのです。

幼児期は、とにかくよく遊ぶ

 まずは、1歳から6歳までのプレゴールデンエイジの前期である幼児期。この時期で大事なことは3つあります。
 1つ目は、「よく歩き、よく走ること」。ただ歩いているだけでも、ちょっとした障害物を避けたり、段差を上り下りするといった体験がとても重要です。2つ目は、「様々なリズムで体を動かすこと」。音楽に合わせて踊ったり飛んだり跳ねたり、歩いたり走ったりでは身につかないような体験をすることです。そして3つ目は、「体の感覚を磨くこと」。寝そべって横に転がったり、前回りをしたりといったような回転感覚や逆さ感覚を養ったり、ちょっと高いところから飛んだり、階段の上り下りといった着地感覚を養ったりすることが重要です。
 このとき一番気をつけなければいけないのが、遊びの中で行うということ。幼児期は、トレーニングの様につまらないと感じるとすぐにやめてしまいます。夢中になっていろんな動きを何度も何度も行うこと。つまり、楽しいと感じて繰り返し行う遊びの中に運動を入れるようにすることが大切なんです。

児童期には、コーディネーション運動

 コーディネーション能力とは、前述した神経回路の働きのことで、「リズム」、「バランス」、「変換」、「反応」、「連結」、「定位」、「識別」の7能力の要素があり、トレーニングによって高めることができます。
 「リズム」~タイミングを計ったり、動きを真似したり、イメージを表現する能力
 「バランス」~必要な体勢を保つ能力
 「変換」~状況に合わせて素早く動作を切り替える能力
 「反応」~合図に素早く、正確に対応する能力
 「連結」~関節や筋肉の動きをつなげ、スムーズに動かす能力
 「定位」~相手や味方、ボールなどと自分の位置関係や距離を感じる力、把握する能力
 「識別」~手や足、用具を意のままに操作する能力
 これらの7つの能力を高めるために生まれたのがコーディネーション運動です。

運動と学力の関係

 スウェーデンのブンケフロという町で、体育と国数英の学力の関係について研究のためにある実験を行った小学校があります。
 その内容は、時間割に毎日体育の時間を設けたクラス(A)と週2回しか設けなかったクラス(B)の国数英の学力を比較したというもの。
 その結果、体育の授業回数以外の条件はまったく同じだったにも関わらず、Aの方が先述の教科の成績が明らかに優秀だったことがわかりました。さらにこの効果はその後何年も続くことが確認され、男女ともに3教科の成績が飛躍的に上がることが確認されたのです。
 この研究は、アメリカでも行われ、同様の結果となっています。
 さらには、18歳の時に体力に恵まれていた若者は、その後何十年にもわたってその恩恵にあずかれることが判明しています。つまり、その後の人生で報酬や仕事でも恵まれた生活を送っているんです。

運動が人生を豊かにする

 様々な研究や多くの成功者の体験談から、幼児・児童期の運動によって得た能力は、人生に多くの恩恵をもたらしていることがわかりました。
 人生100年時代、VUCAな時代と呼ばれ、さらには新型コロナウィルスによって加速度は増し、これからの人生のあり方は一変しました。
 これからは、「学び続ける能力」が肝になります。その基盤となる脳と身体能力の発達には、子供期での運動は欠かすことができません。

そんな一助になればいい。子供たちの豊かな未来を目指して。

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