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2023年6月に読んだ本

1 セリーヌ『夜の果てへの旅(上)(下)』生田耕作訳★★★☆☆

言わずと知れた名作なので読まなければと思っていた。が、正直読むのはキツかった。まず最初の戦争の章でこの戦争の話が二巻も続くなら絶対に完読はできないと思った。戦争の話は続かなかったが、それでもなかなか大変だったのはなぜだろう。でも戦場のシーンもパリのシーンもアフリカの植民地のシーンもアメリカの工業地帯のシーンもフランスの田舎のシーンもちゃんと鮮明に覚えている。読了してから少し経って、もしかしたら面白かったのかもと思い始めてきた。けど読み直したいとは思わないし、他の作品もすぐには読みたくない。

2 藤本和子『砂漠の教室 イスラエル通信』★★★★★

この人のエッセイは本当に面白い。ヘブライ語を習うために世界中から老若男女が集まるイスラエルの語学学校へ。ベドウィンに招かれたお茶や気の狂ったように花の咲く春の庭、美味しそうな中東料理の数々。それらに挟まれる中絶や不妊治療、子宮内膜症の手術などをめぐる話は文体こそ重苦しくはないがなかなか壮絶な話だ。しかしこの人は一本軸のようなものがすんと背骨に通っている人だから、どこに行っても、何があっても大丈夫だと思わせてくれる、そんな強さと誠実さを感じた。

3 ジャネット・ウィンターソン『フランキスシュタイン ある愛の物語』木原善彦訳★★★★★

二つの世界を行ったり来たりしながら、それぞれの世界の似た名前の別の登場人物たちが狂騒劇を繰り広げる。ジャネット・ウィンターソンの良さが出ている長編だと思った。FtMはクリトリスが肥大化し、人によっては挿入することも可能なほどデカくなるらしい。クリトリスの感度を保ったままペニス程度までにそれが肥大化するなら、もしかすると信じられないほどの快楽が得られるのかもしれない。

4 乗代雄介『それは誠』★★★★★

本の内容をまったく見ず、著者名だけで発売日に購入する数少ない作家。彼自身のブログを読んではじめてなるほどと思ったことだが、たしかに4人以上の人間が乱れるように、つまり普通に会話している小説ってとても少ない。単純に書くのが難しいからだろう。この小説では4人以上で会話する場面がとても多い。最後のシーンの読者サービスとも言えるような描写は「憎いな!」と思わされた。もう芥川賞とかどうでもいいので書き続けてほしい。

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