ネオンサイン彩る「豚山食堂(テジサン食堂)」がこだわり続ける今の韓国と、飲食店のこれから。【後編】
こんにちは。前回、豚山食堂(テジサン食堂)が大切にしている「韓国の今」について伺させて頂きました。記事を見て頂いた方から「面白かった」「よく取り上げてくれた」「実は気になってたお店だったんです」などと反響をいただき大変気分を良くしております。ありがとうございます。
どこに行っても美味しいものが食べられるようになった今、経営者やオーナーの方々がどのような理念をもってこの環境下の飲食経営を臨んでゆくのかをこれからも取り上げていきたいと思っています。是非「ウチの話も聞いてほしい」「伝えたいことがある」などございましたら是非こちら「sanchasanpo@gmail.com」までご連絡ください。
さてそれでは前回の続きで「これからの飲食店と三宿」についてお伺させて頂いた時の続きを書ご紹介してみたいと思います。
【前編はこちら】
(※この記事は三軒茶屋ローカルメディア「三茶散歩」の寄稿を編集して掲載しています。)
ムダ飲みの少ない時代に、体験を期待させたい。
韓国で描いたビジョンを着実に三宿で実現させている山崎さんに、これからの飲食店ってどうなると思いますか?と尋ねると「月並みかもしれないですが」と加えながら優しく話し始めてくれました。
「体験というところだと思います」
「たぶんみんなそうだと思うんですけど、かつてと比べてムダ飲みが減ってきていると思うんですね。そしてそれを仲いい人とだけで行くから、機会も人数も少なくなってきてるはずなんです。」
「そうすると、どんなとこに行くかって言うと、(他にも同じものは食べられるけど)あそこであれを食べたい、あそこに連れて行きたい、この人に会いたい。つまり、そこでどんな体験が期待できるのか、ということがこれからより大事になると思うんです。」
ムダのみはない、と聞いた時思わず「うん」と頷いた。今年自粛を経験した私達は確かに「本当に必要なものはなにか?」という問いを立てる経験をしたと思ったからだ。
消費をとめどなく推し続けていた資本主義経済において、この感覚を大衆規模で持ったのは、これからの消費を考える上で避けられない価値観になったと思う。
人も大事。けどそれだけだとブランドが生まれない
とても感銘を受け思わず「山崎さんに会いに来る、とか大事になってきますよね?」と自信満々で尋ねた時、意外な答えが返って来た。
「それでいうと、あまり自分を立たせたくないなって思ってるんです」
その場にいる全員が「どうしてですか?」と身体を傾ける。
「それはですね、僕に限らずなんですけど、ヒトに頼りすぎるとヒトがいなくなった時困るんです。それだと店が強くなれない。」
「もちろん人も大事です。けどそれだけだと店にブランドが生まれないんです。」
例えばある店員の人柄がお店の売りになれば、不在のときの体験価値に差が出てしまう。業態によってはその職人の持つ知識や技術で店が左右されることもよく起こる。
だから僕より店を好きになってもらうことが大事だと思うんです。そしてその為に体験が必要なってくるんじゃないかと思ってて。」
『店に期待する体験』をベースにしてお店の個性をつくれば、店のブランドとして積み上げて行ける。同じ料理を出すお店でも付加価値が違ってきますし、それってわざわざ三宿まで足を運んでくれる理由になれると思うんです。」
訪れる人に何を届けたいか。当然そこは自分のこだわるものが先に来る。
インフルエンサーがよくモノを紹介していたりするが、ヒトでモノを買っているのなら、育っていたのはモノのブランド力ではなく、インフルエンサーになる。モノが売れているのではない。
今にこだわることが、価値を作り持続性を作る。
確かに人に依存せず、お店に非日常を期待させられる体験価値があることは、今選ばれる飲食店のコツかもしれない。
ただ一方でそのためには期待させ続ける「持続性」も大事になる。しかも「韓国の今」を追う、とは鮮度の勝負になってくる。
今という価値の賞味期限は気にならないか?持続性に懸念はないのだろうか?期待させ続ける体験としてどうなのだろう?そう聞くと、力強く声高く答えが返ってきた
「韓国の今伝え続けるつもりです」
「そこは間違いないです。調味料も食べ方も焼き方も、街も文化もそこで今何が起きているのかを運んできたい。韓国の今にこだわり、提供し続け、変化し続けるコトは最初から決めています。」
覚悟以外何者でもない。
思えば韓流ブームと言われて随分と経つ。最初は冬ソナ。東方神起や少女時代・KARAからTWICE・BTSへと移り3次ブームが訪れNiziUといった韓国の影響を受けた日本人アーティストも生まれている。
韓国メイクは若者にスタンダートとなり、パラサイト、梨泰院クラス、愛の不時着と韓国コンテンツは常に私達を取り巻いている。
ここまでブームが続くとなると、それはブームじゃなく文化だ。
これからもこの文化は高いクリエイティブ性とエンターテイメントを提供してくれるパワーが継続すると信じることができる。そもそも韓国は国内マーケットの小ささから基準を世界においてエンタメを届けてるがゆえ、起こる変化は世界に影響を及ぼす。
山崎さんの「今の韓国を追う」とは、次あるかわからない一過性トレンドを追うのではなく、温泉のように湧き続ける源泉を取り入れ変化させてゆくという意味だろう。
お店は体験を安定供給させられるし、お客もあそこにいけば何かあるかもしれないという支持が集まる。まさにお店のブランド作りにつながっている。
「ただ今は韓国行けないのが、もどかしいですけどね」
落ちを忘れないとこも素敵だ。
三宿を期待で溢れた街にしたい
「最終的には池袋のヒトが、新大久保を超えてここ三宿に来るそんなお店として思ってもらえるところにたどり着きたいです。
あとは個性的なお店を、三宿にどんどん出して三宿を個性で彩ってゆきたいと思ってます。
同じ事言っちゃいますが「体験」をベースに店のブランドができればわざわざ三宿まで足を運んでくれる理由になれる。
その後三宿で何軒もいけたら、いろんなところからもっとわざわざ来てもらえるんじゃないかと思ってます。三宿を期待で溢れた街にしたいです。」
三宿で散歩してもらいたい。それができるようになるために出店していきたい。山崎さんが作りたいのは三宿に「期待」を求める、ヒトの動きを作っていきたいのだと思う。そういう未来を描いてる。この豚山食堂(テジサン食堂)はその布石だということだ。
今を追い続けるという覚悟、その先にある街に期待を作るビジョン。それは店のブランド作りに必要な体験をベースに描いてる。覚悟とビジョンがブランドを作る。なるほどとても飲食店の未来に大事なコトな気がする。
意思のある話を聞けた。たしかに「豚山食堂(テジサン食堂)」は時間を費やす価値がある思った。
【前編はこちら】
※三茶散歩ではお店のビジョンやこれからの飲食店についてなど、取材の依頼をお受けしております。MAIL: sanchasanpo@gmail.com
※この記事は三軒茶屋ローカルメディア「三茶散歩」の寄稿を編集して掲載しています。)
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