にんじんさんと 少し春の気配がする朝
今日も晴れて 気持ちのいい朝です。
こざるちゃんが、窓から外を眺めていると、
お父さんと 小さい男の子が手をつないで歩いくるのが見えます。
あの男の子は、たー君といって、
毎朝、こざるカフェの前を通って
お父さんか お母さんと一緒に保育園に行きます。
今朝は、お父さんと一緒です。
たー君は、ちょっと泣き顔です。
お父さんは、何か話しながら歩いています。
こざるちゃんは、外に出て話しかけます。
「おはようございます。」
「あ、こざるちゃん、おはようございます。」
お父さんは、ニコニコ挨拶をして、
たー君にも挨拶するように言います。
たー君は、こざるちゃんを見て、
べそをかいた顔で、ペコッと頭を下げます。
「たー君、どうしたの?」
こざるちゃんは、たー君に聞いてみます。
たー君は、下を向いて口ごもっています。
「朝ごはんの時に、にんじんを食べるのが嫌で、
お母さんに怒られたんだよ。」
お父さんが言います。
「たー君、にんじん、嫌いなの?」
たー君は、下を向いたままです。
「食べられないわけじゃないんだけど、
好きなトマトや きゅうりばかり食べて、にんじんは よけていたんだよ。」
お父さんが、たー君を見ながら言います。
「たー君、『ちいさいモモちゃん』っていう本、知ってる?」
こざるちゃんが聞きます。
たー君は顔を上げて、こざるちゃんを見て コクンと頷きます。
「あの本の中で、モモちゃんが『にんじんさん、嫌い。』って言ったら、
にんじんさんが泣きながら家から出て行って、
モモちゃんが追いかける お話あったよね。」
たー君は、こざるちゃんを見て、思い出しているようです。
そして「うん、あった、にんじんさんのお話。」と言います。
お父さんは、たー君と こざるちゃんを見ていましたが、
「そうか、にんじんさん、嫌いって言われたら、泣いちゃうよね。」と、
たー君に言います。
たー君は、うなずいています。
もう泣いている顔ではありません。
いつもの 元気な たー君の顔です。
「きっと、にんじんさん、たー君のこと好きだと思うよ。」
こざるちゃんが言うと、
「ぼくも、にんじんさん、好きだよ。」
たー君は、そう言ってニコニコします。
「よし。じゃあ、お家に帰ったら、にんじんさんに謝ろう。」
お父さんが、たー君にいいます。
「うん。」
そして二人は、こざるちゃんに「行ってきまーす。」と言って、
元気に保育園に向かって行きます。
こざるちゃんは、ニコニコ、手を振ります。
今日は寒さが少しやわらいで、春の気配がします。
読んで下さって、どうもありがとうございます。
松谷みよ子さんの『ちいさいモモちゃん』シリーズは、
子供の頃から大好きな本です。
よい毎日でありますように (^_^)
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