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令和6年読書の記録 坂口安吾『不連続殺人事件』

 探偵小説を愛し、戦争中は仲間と犯人当てゲームに興じた安吾。本作は著者初の本格探偵小説にして、日本ミステリ史に輝く名作である。その独創的なトリックは、江戸川乱歩ら専門作家をも驚嘆せしめた。山奥の洋館で起こる殺人事件。乱倫と狂態の中に残された「心理の足跡」を見抜き、あなたは犯人を推理できるか?自らの原稿料を賭けた「読者への挑戦状」を網羅。感涙の短編「アンゴウ」特別収録。

↑文庫版背表紙の解説

 実は読むのはおそらく三回目です。はい、犯人わかってます。動機もアリバイも全部。前に読んだのがたぶん十年以上前なのでもちろん詳細は忘れてますけど犯人は覚えています。それでも面白いです。「この人が犯人なんや」と思いながら読むと悲しみが増すように思います。ただ、実は私、この作品はもともと1990年にテレビドラマで見たのが最初でして、探偵役は野村宏伸さんやったんですけど。なので、私、最初に読んだときから犯人はわかってたんです。それでも生涯、今回でこれ読むの三回目なんです。そのくらい面白いんです。アホみたいに登場人物が多いので冒頭、それに躓きそうになりますが、そこは頑張ってメモ用紙に登場人物の名前と人物同士の関係なんぞを書いたうえで読みすすめてください。最初を耐えたらあとは問題ないはずです。

 そんなに多く読んでいませんけど、この作品はミステリ小説史に残る傑作中の傑作なんだと思います。坂口安吾はこの小説を連載中、「犯人とトリックの内容についてわかるもんなら言うてみろ」とばかりに読者に挑戦状を叩きつけました。それもまた実験的やったわけですが、つまり、安吾は読者に対して「犯人当てゲーム」を提供したわけです。「犯人当てゲーム」である以上、犯人の行動や心理は合理的でなくてはいけません。そうでなければ読者は犯人を当てることができないわけです。その点で読者を裏切っていないところがこの作品の素晴らしいところです。たぶん死ぬ前にあと八回くらいは読むんじゃないかな。いつまでも傍に置いておきたい名作ミステリです。まず一回読んでみて、必ず面白いから、読んだあとにもう一回読んでください。そうすることによって、犯人の行動や心理に泣けてしまいますから。

 泣けるといえば巻末収録されている短編「アンゴウ」、これも是非読んでください。めちゃくちゃ泣ける話です。後半、ある種明かしがなされるのですが、私はもう、その種明かしのために新幹線の車内で大泣きいたしましたからね。私、実は菅田将暉の「虹」を聴くと条件反射で泣いてしまうのですが、「アンゴウ」も読んだら似たようなことになると思います。

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