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十二支とボクら

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「十二支」「令和初期っぽい」「妖怪」をテーマに書いていきます。 どのお話を読むか迷った際は、メインストーリー「黒山家の秘密」をおすすめします。
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#一次創作ファンタジー

序章 ー零ー

序章 ー零ー

 靴音が響く度に、からくり人形である少女の足下の血溜まりが、小さく揺れる。
からくりの少女は笑みを浮かべ、ずるずると息も絶え絶えな術者の襟をつかんで引きずった。その術者の胸部からは血が流れていて、つんと鉄臭い。
「ねー、封印の間はこっチ-?」
 少女は引きずっている術者に声をかける。だが、術者はわずかに首を振り答えない。
「ねー、こたえテヨ-!」
「……ぐ」
 わざと傷に響くように、少女は背後の男

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パンジー商店の福福兄弟 第2話

パンジー商店の福福兄弟 第2話

 猫麻呂は言った。
「十二支のうちの寅の力・・・・・・先ほどの虎の子は、その力そのものなのだ」
「十二支? 寅・・・・・・? 猫麻呂、話が見えないんだが」
 幸申は頭を抱える。何のことかさっぱりだ、と言いたげに。
「ここ十二支ヶ丘は、かつて大妖怪が暴れ、封じられた場所・・・・・・その封印が、この時代に破られようとしているのだ。十二支の力は、封印を再び施すために人間と協力する必要がある」
「寅の力が

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黒山家の秘密 第七話

黒山家の秘密 第七話

「な、何言って……。俺は、そんな」
「私には分かる。君の心は空っぽだ。虚しいのだろう? お婆さんが消えてしまって」
「っ……」
 ルリさんは真っ直ぐな言葉で、俺の心を抉る。その目は、まるで俺のそんな心を憂うようだ。
 そうだ、俺はあの時から、ずっと。
「……そう、ですね。そのつもり……です」
 俺は、せき止めきれない想いを吐露する。ラピスが俺の中で、静かに息をのんだ。
「婆ちゃんと、もっと一緒にい

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産女の最期

産女の最期

 ああ、これも運命か。
 わたしの役目は、ここで終わり。

 優一、最期に謝らせて欲しい。
 あなたがわたしの孫だなんてウソをついて、ごめんね。
 あなたの家族のこと、何も言えなかった。伝えられなかった。
 だって、伝えたらあなたを守り切る保証がなくなるから。
 ーーわたしがいなくなっても、強く、たくましく生きるんだよ。
 そして、あなたの家族を、必ず助けるんだよ。
 あなたならきっとできる。わた

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