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「一考」一考

突然ですがクイズです

【一考】の意味は次のうちどれでしょうか。
(1)よく考えること
(2)一度考えること
(3)ちょっと考えること

ことの起こりは2021年7月1日

いつものように、clubhouseで「【第119回】声優うのちひろが新明解国語辞典を読む。あの声で」を聞いていたときのことでした。
7月1日にちなんで、第4版の71ページにあった【一考】の語釈を読まれました。

【一考】よく考えてみること。「—〔=考慮〕を要する」

するとうのさんは、「【一考】って『ちょっと考える』って意味だと思っていた」旨のことを言われました。
そこで他の辞書で【一考】の語釈がどのように書かれているかを比較することにしました。

参照した辞書と発行年月日

(→の右側は略称)
[三省堂]
新明解国語辞典(第8版革装第1刷、2021年1月10日)→新明解
三省堂国語辞典(第7版第6刷、2020年2月10日)→三国
三省堂現代新国語辞典(第3版第1刷、2007年11月10日)→三現
大辞林(第3版第1刷、2006年10月27日)
広辞林(第5版第1刷、1973年4月1日)
[全國書房]
言林(昭和廿四年版、1949年3月10日)
[角川書店]
角川国語中辞典(初版再版、1974年12月20日)→角川
[小学館]
国語大辞典(初版第5刷、1982年1月25日)→国大
言泉(初版第2刷、1987年1月1日)
大辞泉(増補・新装版第1版第1刷、1998年11月20日)
現代国語例解辞典(第3版第2刷、2001年2月10日)→例解
新選国語辞典(第9版第9刷、2018年1月20日)→新選
[講談社]
講談社国語辞典(第2版第1刷、1991年11月5日)→講談社
日本語大辞典(第2版第5刷、1997年9月2日)→日大
[新潮社]
新潮国語辞典(初版第1刷、1965年11月30日)→新国
新潮現代国語辞典(第1版第7刷、1995年5月20日)→新現
[集英社]
集英社国語辞典(第2版第1刷、2000年9月18日)→集英社
[岩波書店]
広辞苑(第6版第1刷、2008年1月11日)
岩波国語辞典(第7版第1刷、2009年11月20日)→岩波
[学研(旧 学習研究社)]
学研国語大辞典(初版第2刷、1978年7月1日)→学研
常用国語辞典(第5版第1刷、2020年9月8日)→常用
[大衆館書店]
明鏡国語辞典(第3版第1刷、2021年1月1日)→明鏡
[旺文社]
旺文社国語辞典(第11版小型版、2019年)→旺文社

各辞書の語釈はいかに

(1)「よく考える」派:新明解
(2)「一度考える」派:広辞林、角川、国大、言泉、大辞林、三現、新現、大辞泉、例解、広辞苑、常用、明鏡、旺文社
(3)「ちょっと考える」派:言林、新国、学研、三国、新選
(2)と(3)の両方:集英社、岩波
その他:講談社(考えてみること)、日大(考えてみること。consideration)

「新明解」は孤独です。
ちなみに、「新明解」は初版(1972年)から一貫して「よく考える」と記しています。
ここに「一考の余地」はないようです。

「三国」における語釈の変化

手元にある辞書で版による比較ができるのは、もう一つ「三国」があります。
初版(新装版第20刷、1971年1月20日)では

「(いちど)かんがえてみること」

となっているのに対し、第4版(1996年)・第5版(2004年)・第7版では

「ちょっと考えてみること」

と変わっています。

版による違いは歴史的な意味の変化と考えることができますが、同じ出版社の辞書でも語釈が違うのは興味深いです。
辞書編集者の間でも意見が分かれいているということだと思います。

「一考」を使う前に一考を

以上、見てきましたように、【一考】には
(1)よく考えること
(2)一度考えること
(3)ちょっと考えること
という意味があり、辞書によって載せている語釈が異なることが分かりました。

したがって、メールなどで「ご一考ください」と書いたときに、自分では「よく考えてください」という意味で使ったつもりでも、相手は「ちょっと考える」と思っているかもしれません。

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